後悔と懺悔。

「僕たちが高校2年生になったとき、彼女がうつ病にかかったんだ」

「へ、へぇ~。そうなの。彼女はそんなことあなたに教えたんだ?」

「いや、直接は聞いてない。でもさ、何となく分かったよ」


男は、うつ病になった彼女を助けてあげたいと心の底から思っていたらしい。


「あいつの家まで行って話聞いてあげたり、ご飯作ってあげたりしてたよ」

「お、おにいさん、一人暮らしの女の子の家におしかけてたの?」

「人聞きが悪いな。看病みたいなもんだろ」


しかし、男は彼女に「うざい」と一言であしらわれ、深く反省した。

自分が正しいと思うことを押し付けていたんだと。


「だから、それ以来はなるべく家まで行くようなおせっかいはしないようにしたんだ」

「ずいぶんとひどい彼女ね」

「いやぁ、でもあの時ちゃんと正直な気持ちを言ってくれたのはうれしかったよ」

「いや…いやいや、それが本当に本音だと思ってるの?」


冷静に聞いていた少女が、狼狽して食い下がる。


「あんたが世話に来てくれるのが申し訳なくて、わざとそうやって突き放したん……、じゃ、ないかな」

「え?……あぁ――そともいえるのか……」

「で?それで?」

「それでって……」


言いにくいのも当然だった。

彼女は、男に「死にたい」との伝言を残して一人旅立ってしまったのだ。


男にとって始末が悪いことがひとつ。

その日に限って担任に呼び出されていたために、伝言に気づけなかったのだ。

だから彼女を止めに行くことができなかった。

担任を怨むつもりはないらしいが、本当に、男は情けなくて泣き崩れた。


「もしもあの時……って考えちゃうんだよね……」

「おにいさん、本当に彼女がすべてだったんだね。一人で寂しい思いをしていた彼女に、伝えてあげたかったね」

「ところでさ、君はなんで彼女がって知ってんの?」

「え?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る