③
生存者たちは皆、次々に口を開く。
それを制止したのは熊のように大きな体の男性隊員・熊田だった。
「静かにするんだ!今から話すことは君たちのこれからに関わることなんだ。今きちんと聞いておかないと、後で困るのは君たちだぞ。何度も同じ質問は受け付けない」
熊田がそう言うと、騒がしかった室内は一瞬にして静まり返った。
相良は彼に近づき「ありがとう。助かった」とだけ言った。熊田は軽く頭を下げると、一歩下がる。
「話を続ける。まず君たちの班分けだが、それは既に身体検査、適性検査時に行われている。君たちの左腕にバンドが巻かれているだろう。皆それぞれ、緑、黄、白、青、赤、紫と色が違う。それは班の色だ。この施設には六つの班がある。それぞれ、医療班、調達班、保護班、解析班、制圧班、調査班だ。そしてその班には名前がついている。【医療班・アスクレピオス】【調達班・クロノス】【保護班・ウラノス】【解析班・アテナ】【制圧班・アルテミス】【調査班・アネモイ】だ。君たちはこの六つの班に所属することになる。誰がどの班かは、のちほど説明する。この各班の業務内容については、瀬名から説明してもらう」
「瀬名、頼む」と声が掛かると、一人の女性が前へ出てきた。その女性はふんわりとした風貌ながらも強い意志を感じた。
「私が瀬名です。よろしく。今から、各班の業務内容を説明します……」
それからは長い説明が続き、バンドの色ごとに生存者が集められた。そして、居住区へと連れて行かれ、それぞれに役割が与えられた。
「今、集められたお互いをしっかり覚えておいてください。もちろん色も……です。その色がこの中で生活するための大切な目印となります。そしてお互いの人権やプライバシーを守るために、今日からは苗字だけで呼び合い、あまり親しくしすぎないでください。決してフルネームで呼ばないように。あ、下の名前も禁止ですよ。また、お互いの業務内容については他言無用です。一切の口外を許しません。もし、それらのことが守られていないと分かれば、この施設から追放させて頂きます」
瀬名は笑顔でそう言った。それから真理子たち生存者は、地下三階、地下四階にある居住フロアへと案内された。
「地下三階が男性、地下四階が女性のフロアです。居住区への異性の立ち入りは禁止です。それは必ず守るようにしてください。また室内の詳しい説明等は、皆さんの腕に着けてあるバンドを、扉の裏のモニターにかざしてください。画面に表示されたAIによって説明を聞くことが出来ます。皆さんの部屋はバンドの色ごとに分かれています。扉に皆さんの苗字が書かれていますので、そこが今日から自室となります。以上です」
瀬名はそう言うとその場を去っていった。男性は三階に、女性は四階へと移動し、各自バンドの色を確認しながら自分の苗字が書かれている部屋を探した。
「……青色で安藤……安藤……あ、あった。ここが私の部屋か……」
真理子は自分の部屋を見つけた。ネームプレートには【安藤・倉木・藤田】と書かれていた。どうやら三人部屋のようだ。
「あ、真理子~!!良かった~同じ部屋なんだね。安心したよ……真理子がいると……」
「うい……あ、倉木さん、さっきも説明があったけど、ほら、名前は禁止っていう……」
「あ、そうだった……。ま……安藤さんのこと、いつも名前で呼んでたからつい。何か違和感があるけど生き残るためには仕方ないか……。これから大変で忙しくなるしね……。あ、もう一人の藤田さんは?」
「あ、私が藤田です……藤田佳奈といいます」
少しおっとりした女性が現れた。何かに怯えているのか、不安そうな顔をしている。話し方もどこかぎこちなくて、おどおどしていた。
「あなたが藤田さんね。私は安藤、この方が倉木さん。お二人とも、今日からよろしくお願いいたします」
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