10「ひしめく町」

 ライガー様の居城のある浮島『シリウスアクティビティ』は、島の中央に巨大な城があり、南東に森が広がっている。

 南西に商業を中心とした町、北西に工業を中心とした町、北東に放牧や農業を中心とした町…というか田舎が、それぞれ広がっているらしい。


 浮島の淵を囲う様に城壁が張り巡らされ、城壁の内側に町や森が広がる構造。

 町や森の内側には城を囲う様に、もう1重の城壁が巡らされ、2重の護りになっている。

 外から攻められた時は浮島外周の城壁で止め、そこが破られたら今度は城の城壁内に引き上げて戦うのだろう。


 逆に各町や森の間に隔ては無く、自由に行き来する事が出来た。

 そのおかげで森を抜けた俺は、特に騒がれる事もなく南西の町に潜り込む。


 日も暮れかけており、町は非常に暗かった。

 街灯は設置されておらず、代わりとばかりに各家が入り口脇に明かりを灯していた。


 町の探索なんて発想は浮かばず、目についた宿屋に宿泊する事にした。


 宿屋は木や石で作った建物で、2階建て。

 グレードが高い訳ではなく、民宿に近いものらしかった。


 非日常を提供する施設ではなく、つまりはこの辺りにある一般的な建物だ。

 ここら一帯は、そう言った狭くはないが広くも無い、平凡な建物が並んでいた。


 いや異常なくらいに同じ形の建物がひしめき合っている。

 情景を平凡と形容するには、心理的な抵抗があった。


 民家以上に大きな建物は無く、道も舗装されていない。

 文明レベルは、さほど高くないと言えるだろう。

 人々の暮らしは豊かとはいえず、浮島の中心にある城だけが不釣り合いに立派だった。


「疲れた……」


 まあこの国がどういった文明レベルのかなんてどうでもいい。

 俺は自分の宿泊部屋に入るなり、服も着替えずにベッドに倒れ込んだ。


 途端に手足が鉛のように重くなり、沈んでいくような錯覚を覚えた。

 どうやら自分が思う以上に疲労が溜まっていたらしかった。

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