第5話

「おい!ほの!いつになったらこれをやるんだ」

「ねぇ!ほのか!これは明日までっていったわよね!早くやってくれる?!」

「えっと… は、はい」



そんな生活から開放されるんだ…







「か、のか、豊香?」

「え、あぁなに?」

「どうした?」

「大丈夫」

「そうか、なんかあったらいってね」

「うん」


それから私は頻繁に匠の家に行くようになった。

いつもどおり匠からメールが来た。

「ねぇ、今日も来る?」

「いく!」

「よし、」


そして匠の家についた。

「あのさー、最近どう?」

「は?」

「いやー、最近さメンタル保ててる?」

「うん、私は本当に匠に救われたと思う。だから、本当に、ありがとう。」

「うん」

「ふふっ、私ね、匠のこと、大好き!」

「えっ////」

「ふふっ照れてる、もっとよく顔見せて」

「つ…////」

「私は間違ってなかった。 匠、これからもよろしく。大好きだよ。」

「うん、ありがとう//」



そして、そこから数分私はずっと匠に笑いかけていた。




「ピーンポーン、ピーンポーン」

「え、ちょっと、ごめん」

「そういい、匠は急いで玄関に向かった。」





 「え…、 母さん…?」



匠はいつもよりは大きいような、でも大声というわけでもない。それくらいの声でそういった。その時私は黙っていたから匠の声はこの家の中全体に響いた。


(え、お母さん???、匠のお母さん…)


私は内心どこかで焦っていた。

(お母さん?普通のお母さんってどういう人なの?、どうしよう… 怖い、私のお母さんってどうなの? だめだだめだだめだだめだだめだ、もう、何も考えられない………)


「あれぇー?女の子ー?、えー!匠が女の子連れてくるなんてねー」

「え、いや、まぁ、てか、なんで来たの?」

「いやー、今日暇だし?たまたま前通りがかったし?」

「へー、あ!豊香、こっちおいで」

「…」

「どうした?」

そういってから匠は私の耳元で

「大丈夫、心を強く、ね、いける」

そういった。

私は大きく息を吸ってから

「こんにちは、前野豊香です。」

と、いった。


「あらぁー可愛い子じゃない!それで、匠、どうすんの?こういう子はすぐ離れるわよー?」

「いやいや、」


(私の目の前で一つの親子が話している。)


「って、大丈夫?!豊香?」

私は気づかないうちに泣いていた。

「え、あぁ、ごめんね」

「いや、どうしたの?」

「だって、こんなに仲の良い親子って存在したんだって思って」

「そっか、」

「えっと、豊香ちゃんっていったかしら? 豊香ちゃん、私は豊香ちゃんのことはわからない。でも、きっと、何かあったのね? 家族と」

「はい…」

「そう…」

「ね、ねぇ、母さん、これ」

匠はそう言いながらお母さんに私の書いた小説をわたした。

「これが豊香の生きた道、ぜひ、読んでみて」

「そう、わかった。 あ、時間!そ、それじゃあ!!」

匠のお母さんは帰っていった。



「あのさ、豊香って今はどうしてるの?いつも俺の家で晩御飯食べて、帰ってるけど、どうなの?」

「っ……」

私は口が止まった。

「言いたくなかったら別に言わなくていいよ。でも、強くなるにはいったほうがいいと思うけど… いやいや、別に言わなくてもいいんだよ?」

「いや、言う。 あのね、最近お父さんが死んじゃって… お父さんがどんどんどんどん腐っていったの、 前までは大丈夫だったのに… 仕事なんかせず、お母さんのお金でパチンコ行ったり、ほしいもんたくさん買ったり、一人でおなかいっぱいいいもん食べたり、それが積み重なって、借金で、お母さん病んじゃって っ…」

私は泣いていた。

「でね、お母さん、ずっとイライラしてるから、ご飯だって食べないしずっと っ… ほっといてって、でも、お父さんは作れ作れ言うし、もう私だってキツいのにお母さんだけ… っ… それで、もう嫌になっちゃって、したらその次の日お父さん、お酒で酔ってから、車に引かれたって電話が来て、 っ…ふっ… その時、なんか嬉しくて…っ… で、このままじゃだめだって思いつつも心のどこかでっ… お母さんも死ねばいいのにって…思っちゃって、 だめだよね、私、…」

「そうだったんだ… さんざんだったな。 ほら、おいで」

そう言って匠は腕を開いてくれた。

「うん…」

私はすぐさま匠の腕の中へ入った。



「やっぱり優しいね…」



「そんなことない。俺なんて豊香のことを助けていない。 それは、豊香が変わった証だ。 そして、証明された。…」










「豊香は強いって、」










「よく頑張ったな」



その時私の涙は大洪水のようになっていた。

「ふっ… っ… あ、…ありがとう…」


「うん、えらいえらい」

匠はそう言って私の頭を優しく撫でた。





今までになかったような幸せな気持ちになった。

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