第25話 裸の推し二人

「あれ、なんでハルが慌ててきたの?」

「だ、だって悲鳴みたいなのが聞こえたから!」

「はひゃ……あ……! み、みられ……お父さん以外の男の人に……」


 まさか俺が登場するだなんて思ってなかったのか、ゆいは首から上全部を真っ赤にさせ、目はグルグルになっていた。


 いや、今は混乱するよりもだな! そのゆいのご立派なおっぱいと、スラッとした綺麗な体を隠していただきたいんですが!? ただてさえ、隣にナイスバディで裸のソフィアがいるのに、そこにゆいが加わるのはマズすぎる。主に理性が。


「きゃああああああああ!!!!」

「ふごっ!? ぶもっ!? いへぇ!!」


 ずっと混乱状態だったゆいは、ベッドにあった枕を俺に投げつけてきた。


 それだけに留まらず、倒れた俺に馬乗りすると、そのまま枕で俺の顔を何度も強打する。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ちょっ、まっ」


 一発の威力はそうでもないけど、何回も当たると痛い……いや、それよりも問題がある。


 ゆいが枕を振り上げた時に、ゆいの一糸纏わない姿が……端的に言えば、めっちゃデカくて、はち切れんばかりのおっぱいが、俺の前に現れる。


 しかもやっかいなのが、俺に枕で攻撃する際に振り上げるんだけど、その時にガッツリおっぱいが見えてるどころか、先端のさくらんぼ色のあれも見えてる。後動きが凄いから、かなり上下に揺れてて……ヤバいの極み。


 つまりだ。今の俺は、ゆい(ほぼ裸)に馬乗りにされ、顔面を枕で殴打されまくるという地獄と、ゆいの揺れまくる大きなおっぱいを間近で堪能するという、おっぱい天国の境目にいる。


「あっ!」

「ぐもっ!」


 ゆいの気の抜けた声と共に、彼女の手から枕がすっぽ抜けてしまった。しかし、体は前に行こうとしており……そのまま勢いが止められず、ゆいは俺の体の上にうつ伏せになる形になった。


 や、やわらかーい……叩かれ過ぎたのか、それともおっぱいを見て、顔で受けたからなのか……色々気持ち良すぎてどうでも良くなってきたなぁ……おっぱいぷるんぷるーん……ぐへへぇ……。


「ひゃん……ダメ……」

「ちょ、ゆいちゃんやりすぎだよ〜! ハル、起きてー!」

「あ、あれ……川の向こうに……ソフィアとゆいと西園寺さんがいるじゃないか……今、会いに行きます……!」

「だ、駄目です! それは三途の川です! 行ったらもう戻ってこれません!」

「いやー! ハル死なないでー!」

「と、とにかくたくさん揺らして起こしましょう!」


 あはははは……あれ、なんか地震が起きてるな……誰だ邪魔すんなよ……。


「戻ってきてくださいー!」

「ハルー!!!」


 誰かが俺を呼んでる……?


 そうだよ、こんなところにいても仕方ない。俺は三人をバッドエンドから救うために生きてるんだ! こんな所で死ぬわけにはいかない!


「う~ん……あ、あれ?」

「ハル! 大丈夫!?」

「俺……そうだ、ゆいに……」

「ご、ごごご、ごめんなさい! ごめんなさい! ゆいが取り乱したせいで……ゆいが駄目な子なせいで、ご迷惑ばかりおかけして!」

「い、いや……キュウには言った俺が悪……い……」


 俺の前には、何度も頭を下げるゆいの姿が。そして、俺の隣には、俺が起きた事を大喜びして抱きついてくるソフィアがいる。


 ちなみに言っておくが、二人はまだ裸のままなんですが……モロ見えなんですが……。ドキドキでまた倒れそうです……。


「い、いいからとりあえず服を着よう。な?」

「はっ……!? そ、そうですよね! あれ……パンダさんどこ……?」

「え~? もう寝るんだから、服はいらないよ~」

「普通はいるの!」

「や~だ~!!」

「子供みたいに駄々をこねるな! うおっ!」

「へっ……? ひゃああん!!」


 イヤイヤをするソフィアをなだめようとしたが、検討虚しく暴れるソフィアに倒された俺は、そのまま一緒に倒れこんでしまった。しかも……ゆいまで巻き込んで。


 えっと、説明しておくとだな……俺の下にほぼ裸のゆいがいて、俺の上には完全に裸のソフィアが乗っかってる状況です、はい。


 これ、西園寺先輩とぶつかった時とほとんど同じじゃねーか! むしろ悪化してるし!!


「ソフィア、離れろって!」


 もにゅん――


「きゃあ!」

「あっ……」


 今の……完全にソフィアのおっぱい……マズイ! 触ってしまった事がマズいのもあるが、俺から手を出したらソフィアは……!


