Bluetoothは悩みの規格

出張サポート第2段。今回は神楽坂のお客さん。ふと前回の富裕層からの高待遇が頭をよぎる。ワクワクしながら、新人を引き連れてのサポートだ。駅から3分ほどの一戸建て木造。古い、築何年だろうか。20音二条は経過している様子だ。チャイムを鳴らし、ドアを開けようとするが、きしんで開かない。中からドアを引き、白髪の太った方が出てきた。ドアは押して開けるようだった。二人して笑った。何やら山積みの富士山の写真だらけ。それも特大のポスターサイズ。話を聞くと、カメラマンの仕事をしているらしく、富士山や自然の風景を専門で撮影するらしい。画像ソフトの依頼なのか?と思いきや。そうではなく、音楽を聞くためのBluetoothイヤホンの調子が良くないということらしい。調子が良くないというより、断線する。ブツブツ音が切れてまるで使えないという内容だ。製品自体は某有名な音響メーカーの5万も超える高価なものだ。テストその場でしてみるが問題なく聞こえる。断線どころかなかなかのサウンド。問題ないですが、と伝えると。ちょっと来てくれると言われた。2階の部屋に案内される。ベッドがある寝室だ。ここでテストしてみて。1階のパソコンで音楽を、2階でBluetoothで聞くという趣向らしい。なるほど、とは言ってみたが、迷宮入りの匂いがプンプンした。新人はその場でのんきに、富士山の写真に見とれてた。欲しいならあげると言われ、大量の富士山の画像をプリントしたものを紙袋につめていた。正直にお客さんへ伝えた。電波が届きにくいので断線すること。製品に問題はなく、環境の問題であること。意外にも、すぐに納得してくれた。帰る用意をするまもなく、有線イヤホンで音楽を聞けないのかと無理な質問をされた。すると、お客さんは押し入れから凄いものを出してきた。普通のイヤホンに10mの延長ケーブルだ。予め買ってあったらしく、予想内の展開だそうだ。仕方なく、イヤホンと延長ケーブルをつなぐ。お客さんは2階のベッドへ座る。お客さん!いいですか音楽かけますよ。ほーい。パソコンの音楽ソフトかから曲をかけてみる。どうですか?。オー聞こえるよ。そりゃ聞こえるに決まってるよね。上機嫌になったお客さんは、ケーブルを壁にはわして欲しいと言ってきたので、渋々ガムテープで各所固定しながら、寝室まで延ばした。

パソコンを寝室に移動するほうがどう考えても普通なんだが。依頼も解決して帰り際に高級イヤホンが不要になったのであげると言われた。即答でお礼を言い。その場を立ち去った。社へ帰る途中で新人にこれ使いなよと譲った。天にも登るような喜びようではしゃいでた。自分は最低なやつだと心のなかで呟いた。だって、お客さんの耳くそが付着しているのを発見したのは確かだった。絶句、かわいい我が子には時には厳しく、悪魔にもなるさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る