解決

「ひっく……ひっく……」


 ありゃー、姫ちゃん泣いちゃったよ。


「それで、どうしてお前は私をいじめたんだ?」


 泣きながら座り込む姫に問いかける。


 こんなのが毎日続いたらたまったもんじゃないから。いじめの根っこから解決する。


「小学校までは皆から可愛いってちやほやされてたの。でもあなたが来たせいでちやほやされなくなったの!」


 ……嘘だろ?


 結を不登校にまで追い詰めたいじめの原因がそれなの?


 女の嫉妬って怖いな。


 まあいいや。解決しないとな。


「お前、俺の家に来い」


「え?どうして私があなたの家に……。それに今、『俺』って……」


 ……あ、やべミスった。


「うるせぇ早く行くぞッ!」


 勢いで有耶無耶にしよう。



◆◇◆◇◆◇



「お前は素は結構いいんだ。私程じゃないけど」


 俺は姫を結の部屋へ連れていた。

 赦せ結。後で掃除してやるからな。


 姫を鏡の前に座らせ、俺が指導をする。


「一言余計なのよ!」


「事実を言ったまでだ。

 まずは……」


 そこから俺のレッスンが始まった。



◇◆◇◆◇◆



「うわ、凄い……」


 三十分後。

 姫は見違えるように綺麗になっていた。結ほどではないけど。


 縦巻きロールの金髪は真っ直ぐ下ろし、薄い化粧を施す。


「ま、学校に化粧はダメだが髪型をもう少しアレンジしていいと思うぞ」


「うん……あ、ありが――って勘違いしないでよっ!別に感謝なんてしてないんだから!!もう帰るわ!!」


 うわ、なんかツンデレになってんだけど。


「おう、帰れ帰れ」


「……今までごめんね、あとありがと」


 姫が顔を赤くしながら小さな声で言った。


 本人的には俺に聞こえないように言ったんだろうけど普通に聞こえてんだよな。


「なんて?」


 ここは聞こえなかったふりでもしとこう。


「何でもないわよ!」


 姫が足音をドスドス立てて玄関へ向かった。


 はあ、騒がしい奴だな。

 さて俺は部屋にいる結に会いに……そういえば、いつもなら俺より先に結が帰ってくるんだ。

 そして、今の俺は結。なら、俺である結は後に帰ってくる。

 俺がいつも帰ってくるのは5時半くらい。

 そう、ちょうど今の時間帯だ。


 ガチャ……


「ただいまー」


 俺の声がした。つまり、結が帰ってきたということ。


 そして、まだ家の中には姫がいる。


「あ、お邪魔していましたっ……」


 結と姫が鉢合わせたようだ。


「……そう」


 低い声が家中に響く。


「も、もう帰りますのでッ」


「待って。少しお茶していきなよ」


 ん?


「えっ?!いいんですか?!」


 んん?


 少しおかしいことになってるぞ。





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引きこもり兄妹〜身体を入れ替えてそれぞれの学校に通う〜 猫丸 @reosyu12

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