21「別れ」
「もう、信じられません!ここの領主は悪です、やはり!」
城壁を通り、男は食糧庫に荷物を搬入した。
男はそのまま帰っていき、俺達は荷物と共に食糧庫で待機していた。
待機中にホワイトは非常に怒っており、世直しの決意を新たにしてしまっていた。
その理由は、ルーリアに『アレな荷物』の意味を説明されたからである。
「女の子を商品として搬入させるなんて、な、な、な、なんてスケベなんですか!」
「うふふ、領主のライガーが納入先とは限らないのよ?」
「マリアって人ですか?どっちにしろ、候補として名前が出るなら前科があるってことです!」
真面目なホワイトの怒りには取り付く島がない。
俺が悪い訳でもないが、妙に居心地が悪かった。
「怒るのもいいけど、そろそろ動きの最終確認をしておきましょう」
「……そうですね!」
ルーリエが地図を開き、魔術で小さな灯りを灯す。
地図はこの城の一部を記したもので、目当ての地下牢も描かれていた。
「きっとこの地下牢に仲間が捕まっています!2人は彼らを助け出してください」
「あら?リリィはどうするの?」
「私は……領主と会って話してみようと思います!」
ホワイトは真剣な顔でそう口にした。
「あらまあ」
「それは……」
ルーリエも聞かされていなかったようで驚いている。
俺は「それは無理だ」と言おうとして思いとどまった。
メイド隊の服や地図が用意されている所から見るに、城への侵入は前々から計画していたのだろう。
それはルドワイエやライガー様を排して自治を獲得するためのものだ。
できるかどうかは別にして、奇想の断崖のメンバーたちは、領主やメイド達を皆殺しにするぞという勢いであった。
ホワイトとしては有無を言わせぬ強硬手段について、思う所があったと見える。
「計画通り3人で皆を助けてから、全員で領主の所に行かない?1人ではあまりに危険よ」
「みんなは問答無用で領主を排そうとしています!きっと全員で行けば話し合いでは済みません!」
「それはそうだけど……」
ホワイトの決意は固そうだ。
ルーリエは困った顔で俺の方を見たが、俺は何も言うことが出来なかった。
「もし私が捕まっても気にしないで下さい!ブラックさえいれば、戦闘はなんとかなる筈です!」
「無傷で捕まってれば、ね」
「ブラックが戦えない状態の時は、そのまま逃げて下さい!どうせ勝てません!」
なるほど。メイド服が3着用意されていた理由が分かった。
ホワイト、ルーリエ、ブラックの3人で城に侵入する気だったのだ。
しかし俺のせいでブラックは捕まり、俺がブラックの代わりとなっている。
なら俺はこれ以上彼女達の邪魔は出来ない。
「……俺はブラックを助けにきたんだ。それ以外の事に口は挟まないよ」
「感謝します!」
俺の言葉にルーリエは驚くが、ホワイトは決意を持って頷いた。
ルーリエも暫く思案していたが、頑固なホワイトを説得している時間がない事に思い至った様子。
「分かったわ。無茶はしないでね」
「はい!お互いにご武運を」
「スケベな領主に会いに行くんだから、気を付けてねー」
「そ、そうでした!でも私かわいくないので大丈夫だとは思います!」
かわいくない訳ではないが、大丈夫だとは思うが大丈夫ではない可能性は高いというか別の意味で危険度は高いのだが説明がとにかく面倒だ。
領主であると明かすわけにもいかず沈黙を選んだ俺を見て、ルーリエはクスクスと笑っていた。
ホワイトはさっさと立ち上がって扉へ向かったが、ルーリエはからかうように俺を見た。
「あらあら、リリィったら頬膨らまして、拗ねちゃったわね。かわいい」
「……そうでした?」
そうは見えなかったが。
ホワイトは清楚で堅物なイメージだが、感情表現の豊かな子なんだろうか?
それともルーリエにからかわれているだけなのか?
んー、やはり女の子はよく分からない。
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