第2話 『ハルくん』


「えーと、ただいま、お母さん。」

「おかえりなさい~タケ。ってお父さん!?その袋に入ってる魚はなに!?」

「あぁ、これはな・・・」


しゃべるお魚さんを連れてきたお父さんとぼくはお母さんに質問攻めにされるのでした。


             🐟🐟🐟🐟🐟


「で、なんで釣った魚が生きてその海水の入った袋に入っているの?」

「それはさ・・・」

「オレがしゃべるからじゃねぇの。」

「しゃっ、しゃべったわ!この魚!!!」

「・・・だから連れて帰ってきたんだよ。」


多分お母さんは怒ってはいません。けど、びっくりしすぎて今にも倒れそうな感じでした。ちょっと心配でした。


「・・・ということだよ、お母さん。」

「そ、そういうことね。分かったわ。」


お父さんはどこでこのお魚さんを釣ったのか、最初にしゃべった言葉は何なのかを説明していました。


「その魚はどうするの?食べる?研究所に出す?」

「そうだなぁ・・・」

けっ、研究所!?それだけはなんとか避けないとお魚さんがかわいいそう・・・。だったら・・・・・


「ぼく、このお魚さん、飼いたいっ!」

「「えぇっ!?」」


しゃべるお魚さんなんてきっともう二度と出会えないだろうし、お父さんとお母さんが仕事でいないときの話し相手が欲しかったのです。しかも、憧れのお魚さんと一緒に暮らせるなんて最高じゃないですか。あ、あと研究所に出さなくて済むので。


「・・・いいけどね。」

「えっ、いいかよっ、お母さん!」

「飼ってもいいの!?」

「だって、私とお父さんがいないとき、一人で寂しいだろうし。」

「それはそうだな・・・。お父さんも賛成だよ、タケ。」

「やったぁ!!」


ぼくはとっても嬉しいです!


「じゃぁ、とりあえず、餌と水槽を買いに行きましょうか。」

「はーい!」


             🐟🐟🐟🐟🐟


お父さんとお母さんと一緒に家の近くにある、魚用のいろいろなものが売っているお店に行きました。しゃべるこの''カマス''は体長20㎝ぐらいなのですこし大きめの水槽を買いました。食べ物は家を出る前に好きなものを聞いておいたので、


「好きな食べ物?そうだな、小魚だな。」


小魚をたくさん買いました。店員さんによると、カマスはすぐにおなかがすいちゃうそうです。初めて知りました。


「これは、近くだったけど、車出来て正解だったな。」

「えぇ、そうね、結構水槽重いし、大きいし。」

「お父さん、お母さん、ありがとう!」

「あぁ、どういたしまして。」

「ちゃんと大切にするのよ。あっ、そうだ、名前を決めないといけないわね。」

「名前か・・・。無難に太郎、とかじゃダメなのか?」


太郎って、無難な名前なのでしょうか。犬さんではないのに。


「太郎って犬じゃないの、お父さん。私は花子でいいと思うんだけど、どう?」


花子って。きっとあのカマスはオスだと思うんだけど。しかも、花子って犬さんですかって。


「なかなか難しいな。タケはなんか案無いのか。」


海で釣ったお魚さん。鋭い牙。寒い。こわい。しゃべる。春。あっ。


「ハル、なんてどうかな。」

「「ハル?」」

「うん、春の季節に釣ったお魚さんだし、ぼくの名前、タケハルでしょ。ぼくはタケって呼ばれてる。で、タケハルのハルを取って、ハル。どうかな?」

「いいわね!その名前!しかもちょっとかわいい。」

「そうだな。ギャップがあっていいんじゃないか。名前はハルで決定だな!」


             🐟🐟🐟🐟🐟

家に帰って来ました。車内で決めた名前をお魚さん、改めハルくんに伝えます


「君の名前はハルくんに決定しました!!」

「はっ、はぁっ!?」


この『ハルくん』こそ後々ぼくの相棒となってくれるお魚さんです。

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