兄としての務め

「何ですって……」


 姫が怒っていらっしゃる。


「だから私が可愛いからって嫉妬してるんでしょ?

 可愛すぎてごめんなさい」


「きっ」


 姫がビンタをかます。


「きゃっ」


 なんちゃって。避けるんだけどな。


「てめぇ今、この可愛い顔を叩こうとしたな?お前傷がついたらどうするつもりなんだ?ああ?第一この私に触れることですらおこがましいくらいだ。お前が何なのか知らねぇけどなぁ。次私に触れたらてめぇの衣服剥ぎ取って裸で校庭走らせるぞ。服はネットで売るからな」


「あ、あなた誰ですの?」


 姫が怯えたように尋ねる。


「何言ってんの?私は世界一可愛い神代結だよ」


 喰らえ、全てを魅了するウインク。


 うん、やはり結は可愛い。



◆◇◆◇◆◇



 おっ、来た来た。


 放課後。靴箱を開けると一通の手紙が来ていた。


 『屋上で待ってます』


 だって。


 全く早速結の可愛さに惚れてしまったようだな。

 俺が直々に結に釣り合う人間か計ってやろう。


 屋上はここかな。


 ギィィィ


「あれ?誰もいない

 ……告白する側が遅れるのか。減点だな」


 ギィィィ


 お、来たな。どんな男かな……


「お、本当にいた」


「うほー、めっちゃ可愛いな」


「この子好きにしていいんでしょ?」


 ん、どういうことだ?

 なんか不良みたいな男子が3人来たぞ?


「えぇ、好きなように使いなさい」


 その背後に姫がいた。


「……」


「私もここまでするつもりはなかったの。でも仕方ないでしょう?

 あなたの存在が気にくわないのよ」


 ああ、そういうことね。


「マイナス10000点」


「はあ?」


「お前ら不合格だ。まあ、つってもこの可愛さに釣り合う男はいないんだけどな」


「あなたたち、好きにしなさい」


 姫の言葉に三人の男が動き出す。汚い笑みを浮かべて。


俺の妹わたしって可愛いじゃん。だから小さい頃から男子に狙われるんだよ。それで思ったんだ。俺の妹私の身わたしが守るって」


「頭だけが取り柄の癖に粋がらないでッ」


 男の手が俺に――結の身体に――


「汚い手で触んじゃねぇッ」


 一人の男の金的にキックを与える。


「はへっ」


 その男は泡を拭きながら倒れた。


 残り二人。


 結の身体では筋力がないから正面からはやりあえない。だから、奇襲で行く。


 今からやるのは的あてだ!


「あ、あなた何者よっ。一ヶ月前と全然違うじゃない!容姿も性格も口調も!まるで別人みたいに!」


 辺りに三人の男が倒れる中、立っているのは俺と姫だけだった。

 

「んなことはどうでもいい。

 それよりも私の取り柄が頭が良いだけだって?違うだろ。私の取り柄は天才と超絶可愛いってとこだろうがよ!」

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