そういう展開。

「こういう時は友達とか彼女とかには見えて……とかっていう展開を期待してたんだけどなぁ」

「ほっとけよ。」


男は、もはやまたこいつかという感情以外なかった。


男は人付き合いに不得手だった。

冷静に考えれば、心から信頼しあえる友達など、男にはいなかったのだ。


また白い空間に連れ込まれた男は、自身のつまはじき具合を少女に愚弄されていた。


「こういう時のために、ちゃんと友達付き合いしなきゃだめだよ。おにいさん」

「そりゃあ、なかったわけではないんだけどもさ……」


こんな男にだって、そういう話の一つくらいあるものだ。


「高校時代のことなんだけど、文化祭の時に告白してくれた子がいたんだよ」

「へ、へぇ。そうなんだ」

「それでさ……」


男にとって、彼女と過ごす時間がすべてだった。

中学時代から付き合いのある連中との遊びをすべて断ってでも、一緒にいる時間を取ろうと努力していた。

本を読むのも、カフェへ行くのも。朝の「おはよう」も夕刻の「またね」も。

全てが男の特別だったのだ。


「彼女が俺のことどう思っていたのかは分かんないけどさ。俺は本当に大事に思ってたんだ。でも……」

「でも?」


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