銀白と漆黒。

男の意識が夢現のはざまを漕舟していたとき、それを一気に現に引き戻したのは、脳耳を貫く轟音であった。

金属がこすれるような音が鳴り響き、男の脳はついに覚醒した。


「なっ!、……なんだ、ここは――」


男は、いまだに手前が夢の中にいるのではないのかと疑い、自分の頬を思い切りつねってみた。

しかし、現状は何も変わらなかった。

夢なら覚めてくれ。

そんな願いなど、誰にも届くわけなどなかった。


つい先刻まで十数人いたはずの一行が全く姿をくらまし、視界の隅々までが白く、ぼやけている。

ここはどこかと確かめてみれば、間違いなく男が先ほどまで座っていたバス車内だった。

座席も壁も、見覚えがある。すべてが白く染まっていることだけが奇々怪々とした雰囲気を醸していた。


「あ、あのぉ……。今いったい何が起こっているんでしょうか…」


この不気味に白い空間には、男ともう一人、黒い服を着た少女の姿があった。

一人で考えていても埒が明かないことを悟った男は、恐る恐る少女に話しかけてみることにしたのである。

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