違和感と向き合って。

男の感じた違和感は、未だ拭えていない。

ループ橋で起こった事故というのが、どうしても他人事のようには感じなかったのである。


「もしかして、その関係でバスが止まってたり……とか……」

「ああ、そうだよ。仕方ないだろうな。今日は村から出られないんじゃないか?」


男はしばらく考えた。

なぜだ、どうして俺はこの事故にここまで関心を覚えるのか。

自分の知り合いが乗っているかもしれないからか。

あるいは……。


男は必死に思い出す。

一心不乱に想起する


おかしい、何かが違う。


「乗客は……どうなったの?」

「なにせあの谷底だ。おそらくは救助隊もまだ辿り着けていないんじゃないか?」

「そ、そうか……。まだよくわかんないのか…」


男の脳内は、処理が追い付かず、混乱を極める。


果たして男は思い出す。

否、何かが男に話しかけたのかもしれない。


「そうか…。そうだったんだ……」

「ん?どうした?」

「あの神社だ…」


男はたった一言つぶやくと、コートを羽織って家を飛び出した。


「おいおい!バスは動いてないって言ったろ!!どこ行くんだ!!」


男の耳には全く聞こえていなかった。

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