23「隔離」

「捕まっていた人たち、助けますか?」

「ん~、でも解放するつもりなら、変に手出ししないのが良さそうだけど」


 ルーリエは連行されている人の手許を顎で指した。

 鎖の付いた手錠の事を言っているのだろう。


「みんなに付けられている手枷は、魔力を阻害する道具なの。攻撃は勿論だけど防御能力も著しく下がる。私達が戦闘を起こせば巻き込まれて怪我する人も出るでしょうし、人質に取られたら手が出せなくなるわ」

「なるほど」

「ま、この領土の生まれなら、知ってそうな道具だけどね」

「いじめないで下さいよ」

「うふふ、ごめんなさいね」


 ルーリエは嫌味なく笑う。

 困ったことに、からかわれても悪い気分にならない。


 短い付き合いだが、この人には勝てそうにないと悟った。


「あれ、ブラックですか?」

「妙ね……」


 捕まっている人は10人ほどで、連行しているメイドは3人。

 様子を見ていると扉から、更に1人のメイドと連れられたブラックも出てきた。


 4人のメイド達は少しの確認した後、2人2人に別れた。


 メイドの内2人は10人を連れて直進したが、他の2人のメイドはブラックを連れて奥の道へ行ってしまう。


 これはマズい。戦闘力のあるブラックと、人質にしかならない他のメンバーを隔離する気だ。

 同時に助けるには今しかない。


 しかしメイド4人相手に、俺とルーリアだけで勝つのは難しい。


 1人のメイドは制服が微妙に違うのでエルダーだ。

 総合BBB++(A-相当)で、カレンどころか副メイド長のスレイヤーちゃんより上。


 他の3人はシスターで総合E+、D、C-だが、Cランク引き上げのメイド服と銃、剣を装備して戦闘態勢が整っている。


 そもそも誰かを人質に取られたらルーリアは動けなくなってしまうだろう。

 当然ブラックにも魔力を阻害する手枷がつているので、現時点では戦力として期待できない。


 俺がライガー様だと明かせば何とかなるか?

 いやカレンに殺されかけたことを考えれば、それは最悪の結果を招きかねない。


「マコトはブラックを追って」

「…………分かりました」


 ルーリエの出した結論は、俺がブラックを追い、ルーリエが10人を追うというもの。

 敵地で戦力を分散させるのは得策ではないが、今は議論している猶予などない。


「無事でいて下さい」

「お互いに生きてまた会いましょう」


 俺達は別れ、それぞれ別のメイド達を追うのだった。

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