雪化粧する條々と凍てつく道塗。
バス乗場へと続く道は、幻想的な様相を呈している。
両脇の木は、枝先を雪化粧して男を迎える。
男の古民家から見える限りの景色が白く輝き、そこからバス停まで続く道もまた、得も言われぬほど美しく……凍っている。
「転ばないように慎重に歩かないといけないな……これは…」
どれだけ慎重に歩いても、転ぶときは転ぶ。
坂道を滑り降りるのは、ある意味では楽しいだろうが、おそらく四肢を捧げる羽目になろう。
「頼む、間に合ってくれ」
ブーツの底一つ分ずつ、着着とバスの発車場まで延々と歩く。
このように歩かなければ、男はたちまち転げ落ちることになることを判っているのだ。
平常の3倍程度の歩数と2倍程度の時間をかけ、男はどうにかバス停まで辿り着いた。
白い息を吐きながらバスに飛び乗ると、間もなくして発車時刻を迎えた。。
山道を進みながら、途中に点在する集落で乗客を拾っていく。
バスが走る道は丁寧な整備がなされ、滑るのではないかとの心配などよそに軽快に走り抜けていく。
村の最後の集落を通過した。
ここからは駅までほとんど止まらないはずである。
雪など降ればバスはどんどんと遅れ、ダイヤなどあてにならない事態に陥るが、今のところ、順調に進んでいるようである。
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