第72話 水着の巨乳美少女達

 クルーザーに乗って数時間。予定通りに俺達は西園寺家が所有する孤島へとやってきた。自然がとても豊かだし、海も透き通っていて綺麗だし、とても良い所だ。


 それはいいんだが、俺達の視線の先――歩いてもそれほど遠くない所に、どう見ても別荘とは思えないような豪邸が見えるんだけど……。


「えっと、玲桜奈ちゃん先輩……別荘ってあれですか……?」

「ああ」

「でっか!? なにあれ、普通の一軒家の何倍の大きさ!?」


 ソフィアが驚くのも無理はないが、俺としては事前に西園寺家を生で見ているから、それほど衝撃は受けてない。驚いてないわけじゃないけどさ。


「いつもは使用人と来るし、常に誰かが常駐して管理をしているんだが、今回は水入らずで楽しみたいと思って、使用人達には本土に戻ってもらっている」

「って事は、あの豪邸をアタシ達が貸し切り!? うわぁ~絶対全部使いきれないよ! ゆいちゃんもみてみて!」

「ふにゅう……」


 テンションマックスになるソフィアとは対照的に、ゆいは俺の背中で目を回している。実は、食べ過ぎと船酔いで完全にダウンしてしまったんだ。


「まだ駄目そうだから、後にしてやりな」

「それがいい。まずは別荘に荷物を置いて、ゆいさんが復活したら海に赴くとしよう。そうだ、野生の猿が生息してるから、一応気を付けておくように」

「は~い! 猿か~ちょっと見てみたいな~!」


 ソフィアの元気な返事が、辺りに響き渡る。俺もつられそうになったが、何とか耐えたのは内緒な。


 その後、別荘に到着した俺達は、それぞれの個室に荷物を置いた後、浜辺へとやってきた。


「ちょっと波が高いな。確か台風が来てるみたいな事をテレビでやってたし……」


 天気予報では、速度は早いけど逸れて直撃はしないと言ってたけど、進路が変わる可能性もあるし、一応気を付けておこう。


 まあ、今はそれよりも……。


「……緊張する」


 一足先に着替えて準備を終えた俺は、浜辺にパラソルを突き立てながら、小さく溜息を漏らした。


 年頃の女子と海に行くのなんて、当然前世を含めて一切無いうえ、相手は推しで絶世の美少女三人だ。ショック死しないように気を付けないと。


「おっまたせ~!」

「パラソルの準備、ご苦労だった」

「っ……!」


 思わず背筋を伸ばしながら振り返ると、そこには女神が立っていた。


 ソフィアは割と普通のピンクのビキニだ。いつもはポニーテールだが、今日は降ろしている。


 シンプルな水着は、ソフィアという素材を完璧に活かしている。おっぱいをわざと寄せてるのかと思うくらい谷間がえぐいし、少しムチっとした太ももとか色々ヤバい。ていうか、胸元の布少なくないか?


 西園寺先輩は赤を基調としたビキニに、パレオを巻いたうえに、麦わら帽子もかぶって大人っぽさを演出している。スラッとしているのに出るところは出まくるという、とんでもないスタイルが強調されている。


 そしてゆいなのだが……恥ずかしがってるのか、ソフィアの背中に隠れていて、顔しか俺には見えない。


「どうどう? 似合ってるでしょ!」

「お、おう……」

「なにその煮え切らない感じ~? ちゃんと言ってよ~!」

「恥ずかしいんだよ! 言わせんな!」

「別にいつもお風呂に一緒に入ってるし、下着だって見てるでしょ!」

「誤解を招くような事を言うな!」


 普段から一緒になんて入ってないし、下着は……うん、これに関しては結構な頻度で見てるわ。でも毎回メッチャドキドキしてるんだからな!?


