お魚と僕 ー出会いー

りんご丸

第1話 『はじめまして』

「ねぇハルくん、僕ね君のことが大好きだよ。」

「・・・よくもそんな恥ずかしいことを言えるなタケちゃん。まぁオレも・・・」

「オレも何?」

「・・・・・やっぱなんでもねぇ。」

「ハルくんは昔から素直じゃないよね。たまには素直になってもいいんじゃない。」

「あぁ!?オ、オレは十分素直だっつーの!」

「ふふっ、君はやっぱり面白いお魚さんだね。」

「ほんと何なんだよタケちゃん・・・・・」


名前はとっても強そうなのにとっても弱いぼくと、鋭い牙を持っていて見た目は怖いけどちょっぴり怖がりで素直じゃないお魚さんのお話です。


           🐟🐟🐟🐟🐟🐟


「この子の名前は・・・猛晴に決まりよっ!」

「やっと決まったー!!」


ぼくの親は名前つけるのにとてもてこずったそう。親族で一生懸命話し合った結果、猛晴タケハルに決まったらしいです。生まれたときから、他の赤ちゃんより体も小さくて体重も軽かったぼくに両親と親族は強くたくましい子に育ってほしいと願い、この名前にしたんだよ、と言っていました。でも、ぼくは小さな頃から病弱で、他の子たちが外で元気に走り回っている中、ぼくは家でいろいろな図鑑をずっとみていました。魚図鑑を見たとき。そこでぼくはあるお魚さんに目を奪われました。''カマス''というお魚さんです。大きな目に、とっても強そうな牙。


「かっこいい・・・」


気が荒いそうなので少し怖いです。でもぼくはこのかっこいいお魚さんを一目見てみたい、と思ったので釣りが好きなお父さんに声をかけてみました。


「ねぇお父さん。」

「なんだい、タケ。」


ぼくは家族やお友達にタケと呼ばれています。妹にはお兄ちゃん、と呼ばれてますけどね。


「このお魚さんがみたい。」


といってぼくはお父さんに図鑑を見せます。


「ほう、''カマス''ねぇ。釣ってみるか?」

「うん!釣ってみる!!」


そう決意したのはぼくが小学3年生の春でした。


           🐟🐟🐟🐟🐟


''カマス''は7月から11月が旬のお魚さんです。この時期が一番大きくなる時期です。ですが、ぼくは早くこのお魚さんが見たかったので、お父さんによく釣れるという堤防に連れて行ってもらいました。遠いお出かけは初めてで、海に来たのも初めてでした。


「うわぁぁ・・・」

「そうか、タケはこういうところ来たのは初めてだもんな。びっくりしたか?」

「うん!すごっくびっくりした!」


朝早いほうが釣れるぞ、というので、頑張って朝早く起きてここに来ました。車に乗ってる最中は眠たかったのですが、この景色をみて、眠気なんて吹き飛んじゃいました。


「さて、準備も完了したし、そろそろ釣りを始めるか!」

「がんばります!」


ぼくは全然力がないので、お父さんと一緒に釣りをしていました。


「結構寒いね、お父さん。」

「あぁ、まだ春の早朝だからな。まぁ、長居をしたら風邪引きそうだから、1時間くらい待っても釣れなかったら今日は帰ろう。」

「うん・・・。」


実はもう30分たっています。なのに何にも気配がありません。本当に釣れるのかとぼくは不安で仕方なかったのです。もうだめかな、そう思ったその時・・・・・・・・



「えっ、うわぁぁぁあぁぁ!お父さん助けて!!!」

「おっ、ついにかかったか、よし釣り上げるぞっ!!」


かかったお魚さんの種類はまだわかりません。でも、とても引きが強くこんな体験は初めてだったのでぼくはとても驚きました。


「ずいぶん引きが強いな!この魚は!!!」

「う、うん!かっ、かなり強いねっ!!」


ぼくは一瞬でも気を抜いたらそのまま海に竿ごと持ってかれそうでとてもひやひやしています。ですが、あとちょっと・・・


「おっりゃぁぁぁぁ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


かなりのお父さん&ぼくvsお魚さんによる激戦ののち、勝ったのは・・・


「「釣れたっ!!!」」


ぼくたちでした!!


「やったなタケ!これはカマスだぞ!!」

「ほんと!?やったぁ!!!」


初めて見る憧れのお魚さん''カマス''。僕の感想はというと、


「図鑑と見たのと結構違う!」


てっきりぼくは目が大きくてくりくりしているのかと思っていたら、釣ったカマスは目は大きいのですが・・・目つきが悪いです。それよりびっくりしたのは・・・


「・・・なにオレのことジロジロ見てるんだよ。」

「「しゃべった!?!?」」


この''カマス''がしゃべりだしたことです。そもそもお魚さんってしゃべるのでしょうか。それとも''カマス''は他のお魚さんとは違い、しゃべるのでしょうか。


「お、お父さん、カマスってしゃべるの・・・?」

「いやぁ、しゃべらん。そもそも魚はしゃべらない・・はず・・・。」


「なぁ、早く水に入れてくれよ。苦しいんだけど。」


「あ、あぁ分かったよ。」


お父さんはとても戸惑いながら持っていた大きなレジ袋に海水を入れて、しゃべるカマスを入れました。


「とっ、とりあえず、帰るか・・・」

「そ、そうだね・・・・・」


これが、ぼくと、憧れのお魚さん、''カマス''との 『はじめまして』です





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