密閉と静寂。

「おにいさん、今自分がおかれている状況は理解できていますか?」

「それが……。全くわかりません」


わかりませんとは言った男は、一つだけ気付いた。

少女の服装が、乗り込んできたときのものとは違うことに。

こんなことは気づいても余計に謎が深まるだけである。

男が理由を尋ねれば、

「おにいさん、そんなことも分かんないんですね♪」

などと嘲笑されるのみであった。


「だれか!だれか他にいないのか!!」

「誰もいないよ? 今ここにいるのはおにいさんと私だけ」

「だれか!!――」


一縷の望みをかけて大声で叫び続けてみても、少女の言う通りなのだろう、むなしく男の声が反響するのみであった。


「おにいさん、必死でかわいいね」


男は全て無駄な抵抗であると気づき、少女に尋ねてみることにした。


「き、君は……、君は一体誰なんだい?」

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