真理子は不思議に思う。周りを見ると、みんなが青いバンドを巻かれているわけではなかった。赤、黄、青、緑、白、紫と六色のバンドが見える。

「ねえ、真理子……これって何だと思う…?」

 そう声を掛けてきたのは、ULIで共に働いていた倉木羽衣だ。

「全然分かんない……。私は青だけど、羽衣も青色なんだね。あ、ねえ……ちょっと文字見せて?」

 真理子は羽衣の腕に巻かれた青色のバンドに書かれている文字を確認する。そこには自分と同じ【CLEAR】の文字が。

「真理子ってさ、ちょっと人と違うよね。何かs……頭が良いだけじゃなくて、勘もいいし、人とのコミュニケーションも上手いし、何か羨ましいな……」

 二人が会話をしていると、西条が近づいてきた。腕には真理子と同じ青いバンドが巻かれている。彼の文字も確認すると、確かに【CLEAR】の文字がある。

「同じだ……六色のバンドにクリアの文字……検査……役割……ここってもしかして何かの組織なのかな……」

「そういえば、中原さん見かけた?あの時隊員に連れて行かれてから一度も見てないんだけど」

 西条はそう尋ねた。検査ばかりで忙しく、あまり気にしていなかったが彼に言われて気づいた。確かに検査が必要なはずにもかかわらず、彼女の姿は見ていない。

「私も見てないんです……大丈夫かな……」

「多分だけど、彼女は大丈夫だと思うよ。確信はないけど、もしかしたら……」

 西条がそこまで言いかけた時、一人の隊員が呼びかけた。

「皆さん、検査はこれで全て終了です。腕にはきちんとバンドが巻かれていますね?それは絶対に外さないでください。では今から、ここの説明をしますので大会議室へ移動します。遅れないようについてきてください」

 隊員にそう言われ、生存者たちは長い列を作っていく。人が三人ほど並べば隙間すらできないような細い廊下を進んでいく。

 先ほどの部屋から三〇メートルほど歩いたところに、エレベーターがあった。何人かの塊になり、それに乗り込む。エレベーターを降りると、細い廊下がある。その奥に一段と広い部屋があった。ここがさっき隊員が言っていた大会議室なのか。

「順番に奥に詰めてください。隙間ができないようにお願いします」

 ぞろぞろと部屋に入っていく。さっきまで広く感じた部屋は、あっという間に狭くなった。生存者たちはこれから何が起こるのかと、不安を隠せないのか、黙る者、とりあえず話す者と様々だった。

「ガイア部隊隊長より、新隊員への挨拶と連絡がある」

「え……ガイア部隊?なに、中二病じゃん……」

 どこからともなくそんな声が聞こえてきた。

「静かに!隊長のお話だ!」

 騒がしい部屋に、透き通るような低い声が響いた。隊員は“隊長”と紹介した男性に一礼した。

「皆、よくあの中を生き延びた。君たちのことを誇りに思う。私はガイア部隊隊長の高田だ。今日から君たちは我々と共にここで生活し、働き、これからの日本を再建していくことになる。それに伴い、これからいくつかの説明と注意事項を言っておく。一度しか言わない。よく覚えておくように」

 自らを高田と名乗った男性は、他の隊員より体が一際大きく、いかにも軍隊の隊長と言う風格があった。

「ここは軍人ばかりいるのかしら……それとも……」

 真理子はそう考えずにはいられなかった。目の前に立つ数人の人物たちは皆、佇まいから仕草、話し方、全てが軍人の雰囲気を醸し出していたからだ。

「まず始めにこの施設について話をしていく。君たちも承知の通り、この世界は地球温暖化により一度は破壊された。陸地は以前の半分ほどとなり、それは今も続いている。そこでが考案され、そして実行された。この計画について詳しくは話せないが、君たちはその中を生き延びた生存者だということだ。そこで、その計画が考案された際に、この施設が建設されたのだ」

「あ、あの……この建物は一体どこにあるんでしょうか。それにこの施設は一体……」

 誰かが、隊長・高田に尋ねた。

「この施設について詳しくは話せない。ただ言えることは、この建物は地上よりもはるかに安全であり、ここにいる君たちの安全は確保されていると言うことだけ伝えておく。あ、この建物はどこにあるかと聞いたな?……地下にある。この施設の入り口は地上だが、それ以下の建物は全て地下に存在してる。話せるのはここまでだ。最後に一つ、話しておくことがある。君たちはだ。ただ、ここで生活するなら働いてもらう。“働かざるもの食うべからず”……だ。君たちが働き、この施設・国に従い、奉仕すると言うのなら、君たちは守られる。それだけは覚えておくように。あとの詳しいことは他の六人の隊員から聞くように。以上だ」

 高田はそれだけを言うと、どこかへと行ってしまった。そして隊員六人は生存者たちの前に現れた。

「我々はガイア部隊である。先ほど隊長より紹介された六名が私たちだ」

 そう言ったのはガイア部隊・副隊長の相良さがらだった。

「今から君たちの班分けをしていく」

「班分け?」

「なんだそれ……」

「一体どういうこと?」

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