16「白の少女」
ステータス的な防御には3つの段階がある。
1つは魔力障壁。
体の周囲に発生するバリアみたいなものだ。
常に貼られている訳ではなく、主に魔力攻撃に対して半自動で発生する。
次に体の表面を覆う魔力による耐久力。
皮膚を硬質ゴムの様に硬くする防御で、魔力による不可視の鎧を着ている様なものだ。
強い攻撃が来れば来るほど、ほぼ自動で必要な分の防御力が生まれる。
最後は肉体。
通常は魔力障壁と耐久力を突破され、魔力が乗った攻撃を受けたら一撃で沈められる。
ただまあ鍛えていれば多少は耐えられるし、達人であれば内気功というやつで体の中を硬化できる人もいるらしい。
「……ふぅ」
息を1つ吐いて、少女へと走る。
少女は迫る俺に剣の切っ先を突き付け、待ちの体勢だ。
少女の身体能力も高くないが、こっちのステータスの方が低いのだ。
相手としても泰然は崩さないと言った所。
後3歩踏み込めば少女の攻撃が届く間合い。
後4歩踏み込めば俺の攻撃が届く距離。
「はっ!!」
少女は間合いに踏み込んだ俺に向けて、剣を薙ぐ。
狙っているのは俺が構えた短刀か。
「甘い」
「え?」
少女の攻撃が届く前に速度を落とし、短刀を逆手に持ち替える。
俺の武器を叩き飛ばそうとした少女の剣は空を切り、俺はその隙に一歩踏み込んだ。
(気に入らない)
少女は懐に入られたと言うのに焦りはない。
恐らくは俺の攻撃を適当に耐えて、次の反撃をどう叩き込もうかなんて考えているのだろう。
「舐めてる、ね!」
短刀を振り上げて、逆手のまま少女の胸へと落とす。
通常であれば腕や刃に魔力を通わせ、攻撃力を上げるのだろう。
しかし俺はそんな高度な事は出来やしない。
「ぐ!嘘っ!!」
けれどもそれ故に俺の攻撃は魔障壁を素通りする。
魔力障壁とは無意識化で体を守る免疫作用のようなものだ。
便利ではあるが常に発動している訳でなく、敵対する魔力を感知してその魔力を防御する性質を持つ。
勿論、本来物理攻撃を素通りさせるものではない。
しかし右目が相手の無意識化の魔力障壁を可視化しているため、魔力の濃い場所を避ければ貫通できてしまう。
「あ……ぐ……」
少女が不思議そうな顔をしてよろめく。
短刀は魔力障壁を無視したとはいえ、硬い鎧と耐久の上から叩いたに他ならない。
魔力で強化していない攻撃では、彼女の耐久を突破できる筈がないのだ。
「なん…で……痛いの……?」
だと言うのに、体を貫く衝撃があったことに驚いたのだろう。
『鎧通し』や『裏当て』という技術を使えば、鎧を貫通して衝撃を伝える事が可能だ。
右目がそうしろと言っていただけなので、何でできるのかは知らないけど。
「止めだ!!」
「く…弱そうな奴なのに、どうして……!!」
右手に短刀を握って、大きく外側に構える。
少女は正体不明の痛みに戸惑いながらも、短刀に備えてロングソードを構え直す。
その瞬間だ。
「鬼火『鬼姫』」
「あっ!!!!!!!!!」
俺の右手の短刀を注視している少女の視界の外で鬼姫が発生し、無防備な右首筋に炎の刃を叩き込んだ。
少女は何が起きたか分からないまま吹っ飛んでいき、家の壁をぶち壊して消えていった。
「ホ、ホワイト!大丈夫か!?」
「き、貴様!止まれぃ!」
少女……ホワイトの仲間らしい人達が物陰から飛び出してくる。
彼らは槍を構えて俺を取り囲んだ。
彼らはG+やF-など、殆ど一般人と言えるステータス。
殺すのに問題は特にないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます