幕間1 親友の正体

「もがみん、喜んでくれてたっ!」

「……それはよかったね」


 深夜二十三時。


 そんな夜中にかかってきた親友からの電話に出ると、いつもより声のトーンが高くて、興奮気味のようだ。


「あんちゃん、配信みてくれたー?」

「ちゃんとみてたよ」


 それは、さっきまで配信をしていたからか、それとも。


「ふっ、ふふっ」

「……どうしたの?」

「えー、いまもがみんがチャットでねー、マロンの配信すっごい褒めてるの」

「……そう」


 もがみんとは、私とひまが所属する演劇部の後輩である。


 ひまは、初めてできた後輩だからって一年生が来てから張り切っているようだった。

 特にひまはあの男のことを気に入っているようで、珍しくひまの方からよく絡みにいっているのをみかける。


 いや、もう珍しくはないんだ。

 ひまは、もう昔のように、私が守るべき存在ではない。


 嬉しい反面、ほんの少しだけもやっとする気持ちが顔を出す。


 それに……。


「ほんとうは、もがみんには脚本をむりやりやらせちゃったかなーって、ちょっと悩んでたんだー」

「……知ってる」


 いつもより、返答が素っ気なくなってしまう。

 でも、ひまはそれに気づくことはない。


「でもね、もがみんにとっても脚本を経験するのはいいことだって思ったし、一緒に頑張りたいもん。ひまをその気にさせたんだから、責任とってもわらないとね! ふふっ」

「…………」


 ひまはあの男の話になると、周りなんて見えていない。

 まるで、お気に入りのぬいぐるみを自慢する子供のようだ。


「これで、もがみん頑張ってもらえるかなー?」

「きっと、大丈夫だと思うよ」

「えへへー、そうだといいなー」


 でなければ、私があの男になにをするかわかったものではない。


 こんなに想われて、

 気にかけられてて、

 ひまの心の中に堂々と居座って。


 その罪に報いなければ、私はあの男を許さない。


「あー、明日もがみんに会ったらどうしよっかなー。……ふふっ」

「…………」


 そうでなくても、私からひまを取ったあの男のことを絶対に許さない。


 ムカつく。

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