「磯山君……?」

「陽翔さん……」

「だから誤解だ!」

「ハルってばー! 可愛いでしょー!」

「か、可愛い! ソフィアも西園寺先輩も!」

「えへへ、やったー!」

「そ、そんな事を言ってご機嫌取りをしても……む、無駄だぞ……」


 よほど嬉しかったのか、ソフィアはその場でクルクル回って喜びを表現した。一緒におっぱいが揺れまくってるからやめてほしい。


 一方の西園寺先輩は、真っ赤な顔を俯かせていた。そんな魅力的な格好で、照れ顔をしないでください西園寺先輩。ギャップと可愛さで漏れなく全俺が尊死してしまいます。


「って、ゆいちゃん! せっかく可愛い水着なんだから、隠れてちゃ駄目だよ!」

「だ、だってぇ……恥ずかしいですよぉ……」

「大丈夫大丈夫! ほら!」

「ひゃん!」


 ソフィアに背中を押されたゆいは、バランスを崩して俺の胸に飛び込んできた。


 ゆいの水着だが、水玉模様の可愛いワンピースタイプだ。小柄なゆいには可愛い感じの水着はめっちゃ合ってると思う。


 だが、その可愛さや小柄な身長とは裏腹に、おっぱいの破壊力は三人のうちで最強だ。今にも零れ落ちるんじゃないかと思うくらいに主張が激しすぎる。


 ……改めて思うと、俺ってこのとんでもない兵器に埋もれたり、触ったりしてるんだよな……良く持ったな、俺の理性。


「ね、凄く可愛いよね!」

「そ、そうだな。よく似合ってる」

「ふぁ!? あ、ああ、ありがとうございましゅ……」

「ゆいちゃんってば、スク水持ってきたんだよ? だから、別荘にあった水着をアタシが厳選したんだ!」

「そうなのか……」


 スク水……その殺人おっぱいでスク水……絶対にヤバいだろうな……それはそれで……ゴホン、なんでもないぞ!


「よーし! それじゃ遊ぼう! の前に……ハル、これ!」

「なんだこれ?」

「サンオイル! 日焼けはお肌の敵だからね~。はい、よろしく!」

「ぶふっ!?」


 ソフィアはパラソルの下で水着の上を取ると、そのままうつ伏せで寝転んだ。


 こ、このシチュエーションは漫画やゲームでよく見るやつじゃないか! 地面に押しつぶされて形を変えるおっぱいや、綺麗な背中にふともも……なにこれ、生で見ると破壊力えっぐ!


「ソフィアさん!? ハレンチな事はやめろと言っているだろう!」

「ハレンチ……? 玲桜奈ちゃん先輩、アタシは普通にサンオイルを塗ってもらうだけですよ? これのどこがハレンチなんですか?」

「うぐっ……なら私が塗る!」

「いいんですか? えへへ、よろしくおねがしまーす!」


 俺に塗ってもらえなくて拗ねるかと思いきや、満面の笑顔で任せるソフィアに少し驚いていると、ゆいに指をキュッと掴まれた。


「あ、あの……ゆいも……その……」

「……?」

「な、なんでもないです! うぅ……ゆいには……ソフィアちゃんみたいにアピールできない……」

「…………」


 もしかして、ゆいもサンオイルを塗ってほしかったんだろうか? もしそうなら期待に応えたいけど、さすがにそれはなぁ……。


「あ、あんっ……」

「変な声を出すな!」

「だ、だってぇ……冷たくてぬるぬるして……ひゃあん! はぁ……ん!」


 なんだ、ソフィアはわかった上でそんな色っぽい声を出してるのか!? タチが悪すぎるだろ!


「ほら、塗り終わったぞ」

「ありがとうございます! お礼にアタシが玲桜奈ちゃん先輩に塗ってあげます!」

「私は大丈夫だ。早く海に行きたいだろう?」

「うっ、読まれてる。よーっし、じゃあ遠慮なく海にアタックだー!」

「おまっ!? 水着付け忘れてる!」

「え? ありゃ、本当だ~! 失敗失敗。えへへ」


 遊びたい気持ちを抑えきれなかったソフィアは、水着を付けずにそのまま立ち上がったせいで、またモロに見ちゃったよ……サンオイルのせいでテカテカしてるおっぱい……ヤバすぎだろ……耐えろ俺の理性!


「全くソフィアさんは。ゆいさん、我々もササッと塗って海に赴こうじゃないか」

「は、はい」


 二人も手早くサンオイルを塗ると、海に向かって駆け出す――前に、先に行ったはずのソフィアが、何とは敢えて言わないがブルンブルン揺らしながら戻ってきた。


「ハルにサンオイル塗ってあげるの、すっかり忘れてたよ! ほら、そこに寝て!」

「え、別に自分で塗るから……」

「背中は塗れないでしょ?」

「手を伸ばせば何とかなるから!」


 ソフィアの事だから、ここもした方が良いよね~みたいなノリで、変なところにまで塗る未来しか見えない。それに、俺が恥ずかしくて死んでしまう。


「あ、あの……ゆ、ゆいも塗ってあげたい……です」

「ゆい!?」

「だからハレンチな事はするなと――」

「玲桜奈ちゃん先輩、これはハレンチな事じゃないですってば! あ、そうだ! 一緒に塗れば恥ずかしくないですよ!」

「無茶苦茶理論すぎる!?」

「……確かに、そうかもしれない」

「なんで西園寺先輩もそっちサイドに行っちゃうかなぁ!?」


 こうなったら、もう逃げるが勝ちだ! 海に入ってしまえば、塗るのは不可能だからな!


 そう思った俺は、海に向かって全力疾走をした……のだが、砂に足を取られて転んでしまった。


 ……これ、もう逃げられないわ。

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