14「強襲」

 鬼姫の炎が領主を襲う。


 鬼の面を付けた人型の炎は、大太刀を構えて振り下ろす。

 人の身長よりも長い刀身は、迷いなく領主へと肉薄する。


「させるか!!」


 裂帛一閃。


 炎の刃の前にオンスロートが飛び出し、刃の無い刀を振るった。

 異能の刃が交錯し、轟音と衝撃が弾ける。


「ぐううう!!」


 オンスロートは弾き飛ばされ、石畳を削りながら吹き飛ばされていく。

 鬼姫はオンスロートを勢いのまま刀を振り被り直し、再び領主へと振り下ろした。


「舐めるなよ!亡霊が!」


 オンスロートは無理矢理足を突き立てて、停止。地面を踏み割り、攻撃態勢に移行。

 着地の衝撃を腕に伝えると、刃の無い刀を逆袈裟に切り上げた。


「『無刃無双(ソードダンス)』!!」


 鬼姫の周囲に不可視の刃が発生し、五方向から切り掛かる。

 怨炎は細切れにされ、力なく消えていった。


「ぐううう!!」


 鬼姫が消える瞬間、青い光線がオンスロートを襲った。

 オンスロートは刃を発生させて攻撃を防いだが、体勢不十分故に吹き飛ばされてしまう。


「あー、もう!どうなってるの?強襲の時間には早くない?」


 見るとブラックが黒い銃を抜き、オンスロートへ向けていた。

 彼女の周囲には小型の魔法陣が6つ浮かび上がり、魔力が装填されていく。


「いーや!やり切っちゃった方がマシよね!」


 ブラックは自棄になったように、黒い銃の引き金を引く。

 瞬間六条の光線が魔法陣から発射され、オンスロートや周囲のメイド達に奔った。


「アンタは逃げて!」


 膝を付いて動けない俺を見て、ブラックは叫ぶ。


 何かを返そうとしたが、意識が混濁して言葉が出てこない。

 鬼姫の恨みが頭の中で暴れ回り、食い破って外に出ようとしていた。


「ごめん……」


 視界は真っ白で、目の裏から血が侵食してきている。

 俺はおぼつかない足取りのままに、群衆に紛れて逃げ出した。


「撃退して捕らえろ!『奇想の断崖』だろう、取り逃がすな!」


 後ろでオンスロートの声と戦闘の爆音が響く。

 ちらりと振り返ると、ブラックと彼女の仲間らしい人々がメイド達に攻撃を始めていた。

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