バーコード

アルバイトAさん

 平日は客入りも少ないので、レジ担当と言ってもやる事は雑用ばかり。

 プライスカードの印刷、カット、ラミネート。慣れた作業を淡々とこなす事にも飽きてきた頃だった。

 付近の商品をレジに通し、値段を見る。面白みがあるわけでもなかったが、「こんな値段だったのか」と多少なり暇は潰せる。

 ピ、ピ。バーコードをスキャンするたびに、静かな店内を抜けていく電子音。

 ふと、自らの手の甲をスキャンしてみる。興味本位だった。

 ピ。


「え?」


 ニンゲン 100円 1個


 Aさんは慌てて取引中止を押して、画面をクリアした。

 それ以降、レジがAさんを読み込む事は二度となかったという。

 Aさんの手の甲に、バーコードは無い。


「売るにしても、誰が誰を相手に、僕を売ってるんでしょうねえ」


 彼はたったの100円。

 得体の知れない何かに、彼が買われてしまわない事を祈る。

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