第26話 両手に花と巨乳

「あ、あれ……ゆい?」


 俺の予想としては、ソフィアが来て俺の隣を陣取るものとばかり思っていたのに、来訪者はゆいだった。


 もしかして、寝ぼけて部屋を間違えたのか? 初めて来た家なんだし、全然あり得るか。


「んー……にゅ……あれ、陽翔さん……?」

「ゆい、ここは部屋がちが――」

「どうして床で寝てるんですか……ちゃんとベッドに寝て……」

「お、おい話を――」


 暗くて表情がやや見にくい中、ゆいは俺の手を力任せ引っ張って立たせると、そのまま一緒にベッドに倒れこんだ。


 ま、まさかここまでパワープレイをしてくるのは想定外だったぞ……。


「ゆ、ゆい。ちゃんと自分の所で寝ないと……」

「駄目……ゆいが見てないと……陽翔さ……ちゃんと寝な……もん……」

「いや、付き合ってもない男女が一緒に寝るのはマズいって」

「だいじょーぶ……陽翔さん……良い……人……」


 完全に寝ぼけているゆいは、俺の腕に抱きつきながら、そのまま寝息を立て始めてしまった。


 どうしよう……俺の思ってた事とは全く違う展開になってしまった。完全に腕がホールドされていて、引き剥がすのも大変そうだし、なによりも……。


「んふふ……むにゃ……」


 ……こんなにゆいが安心して気持ちよさそうに寝てるのを見たら、引き剥がせないって……。


 仕方ない、今日も寝不足覚悟でこのままでいるしかない。


 でも耐えられるか俺? ソフィアよりも甘い匂いに包まれ、腕はゆいの特大おっぱいに埋もれている。


 いや違う。耐えられるかじゃなくて、耐えるんだよ。前世を思い出してから、何度もエロい目にあっても理性を保ってきたじゃないか。今回も同じ事をすればいい。


「気を紛らわすためにも、しりとりでもするか……」


 えーっと、リンゴ……ゴマスリ……リス……スリ……リク……クリ……。


「んっ……やめ……」

「え? ゆい……?」


 しばらく一人で頭の中でしりとりをしていると、今まで穏やかに寝ていたゆいが、突然うなされ始めた。


 どうしたんだ……? 小刻みに震えてるし、涙まで……よっぽど怖い夢でも見てるのか……?


「ごめ……なさ……もっと……頑張るから……捨て……いで……おと……おかあ……お姉ちゃん……」

「…………」


 この寝言……家族に見捨てられる夢を見てるのか? こんなになってしまうくらい、家族の事がゆいの心に傷を負わせていたのか……。


「ゆいは一人じゃないよ」

「ぐすっ……」

「大丈夫……大丈夫……」

「……すー……すー……」


 あまりにも見てられなくなった俺は、ゆいの頭を優しく撫でながら、諭すように大丈夫と語り続けてると、再び寝息を立て始めた。


 よかった、これで少しでもいい夢が見られると良いんだが……。


 それにしても、こうして目の前でつらそうな姿を見ると、絶対に幸せにしてあげたいと思ってしまうのは、ゆいが推しの一人だからだろうか?


「元から絶対にバッドエンドから救うつもりだったけど……その気持ちが更に強くなったな……」


 今俺がしている事が、必ずしも正しい事かどうかはわからない。もしかしたら、もっと酷い結末に向かって進んでる可能性だってある。


 だからといって、何もしないというのは絶対に駄目だ。投げ出すのは、もう前世で沢山やったんだから、現世は推しのために頑張るんだ。


 そのためなら、俺はこのおっぱいと理性との勝負にだって勝ってやる! 絶対に手を出したりなんかしないぞ!


 ……そう決意を改めた俺を更に試すように、再び部屋の扉が開いたのを俺は見逃さなかった。


「……え、ソフィア……?」

「えへぇ……一緒に寝よー……」


 開いた扉の前には、半分寝てるような声のソフィアが立っていた。しかも裸で。


 し、しまった……! ゆいの事で完全に油断してた……! ていうか、なんでまた裸になってるんだ!?


 マズイ、今の俺は身動きが取れない……ソフィアを止める事も、逃げる事もできない!


「あれ……ゆいちゃんもいたんだ……いなくなってたから……心配してたんだよぉ……」

「むにゃむにゃ……」

「うん、三人で仲良く寝よーねぇ……」

「お、おいソフィア……! お前は自分の寝床に……」

「なーにー……アタシだけ仲間外れ……?」

「そ、そういうわけじゃなくてだな……」

「じゃあいいよね~……」


 俺の制止など聞く耳を持たず、ソフィアはゆいのいる反対側の腕を陣取るように寝転がると、当然のように抱きついてきた。


 え、なにこの状況。両腕を推しの超美少女に陣取られ、殺人兵器(おっぱい)に両腕を包まれている。しかも片方は完全に裸。


 据え膳食わぬは男の恥とでもいいたいのか? ふざけんな! 俺は……俺は絶対に手を出さないぞ! そういう事をするのは、付き合ってからするものだ!


「くっそ……ギャルゲーマーを舐めるなよ……推しは絶対に汚さないからな……!」


 あれ、汚さないって言ったけど……俺、普通にこうやっておっぱいを何度も触ってるし、おしりに埋もれたり、裸を見たり……思いっきり汚してないか?


 違う、違うんだ。あれは事故! 俺は自分からソフィアや西園寺先輩やゆいに嫌らしいことはしていない! 全部事故だ!


 事故……だよな……? なんか不安になってきたぞ……だ、誰か教えてくれ……!


「ハルぅ……さむい……」

「ほら、こっち来れば暖かいから」

「うぅん……あったかぁい」


 腕から体の方に抱きつき直したソフィアは、だらしない表情を浮かべていた。大層満足なのは良いんですが、密着度が上がったせいで、俺のドキドキが更に急上昇した。


 いやマジこれヤバいって。肌のすべすべした感触が気持ちいいし、二人の寝息も静かで耳に心地いいし、鼻も二人の甘い匂いで幸せだし、なによりも二人のGカップとIカップのおっぱいが俺に遠慮なく押し当てられている。


 更にゆいの方が追撃するように、俺の手に自分の手を絡めてきた。きっと手を繋いで安心したいんだろうけど……い、今の俺には荷が重い。なんていうか、男の性欲をピンポイントで突いてきてる。


 だが! もうここまで来ちゃったら、要求を飲まずして何がギャルゲーマーだ! 推しのためなら、なんだってやってやる! それがたとえ……寝不足だろうが性欲だろうがな!


 さあ来い二人共! 存分に甘えてこい! 俺はそれを耐えきった上で、君達と……そして西園寺先輩を、バッドエンドから救ってみせるぞ!!




――――――――――――――――――――

【あとがき】


 私の作品を手に取ってくださり、誠にありがとうございます。ここで第一章はおしまいです。次回から第二章が始まります。


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