第2章 暗闇と純白。

速度制限と渋滞。

軽快に山を降り続けていく一行は、車内アナウンスに耳を傾ける。


「この先のループ橋で速度制限が出ているため、渋滞しているようです。ダイヤが乱れますのでご了承ください」


……とのこと。

毎年のことであるから、車内一同全く動じることはなかった。

ただ唯一、男には約束の時間というものがあるから、少々の焦りを感じていた。


ループ橋は、この時期になると制限速度が30km/hに制限される。

今日のように、今シーズン初凍結ともなれば、誰しもが10km/hくらいに自制するもんだから、結果として大渋滞が発生する。

とはいえ、いつもと変わるのはたった十数分程度のものである。


バスが渋滞の最後尾をとらえたのは、ループ橋まで1kmくらいの位置、長めのトンネル内である。


片田舎のトンネルは、明かりがないに等しいほど暗く、前夜の寝不足が祟ったのか、男の意識はだんだんと遠のき、視界は輪郭を失っていった。

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