第12話 おやすみパニック!!
「そ、ソフィアさん!? どうしてお洋服を脱いでいらっしゃるのでしょうか!?」
「な、なにその喋り方。別にいつも通りだよ?」
「いいから、とりあえずこれ!」
俺は顔が燃えてるんじゃないかと思うくらい熱くなるのを感じながら、ソフィアに掛け布団を渡した。
そう、これが俺が疲れた頭をフル回転させて思い出した事だ。
実はな……ソフィアは寝る時は何も着ないで寝る癖があるんだ! もちろんパンツも脱ぐから、正真正銘のすっぽんぽん!
いやね、別に寝方に文句を言うつもりなんてこれっぽっちもないぞ?
問題なのは、その解放感を得る場所を、思春期真っ盛りの男子の部屋(しかもベッド)でするのは、色々とぶっ飛んでる気がするんだよ! これもギャルゲークオリティって事か!?
「ふ、服は着て寝た方が良いって! お腹痛くなるぞ!」
「大丈夫だよ~いつも裸で寝てるし」
「じゃあせめてシャツとパンツだけでも!」
「窮屈だからヤダ~」
可愛らしく口を尖らせながら拒否するソフィアは可愛い。でも、その可愛さに負けてOKを出してみろ。寝不足に加えて、自分自身の理性と戦い続けるという戦争を繰り広げる必要が出てきてしまう。
「アタシの事は気にしなくていいよ。ハルにだったら見られても全然平気だし! あ、でもさっきみたいな急なお触りはメッ! だよ? ビックリしちゃうからね!」
「そんな事しないから!」
……事前に言ったらいいのだろうか? いやいや、そういう問題じゃないだろ。
「はいはい、明日も早いんだしさっさと寝るよ!」
「お、おい!」
「えへへ~おやすみハル」
俺を強引に引っ張ってベッドに寝かせたソフィアは、満足げに笑いながら電気を消した。
そうだ、ソフィアが寝たタイミングで抜け出して、父さんの部屋にあるベッドに寝よう! そうすれば一緒に寝なくて済む。
あ、でも……明日の朝に、ソフィアにどうしていなくなったのか、そんなに一緒に寝るのが嫌だったのかって悲しませるかもしれない……悲しむソフィアは見たくない……。
「すー……すー……」
はやっ、もう寝てるよ。ていうか、裸で男の隣に寝てるっていうのに、爆速で寝れるって凄すぎないか? それくらい信用されてるのか、はたまた男として見られてないのか……。
そんな事を思っていると、不意に腕に温もりと柔らかい感触を感じた。
「……もしかして……」
暗くてもわかる。この感じ……間違いない。ソフィアが寝ながら俺の腕に抱きついてきてる! しかも、ソフィアのおっぱいが俺の腕にダイレクトに当たってる!!
これはマズいなんてレベルじゃない。抱きつかれたままでは、ベッドから抜け出す事が出来ない。起こさないように、やんわりと離れよう。
「ほらソフィア、離れろって……」
「んー……ハル……行かないで……」
「……?」
「ハル……アタシ……一人はやだ……」
ソフィアは子供の様に甘えた声を出しながら、更に強く抱きついてきた。
この寝言……ゲームの時も言っていて、何かあったんだろうかと疑問に思っていた。結局この理由はバッドエンドルートでは語られなかったから、理由は知らない。
「……そんな事を目の前で言われたら……離れられないじゃないか……」
「むにゃ……くー……」
こうなったら……ソフィアの安眠のためにも、このままでいるしかない。寝不足? 理性? そんなの全部俺が耐えればいいだけだろ! 絶対に負けないからな!!
****
ピピピピ――
「んう……朝か……」
翌日。いつのまにか寝ていた俺は、枕元にあるスマホを止めるために手を動かした。
あの後、ソフィアの寝息と寝言をBGMにして、ずっと理性と戦っていたんだが……寝不足のせいか、いつの間にか寝れたみたいだ。寝不足おそるべし。
「うーん、スマホは……これか?」
おかしいな、スマホってこんなに柔らかかったか……? いくら操作してもアラームが止まらないし……。
それにしても、あったかくて随分と触り心地が良いなこれ……ずっと触っていられそうだ……。
「んっ……」
「…………………………」
俺の隣で、ソフィアの艶めかしい声が聞こえてくる。
おいちょっと待て。この俺が触っているのって……もしかしなくても、ソフィアのおっぱいじゃないか!? なにギャルゲーでありそうな事を自分からしてるんだ!? 早く離さないと!
