第70話 ソフィアの本当の過去

 外に出てきた俺と倫治おじさん達は、何もしゃべらずに歩き出した。


 全く、急に外に連れ出して何をさせるつもりなんだ? 倫治おじさんには良い思い出があまりないから、少し警戒してしまう。


「まあちっと真面目な話というか、アドバイスというか……それをしたくてな。この辺に人気のない所はないか?」

「人気……そうですね。丘の上公園なら人がいないんじゃないでしょうか?」

「丘の上公園。懐かしいな! お前とソフィアがまだこんな小さかった頃に行ったところか! よし、そこに決定だ! ママ、しっかりついてこい!」

「は~い」


 二人は仲良く腕を組みながら、俺を連れて目的地の丘の上公園へとやってきた。ここはその名の通り丘の上にあり、街が一望できるスポットだ。


 個人的にはお気に入りの場所なんだけど、あんまり周知されてないのか、いつも人が少ない場所でもある。


「それで、話って何ですか?」

「お前さん、今悩んでるだろ」

「な、何をですか?」

「俺を囲む三人は美少女ぞろい! しかも俺に多かれ少なかれ好意を持っている! でも、皆魅力的すぎるし、誰かを選んだら誰かを傷つける! そんなの俺嫌だー! ってのが、今のお前の頭の中じゃねーか?」

「…………」


 え、何この人本当にエスパーだったりする? 俺の悩みが全部言い当てられちゃったんだけど?


「まああんな美少女に囲まれてりゃ、誰でも思う悩みだろうよ。けどよ、お前がグダグダしているぶん、あいつらの傷も深くなっていくんだからな。それをよく覚えておけ」


 そう言うと、倫治おじさんははその場で煙草を吸い始めた。


「俺は……」

「ま、今日中に決めろって話はしてねぇ。ただ、あんまりグダグダすんなよってのを言いたかっただけだ」

「陽翔クン、だいじょうぶ。えっと……みんないいこ。やさしい。だから、けんか、しない」

「そう……ですね」


 オリヴィアさんは、きっと俺が誰かを選んでもみんな優しい良い子だから、ケンカはしないって言いたいんだと思う。


「ありがとう、ございます。もう少しだけ……悩んでみます。俺や彼女達にとって、とても大切な事ですから……でも、必ず答えは出します。背中を押してくれて、ありがとうございました」

「おーう、礼は上物のワインでよろしくなー」

「俺買えませんから!」


 ふぅ……よく考えないと。俺は誰が一番好きで、誰と付き合いたいのかを……。


 ようやくバッドエンドが片付いたというのに、また大変そうな事案が出てきたものだ……。俺は、どうすればいいんだろうか……。


「それと、これはソフィアの話なんだが」

「はい?」

「さっきずっと一人ぼっちだったって話があったろ? 実際そうだったんだが、本当はかなり酷いいじめを受けていてな」

「は……?」

「いわゆる人種差別ってやつから始まったいじめでな。ほら、俺の血が半分入ってるだろ?」


 確かにそうかもしれないけど……外国の血が入ってるからって、ソフィアをいじめるなんて絶対に許せない。そいつを病院送りにするまで殴り倒してもいいか?


「しかも、いじめを遊びと信じて疑わないやつが主犯だったみたいでな」

「俺と定期的に連絡を取ってた時は……そんな事言わなかったのに……」

「心配かけたくなかったんだろ。ソフィアはそういう子だ。って、まあそれはいいんだ。もう終わった事だからな」

「…………」


 もしかして、帰国してからやたらと俺にべったりだったのは、いじめで受けた傷が原因だったりするのか? それで、俺に再会できた喜びを抑えきれなくなってたとか……?


「俺が言いてえのは、これからもソフィアと仲良くしてやってくれって事だ。別に付き合ったり、結婚してまで絶対に一緒にいろとは言わねえ。ただ、ソフィアと――」

「当然です! ソフィアは俺の大事な幼馴染です! これからもずっと……ずっと!」


 俺はこれからどうなろうと、ソフィアと縁を切るつもりはない。それは、いじめの過去があっても無くても、変わらない俺の気持ちだ。


「……ありがとよ、陽翔。お前さんがソフィアの幼馴染で、本当に良かったぜ」

「倫治おじさん……」


 今まで見た事の無いくらい、優しい笑みを浮かべる倫治おじさんに応えるために、俺は真剣な表情で頷いて見せた。


「よし、暗い話はこれで終わりだ! そうだ、もう一つ聞きたかったんだけどよ」

「なんですか?」

「ソフィアはいいとして、ゆいちゃんと玲桜奈ちゃんだったか? あんな美人をどこで捕まえたんだ? お前さんも隅に置けねーな!」

「なっ!?」


 え、なんで急にそんな話になったんだ!? さっきまでの空気が完全に吹き飛んだんだけど!?


「内気そうで小柄なのと、スラッと大きくて凛としてるとか、随分とソフィアと違ったタイプだよな。でも両方ともソフィアみたいに、おっぱいがやたらとでけえ。お前さんの趣味か? うん、言わなくてもいい! 俺も男だから理解してる! デカパイは良いものだ! もちろん、チッパイも俺は大好きだ!」

「さっきのシリアスな空気を返せ!!」


 さっきまでソフィアの話をしていたのに、なんで急に俺の趣味とかおっぱいのサイズの好みの話になってるんだ! 温度差があり過ぎて熱が出そうだぞ!


 そんな相変わらずよくわからない倫治おじさんの発言に頭を抱えていると、今まで静かだったオリヴィアおばさんが、スッと俺達の前に立った。


「パパ? なんのおはなし?」

「あ、いや何でもないぞ! ははは!」

「うそ。きょろきょろしてる。あやしい。ぜったい、えっちなはなし、してた」

「な、なんでバレて――ちょ、やめ!」

「パパの……バカー!!」


 オリヴィアおばさんは心からの叫びをあげながら倫治おじさんを持ち上げると、そのままなんとバックドロップをして、倫治おじさんの上半身を地面に埋めた。


 こんなおっとりしてるオリヴィアおばさんだけど、実は世界大会に出れるレベルの柔道経験者なんだよな……まあバックドロップはプロレス技だけど。しかもゴリマッチョの倫治おじさんに出来る程のパワーがあるって事だ……怖い怖い……。


「陽翔クン、パパ、こんなだけど、あなたやソフィアちゃんへのきもち、ほんとうだから」

「はい、わかってます」

「よかった。それじゃ、おうち、かえろ」

「帰るのは良いんですが……」


 俺の視線の先には、上半身が地面に埋まってピクリともしない倫治おじさんの姿が。動かない辺り、気絶してるのか? 死んだりしてなければいいけど……。


 仕方なく俺が主になって倫治おじさんを救出した後、目を覚ますまで待ってから三人仲良く家に帰った。


 ……とにかく、ちゃんと答えを出さないとだよな。それがたとえどんな結果になろうとも――




――――――――――――――――――――

【あとがき】


 私の作品を手に取ってくださり、誠にありがとうございます。ここで第山章はおしまいです。次回から第四章が始まります。


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