第59話 夜

 ライブが成功した……。

 その日の夜、みらいは夢見心地だった。

 わたしが人前で歌い、友だちが演奏し、大勢の人が喜んでくれて、拍手までしてくれた。

 ものすごく気持ちよかった。

 うれしかった。

 ライブをするのはずっと怖かったし、いまもまだ怖いけれど、もうそれだけじゃない。

 またやりたい……。

 もっと若草物語のライブをやりたい……!

 みらいはくり返しそう思い、眠りについた。

 樹子は満足していた。

 未来人が人前で歌声を披露した。大きな壁を突破した。

 本当によかった。

 これから、もっとたくさんのゲリラライブをやる。

 メジャーデビューはきっと遥かに遠いし、できるのかどうかわからない。

 でも、高みをめざして、いけるところまで行ってやる……!

 樹子は手応えを噛みしめていた。

 あっ、初ライブをラジカセで録音しておけばよかった、とも思ったが、それは後の祭りだった。

 ヨイチは祖父母に今日の出来事を話していた。

「未来人がうまく歌えてよかったよ。あいつ、やるときはやるやつだ。楽しかったよ」

「それはよかったのう。ライブというのは、演奏会のことだろう?」

「うん。まあ演奏会だな」

「わしも聴きたかったな」

「あたしも聴きたかったよ」

「いつか機会があると思うよ。おれたちはこれからも活動をつづけるからさ!」

 ヨイチはにっと笑い、祖父母も笑顔だった。

 良彦はライブを回想していた。

 楽しかったな。

 樹子、ヨイチ、みらいちゃんは本当に凄い。プロになれるかもしれない。

 でも僕は、少しベースが弾けるだけの平凡な人間だ。

 音楽で食べていくつもりはない。

 まあいい、しばらくは若草物語で遊んでいよう……。

「お兄ちゃん、何ぼーっとしてるの?」と妹のひまわりが言った。

「なんでもないよ」と良彦は答えた。

 すみれは興奮していた。

 人から注目されて、拍手喝采を浴びるって、気持ちいい!

 もっと注目されたい! 

 有名になりたい!

 若草物語がもっと成功すればいい!

 今日はその第1歩だ! 

 すみれはスターになりたかった。

 みらいちゃんよりも、園田さんよりも、注目されたい。

 いまはまだ脇役でもいい。

 いつかきっと、もっと注目されるチャンスがあるはずだ……!

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