「は、はぅぅぅ……お触りはメッって……は、恥ずかしい……」


 やっぱり防御よわよわのソフィアは、体中を真っ赤にしてふにゃふにゃになっていた。こうなったら、戻るのに時間がかかる。


「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……ゆいが悪い子だから……こんな事に……ごめんなさい……!」


 俺の下では、ゆいが自己嫌悪に落ちて泣きながら謝ってるし……くそっ、こうなったら何とか出来るのは俺だけだ! 心を無にして、このおっぱいヘブンから脱出するんだ!


 すーはー……俺はロボット。何も感じない。俺のミッションは、ここから脱出する事だ。失敗条件として、ソフィアとゆいを傷つける事を禁止する。では、ミッションスタート


「ひゃん……」


 ふにゅん――もにゅん――


「きゃっ! あわわわわ……」


 ポヨンッ――


「はぁ……はぁ……くっ!」


 どう動いても、ソフィアとゆいのデカいおっぱいに当たるし、回避してもすべすべお肌や二の腕、もちもちのふくらはぎが俺をお待ちかねしている。


 だが……俺はそれを乗り切って……はぁ!!


「なんとか脱出できた……」


 なんか、一年分の女の子成分と、おっぱい成分を摂取した気がするぞ。って、それよりも今は二人に服を着せなければ!


「はい、これ着て!」

「あ、ありがとうございます」

「ソフィアもこれ着て」

「うぅ~……」

「う~う~言っても駄目!」


 ソフィアには薄ピンク色のパジャマを、ゆいにはパンダのパジャマを渡すと、二人共ちゃんと着てくれた。これで安心。そして俺はチョー疲れた。


「それで……事情は大体察してるけど……何があったんだ?」

「えっと、アタシが一緒に寝よって言って、ゆいちゃんがいいよって言うから、そのまま脱がせた!」

「アウトだよ! 女同士でも、普通は寝る時は脱がないんだよ!」

「うっそー!!」


 まるでこの世のものじゃないものを見た時のような表情を浮かべながら、ソフィアはうなだれてしまった。


「なぜなの……服が無い方が……解放感があっていいじゃん……!」

「まあそれはいいけど、やるときは一人でやってな。あと、他の人を無理やり脱がすような事は駄目」

「はーい……反省してます」

「それならよしっ」


 いじけるように体育座りをするソフィアに、俺が羽織っていたジャケットをかけてあげると、にへぇ……と表情が和らいだ。


「ハルの匂いだぁ……えへへ……良い匂いだなぁ……すーはー……うへへへへへ」

「…………」


 なんかちょっと顔が変態っぽくなってるけど、とりあえず結果オーライだな。あとはゆいの方だが……うん、ちゃんとパンダパジャマは着れたみたいだな。


「は、陽翔さん……その、ごめんなさい……ゆいの汚いものをお見せしてしまって……」

「汚いって……どこも汚くなかったぞ?」

「だって、身長が小さいのに、こんなにおっぱいばかりが大きくなって……どう見ても変です。だから、こんな汚いのをって――」

「ゆいは汚くない」


 バッサリとそこで言い切ると、少し驚いたような表情のゆいが、俺の事を見つめ始めた。


「ゆいは魅力的だ。可愛いのはもちろん、礼儀も正しいし、ごはんもおいしいと食べてくれる。漫画の話になると止まらなくなるのも可愛い」

「え、なんでゆいが漫画が好きなのを知ってるんですか!?」

「勘? っていうのは冗談で……前にゆいが自分で言ってたよ?」

「あ、あれ……?」


 あ、あっぶな。キャラ説明文で知っていた知識をつい口に出してしまった。励ますためとはいえ、あまりにも軽率すぎた。


「まああれだ。ゆいには汚い所は無いよってことで一つ」

「……はい、ありがとうございます」

「さて、今度こそ俺は部屋に戻るから。ソフィア! 絶対にゆいを脱がすなよ! 振りじゃないからな!」


 とりあえず念を押した俺は、自分の部屋に戻って来て電気を消す。


 さてあとはベッドの上にダイブするだけ……なんだが、俺はこの先の展開が予想できている。


 それは……絶対ソフィアがここに乱入してくるという事だ! もしかしたら、ゆいも来るかもしれないが。


 そんな状況でベッドに寝たら、また隣を占拠されて終わりになる。だから、床で寝る作戦を取るってわけだ。


「さあ来るなら来い……!」


 床に寝っ転がりながら待つことしばらく。そろそろ眠くなってきた頃に、部屋のドアが開けられた音が聞こえた。


 案の定来たな……さあそのままベッドに寝るんだ! そして俺はこのまま床で寝れば、今日は一緒に寝る事は避けられる!


 と思っていたら……なんと来たのは……ゆいだった。

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