第94話 怒りを込めて、いざ制裁!!
「ソフィア!! 金剛先輩!!」
「ハル! ハルー!!」
どうやらソフィアは声を出す元気はあるようで安心した。でも、金剛先輩はぐったりしていて、反応が鈍い。体のあちこちから血が出てるし……!
「ん? あれーイソヤマクンじゃん! なんでここにいるのー? せっかく的当てして遊んでたのにー」
楽しそうな表情から一転して、ウィリアムは不機嫌そうな顔でため息を漏らすと、手に持っていた石を躊躇なく投げ、金剛先輩の腹部に直撃させた。
「やめろ! 金剛先輩はもうボロボロなんだぞ!」
「そんなのしーらないっ。てうかさー、こいつどうやってここ来たの?」
「大方、こいつが場所を教えたんじゃないなしら? まあそれも計算のうちですわ。このためにコマは沢山用意しましたのよ」
天条院がパチンと指を鳴らすと、同じ服装の男達がゾロゾロと入ってきた。しかも手には武器まで持っている始末だ。
この前のは素手だったし、銃が相手でも一回だけなら何とかなったけど、今回のは大型の銃だ。あんなの蹴り飛ばせない。
「ふふっ、絶望したでしょう? お前達もワタクシに土下座して忠誠を誓うなら、ゆるしてあげなくもないですわよ?」
「誰がそんな事するか! 」
「そう。ならあなた達もボロ雑巾のようにしてあげるわ! そして、どちらが上なのかをここではっきりさせてあげますわ! おーっほっほっほっ! さあ、やっておしまーい!」
「目標設定! 射撃よーい! う……て……」
沢山いた黒スーツ達は、一人を残して全員倒れてしまった。動いているところを見ると、死んではいないみたいだ。
一体何が起こったんだ……一瞬すぎて全然わからなかった。
「ミッション、コンプリートしました、お嬢様」
「ああ。よくやってくれた」
「え、えぇ!?」
唯一残っていた人がスーツやサングラス、それに加えてかつらを取ると、そこにいたのは、以前ゆいの時に銃を使って助けてくれたメイドさんだった。
「ば、馬鹿な……!? いつの間に!?」
「彼女には前々から潜り込ませて、お前の確かな悪事の証拠を集めさせていた。生徒会が集めた証拠も当然ある。お前にもう逃げ場はない」
「ぐっ……ぐぐっ……ワタクシに手を出したら、家の人間が黙っちゃいませんわよ!」
「ああ、それが懸念点なせいで、生徒会も学園も動けなかった。だが、長年に渡る悪事の証拠に、今回の事件。これだけ集まれば、いくら天条院家も、報復など考えない。そんな大掛かりな事をしてしまえば、自分の一族が卑劣な事をしたとバッシングをされ、天条院家の実害になるだろうからな」
西園寺先輩に淡々と詰められたせいで、天条院がみるみる青くなっていく。そんな中、我関せず見たいな態度で逃げようとするウィリアムの肩を、俺はがっしりと掴んだ。
「今回は随分と……いや、前からソフィアがとぉぉぉぉぉぉっても世話になったそうじゃないか。それなのに先に帰るなんて、冷たいじゃないか」
「ひゃあ!? だ、だって私関係ないし? だから帰ろうかなってー」
「帰すわけねえだろ。散々俺の大切なソフィアをいじめやがって……一発殴っただけじゃ物足りん」
「え、あ!? そ、その! あれはただの遊びだって言ってるじゃん! 私、別にソフィアの事嫌いじゃないし! ていうか大好きだし!」
こいつの言動からして、本当に悪意は無さそうな感じはした。でも、そんなの知った事ではない。
「いじめる奴からしたら遊び。けどな……いじめられる側からすれば、それは一生の傷になるんだよ! よく覚えておけクソ野郎がぁ!!」
「ちょ、なんで? 私なにも悪くない! 遊んでただけで、どうしてヒールにされないといけないのよ!?」
俺は思い切り拳を振り上げると、そのままウィリアムの顔面に目掛けて振り下ろす……なんて事はせず、ぶつかる寸前の所で止めた。
「ぶくぶくぶく……」
「……ふん、その情けない面が見れたから良しとしてやる。それに、俺は忙しいんだ」
当たってはないはずなんだが、泡を吹いて気絶してしまったウィリアム。なんかお腹の下辺りが濡れてるけど、どうでもいいや。俺には、天条院と決着をつけるのに忙しい。
「さーて、どう落とし前を付けてやろうか……」
「来るんじゃないわよ! こいつらがどうなっても――え!?」
人質二人の方を見た天条院。その視線の先には、さっきまで気絶してると思われてた金剛先輩が、ギロリと天条院を睨んでいた。
「ま、まだくたばってなかったの!?」
「さすがに人数が不利だったからねぇ……気絶したフリをして、チャンスを待ってたのよぉ。あれしきでやられるほど、弱い体じゃないのよぉん。個人的に……ボッコボコにしてやりたい気分だけどぉ……ふんぬらぁ!!」
「ちょ、なにを……ぎゃふん!!」
なんと金剛先輩は力任せに拘束していた縄を引きちぎって自由になると、そのまま天条院を掴み上げて放り投げた。その先にいるのは……俺だ。
金剛先輩……ありがとうございます、良い所取りになってしまって申し訳ありませんが、後は任せてください。
「磯山 陽翔……! 貴様さえいなければ、ワタクシは……!」
「お前が俺達にやってきた数々の仕打ち……それにソフィアへのいじめ……その落とし前はしっかり返さねえとなぁ!!」
「わ、ワタクシは悪くありませんわ! そ、そう! お付きの女たちがやれと言って……」
「そのお付きも、権力で脅してたんだろ? お付きの一人が話してくれた」
「なっ……あのバカ女……! 絶対に許しませんわ……!」
「それが伝えられりゃ良いけどなぁ……これはいじめられ続けたゆいの分」
俺は天条院の胸ぐらを掴み、開いてる左手で天条院の腕を力いっぱい殴りつけた。
わかってる。格闘技を学んだ事のある男子が、か弱い女子を殴るのはいけない事だと。
……それでも……俺は拳を収める事は出来ない!
「いたっ!? なにするんですの!」
「これはずっと迷惑をかけられ続けていた、西園寺先輩や生徒会の分」
次に、天条院のみぞおちに、拳を深々とめり込ませた。
「ごふっ……や、め、なさい! こんな事をして……おじい様が黙って……!」
「最後まで結局他人頼りか。どうでもいいけど。これが……お前がウィリアムを焚きつけて、愛しのソフィアに心身ともに傷を負わせた分」
最後に俺は、胸ぐらを掴む手を入れ替えてから、開いた右手で天条院の顔を鷲掴みにし、思い切り手に力を入れた。
「あぁぁぁ!! いたいいたいいたい!!」
「いてぇよな? てめぇは人が嫌がる事を、平然とやってたんだよ!」
「ふ……ふざけるんじゃないわよ! それは権力があるものの特権! 弱い者はすべからくワタクシのコマですわ! お前らゴミのような下民に出来るような事じゃありませんのよ!!」
ここまでされても、まだ反省の色がないか。もう勘弁ならない。後でどうなってもいい……絶対に許さない。
「そして……これが、俺の中に溜まりに溜まった、てめぇへの怒りの一撃だぁぁぁぁ!!!!」
「ごほぉ!?」
全ての怒りを込めて、俺は拳を振り上げると――天条院の顔面を思い切りぶん殴った。
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