第三部 時空の超越

 ボクは東に向かいました。歩き続け、疲れた時には素直に休みました。そして、四角い建物が一つだけポツンと有るのを遂に発見しました。入口に辿り着き中に入ると、色々役に立ちそうな物がちゃんとありました。それから、驚くべき物を見つけました。

 それはタイムマシンの作り方です。誰が考えて書いたのか気になりましたが、手がかりは無く、結局分かりませんでした。

 とにかく、素晴らしいアイテムを手に入れました。子どもの時に見た、まあボクの場合どこから子どもでどこから大人なのか曖昧なのですが、その時に見たアニメのキャラクターのようにボクもタイムマシンを作れるのです。

 素材集めは大変そうでしたが、不可能ではなさそうでした。不死であるボクが言うのも変ですが、とても非現実的なことです。しかし事実であり、やはり今回も結果だけを見れば良いのです。




 それから、ボクは科学の知識を総動員して素材を探し、手に入れていきました。そうしている時ボクは間違いなく、これまでのどの時よりも人間らしく生きていたように思えます。生きるのはこんなに楽しいのだとやっと分かったのです。そして、やはり命には終わりが有るべきだと感じました。間延びした人生は初めの美しさを保てず、つまらなくなってしまうのです。

 ボクも一度つまらない状態になっていました。しかし、今は違います。タイムマシンを作るという第二の人生を楽しんでいます。

 また、人間らしい感情を取り戻しました。それはとても大切なもの、寂しいという感情です。彼、未来のボクと会う以前は辛いという感情を持っていました。しかし、寂しいという感情ではなかったように思えます。ずっと一人ぼっちで居たことにより、人間との関わりを忘れてしまったのでしょう。人間との関わりを求めること、すなわち寂しい気持ちを失ってしまったのでした。そうなってしまうことは寂しいことです。

 ちゃんと寂しくなれていなかった。そういうわけで以前のボクは辛かったのです。

 しかし、今は違います。ちゃんと寂しくなれていて、感情を取り戻しています。そうしてやっと確信することができました。

 ボクは間違いなく人間なのだと。




 タイムマシンが完成しました。もう少しで死ぬことができるのです。これで時間を超えれば死ねる体になれる。そう思うと心臓が強く動きました。これが恐怖というものなのでしょうか。死ぬのが怖いのは、ありがたいことでした。

 人間は生まれるのと同時に死の恐怖を知り、泣きます。そしてそれはボクもそうだったと思います。しかし、ボクは実際は不死だったのでした。それを知ってからは怖いと思うことはありませんでした。だっていくら生きても死ぬことは無いのですから。

 だから、死の恐怖を確認してボクはありがたいと思ったのです。




 よし、過去に飛ぼう。そう決心したのですが、困ったことがあると気が付きました。そういえばあれは何年前のことだったのでしょう。日数を数えていなかったのです。だいたい千とちょっと、と思いましたが、途方もない時間を生きているので、こんな時間の感覚は当てになりません。一度悩みました。しかし、別に気にしなくて良いと判断しました。ボクの居ない時代に当たることは恐らく無いでしょうから。

 ところで言い忘れていましたが、タイムマシンはあの映画の車のような乗り込む形の大掛かりなものではなく、ベルト型で身に付けて使う一人用のものです。初めてデザインを見た時は少しロマンが薄れたものですが、今になるとこれで良かったと感じます。ボクが子どもの頃に憧れた物といえばベルトでした。ヒーローの象徴としてそこにあり、一つの神秘だったことを思い出しました。

 そしてボクはそれを腰に巻き、戻る量を入力します。

 一二三四年前。

 一つのスイッチを押しました。誰も知らない大発明が世界で初めて時空を超越します。

「スゴイ!」

 それをただ一人だけが称賛しているのでした。

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終末の遊び 魚里蹴友 @swanK1729

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