17「人質」

「厄介な野郎だ!」

「く、来るな!」


 俺を囲んでいるのは6人ほど。

 皆それほど強くはなく、鬼姫を暴れさせれば倒せるとは思う。


 しかし殺…倒す意味がない事を、冷静になってやっと思い出す。


(どうしてたんだ、俺は?)


 鬼姫の記憶や技術に引っ張られてしまっているのだろうか。

 ホワイトがルドワイエに重なって、殺意を振りかざしてしまった。


(この人達と争う意味はない。寧ろ話し合って、ブラックを助ける手立てを見付けないと)


 俺がするべき妥当な判断だろう。

 ただ俺を囲む男達は、話し合いが通じる様子ではない。

 囲いを破って、無力化するしかなさそうだった。


「はあああああ!!」


 これ見よがしな気合の声を出し、目の前の男に切り掛かる。

 俺がホワイトを倒したからか、男はへっぴり腰になって固まってしまう。


「やあ!!」


 情けない男の代わりに、俺の後ろの女の子が攻撃を行う。

 俺の後頭部目掛けて放たれた槍を、


「うぇ!」

「助かる」


 俺は体をずらして避ける。

 槍は空を切り、女の子は槍を振って俺を払おうとした。


「わ!」


 槍の払いの起こりの前に、左手で槍を掴んで引くと女の子は体勢を崩した。

 俺はそのまま入れ替わるように彼女の背後に回る。


「きゃっ……ぅ!!」


 後ろから胸を触ると、女の子が驚いて悲鳴を上げた。

 その瞬間に口の中に短刀を突っ込んで後ろ手に拘束する。


「お、おい!貴様何を」

「ま、待つんだ!人質を取られた!」


 槍を構えた男達は、あっという間に逆転した形勢に戸惑っている。

 俺が短刀を押し込めば女の子は致命傷となるため、下手に動くことができない様だった。


「待って欲しい。俺は貴方たちの敵じゃない。ブラックの知り合いだ」


 俺は女の口に短刀を突っ込んだまま、嘘ではない情報を口にする。

 男達は槍を構えたまま、お互いに顔を見合わせた。


「どういう事なのか、聞かせて貰おうじゃないですか」


 暫く男達と睨み合っていると、吹き飛ばされた筈のホワイトが戻ってきた。

 ほぼ無傷な所を見るに、恐ろしいまでに頑丈なステータスは嘘ではない様だ。

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