「ハル……? おはよー……」
「お、おはよう!」
「……え……?」
自分の間違いに気づき、放そうとした時にはもう遅かった。寝ぼけ眼のソフィアは俺の事をジッと見つめてから、自分のやられている事に気づいたのか、頬を一気に赤らめた。
「は、ハル!? えっとえっと、これって……!」
「違う、誤解だ! スマホのアラームを止めようとして手を伸ばしたら、寝ぼけてソフィアのお……おっぱいに……!」
「~~~~っ!!」
俺の説明を聞いたソフィアの顔は、みるみる真っ赤になっていく。照れた顔も可愛いが、今はそんな事を気にしてる場合じゃない!
「も、もう! お触りは許可なしにはメッ! って言ったでしょ!」
「大変申し訳ございませんでしたっ!!」
俺は即座にベッドから出ると、その勢いのまま土下座をする。まさか二日連続で土下座をする日が来るだなんて、夢にも思ってなかった。
「まあ……アタシが裸で寝てたのも悪いけど……」
「それは理由にならない! 仮に服を来てたとしても、触ってた事には変わりはない!」
「わ、わかったから頭を上げてよ~! アタシは全然怒ってないから! ビックリしただけだから!」
そう言われても、俺がやった事は悪い事だ。やっぱり無理にでも引き剥がして、父さんの部屋で寝るべきだった……!
「むぅ~……じゃあアタシのお願いを聞いて。それで許してあげる」
「俺に出来る事ならなんでも!」
「今日の朝ごはん、全部食べて」
「え……? そんな事で良いのか?」
「うんっ」
もっと凄いお願いが来ると思っていたのに、想像の何十倍も可愛いお願いに驚いて顔を上げると、掛け布団で前を隠しながらニッコリと笑うソフィアの姿が見えた。
俺が悪いってのに……本当に優しい子だ。やっぱり彼女を推していた俺の目に狂いはなかった!
しかし、このままでは優しいソフィアがバッドエンドで悲しみのどん底に叩き落とされてしまう。そんなの……俺が絶対に回避してやる!
「それじゃ、アタシ荷物が置いてあるおじさんの部屋に一回戻るね。その後に朝ごはんを作るから!」
「わかった。手伝える事があったら何でも言ってくれ」
「えへへ、期待してるよ~」
「んじゃ、俺は目を瞑ってるから、今のうちに部屋を出てくれ」
ここで気を抜いていると、ソフィアが部屋を出る際に、また裸を見てしまう事になる。
だが俺は少しは学ぶ男! それを避けるためには、こうやって目を閉じていれば万事解決!
「えへへ、ハールー♪」
「おわぁ!?」
「んー……ちゅっ」
「あっ……」
ソフィアを見ないように、目を瞑って丸くなっていたら。突然背中にソフィアがのっかってきて……俺の頬にキスをした。
きゅ、急になにをしてるんですかこの人は!? チューするだけならまだしも、裸のままでギューギュー抱きついてくるんですが!? それそろ俺も限界を迎えちゃいますよ!?
「おはようのチューだよ。昨日もしたでしょ? 忘れちゃった?」
「わ、忘れてなんて……」
「あ~や~し~い~……バツとして、これから毎日朝のチューをして、その身に染みこませてあげます!」
「まじかよ」
「それじゃ、今度こそごはんの支度をしてくるから、待っててね~」
それだけ言って満足したのか、ソフィアはトテトテと音をたてて部屋を後にした。その際に、彼女の大きくて張りのあるおしりを見たのは……内緒の話だぞ。
……え、あんなに拒否してたくせにって? 仕方ないだろう? 俺だって……男なんだからさ……少しくらいは見たい。
でもいかん!欲望に素直になって三人のヒロインを悲しませたら本末転倒! あくまで俺の目的は、歴史を曲げて、三人がバッドエンドにならないようにするんだ! そのために、今日も頑張るぞー!
「はあ……ハルにだったら、いくらでも触られても良いっていうか……むしろ触ってほしいくらい……でも、自分から行くのは全然平気なのに、心の準備も無しにハルに触られるのは……は、恥ずかしいよぉ……でもがんばってアタシ。ずっと大好きだったハルの家に住めてる今がチャンス! 胃袋を掴みつつ、ガンガンアピールしなきゃ!」
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