漆黒の正体。

「うーん、もしかしておにいさん、私のこの格好を見てもまだ状況が理解できないの?」


もちろん、冬支度にしては寒そうな恰好をしていることくらいは男にも理解できていた。

しかし少女が右手を差し出し、途端右手に収まった大鎌を見て、男の顔から血の気が引いた。


「おまえ、まさか……、自分が死神だとか言うんじゃないだろうな?」

「うーん、まあ、そんなところだね」

「なっ……、じゃあ、俺は…………死ぬのか?」

「おにいさん、理解が早くて助かるよ!じゃあ……」


少女は満面の笑みで、大鎌を振りかぶってみせた。


いやいや、ちょっと待ってくれよと。

男は何が起こったのか未だに理解できていない。


「待ってくれ、俺はどうして死ぬことになったんだ??」

「そんなこと、どうでもいいの。運命だけ受け入れてればいいじゃん」


頼む、俺にはまだやらなきゃいけないことが残っているんだと、男は必死で懇願した。

死神に大鎌を振り上げられたら、もう一切生き残る術がないことは、男も耳にしたことがある。

あとは振り下ろされないように、もしくはそれまでの時間が少しでも長くなるように抵抗することしか、男には出来ないのである。


「うーん、そんなに言うなら……。仕方ないなぁ」


少女は鎌を振りかぶったまま、気味悪い笑みのまま言った。


「な、なんだ、なにか…、何か方法があるのか?」

「そうだよ。じゃあねぇ……」

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