苦闘
Λ
この場で起こった現象を、
目の前に立つ神官の女性の背後に巨大な白い大蜘蛛が現れて。
そして、彼女が何か『力ある言葉』を発した瞬間に、あらゆる音が消失したのであります。
周囲の音はもちろん、自分の声すら聴こえません。
わずかに認識できるのは体内の脈動や強い耳鳴りだけ。
そのあまりの閉塞感に足元がふらついて、
平衡感覚が失われていき、まるで自分が宙に浮いているような感覚に陥りました。
呼吸が荒くなりながらも周りを見ると、宗教国家の信徒はみな
第十八分隊の仲間たちへと目を向けると――
同じく不可思議な現象に苦しんでいた、そのうちの一人が竜の吐く火炎のごとき散弾に飲まれました。
敵の主導者である背の高いシスターは、この一帯の異常の中を平然と歩んで
身体中に嫌な汗が吹き出しながらも、その場から駆け出しました。
立っていた場所は焔の散弾に灼かれます。
別の物陰に隠れて尻餅をつくと、頭の中がぐらぐらしておかしくなりそうでした。
この敵は危険極まりません。
何とかこの場を切り抜けなければ、我々は全滅してしまいます。
物陰から様子を確認すると、大蜘蛛の怪物を引き連れた神官はマト分隊長とフィオナーレに散弾銃を向けていました。
彼女を――フィオナーレを
「
今なら敵の神官からは死角になっております。
狙いは地面に近い白い大蜘蛛の頭部!
必死になって叫びながら
――しかし、命中する寸前になって大蜘蛛はあり得ない速さで跳躍します。
着地と同時に音の衝撃波を発したのか、
♢
「あの小娘。私の
散弾銃の弾薬を詰め直しながら、失神して倒れた愚かな娘の兵士へと近づく。
「名も知らぬ憐れな兵の娘よ。
そして、銃の引き
私の躰にしがみつくその少女は倒れた兵士の娘へと声をかける。
「ベルっ!何やってんのよ!早く起きなさい!」
振り
そして、神力の全解放『血算起動』によって周囲のあらゆる音を吸収し、パイプオルガン型連装砲の弾丸として射出する言語兵器だ。
その弾丸は命中した生物を分子レベルで変異消失させる威力を持つ。
しかし、私と
私は少女の髪を強く掴んで、顔を向けさせる。
「貴様……!巫女神官である私に易々と触れようなどと
「うぐっ……あんたのことなんか知らないっ!ベルは絶対に殺させないんだからっ……!」
乱暴に髪を引っ張り、少女を躰から引き剥がすと散弾銃の銃口をその頭に突きつけた。
「今までに無軌道で暴虐な
再び
――だが、またもや銃を撃つことはかなわなかった。
兵士の娘を背に抱えた隊長格の男が、私の散弾銃を狙撃して破壊したのだ。
男は銃を捨てて金髪の少女も抱え、逃げ出すのを横目に見送る。
武器は壊れ、私の
連中は蜘蛛の子を散らすように森の中へと、その姿を消して行った。
「あの男……私を殺すより仲間を助けることを選んだか――今回ばかりは見逃してやるとしよう。これで貸し借りは無しだ。」
私は信徒達を引き連れ、砦の中へと戻って行った。
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