尻拭い

以前、話をした例のオタクくん。彼は動作が不安定、ネットが見れない件になるとすぐに、セキュリティソフトが制御しているということで、片付ける。それだけならまだましだが、今回は更に山火事になった。高齢の男性の問い合わせに、ネットが見れるようにするなら背ソフトが怪しいから、削除するしかないとアドバイスしたらしい。当然、自己責任でやって欲しいと言ったらしいが、高齢者は言われるままだ。サクサクアンンストールしたらしい。その後、コールが再来。たまたま自分が受けた。話を聞くと、何やらお怒りモードだ。削除してもネットは見れない。おまけに、更にPCの動作がおかしく重いらしい。ひどい時は、電源すら入らなくなり画面は真っ暗になったらしい。厄介だ。斜め向こう側では何からオタクくんは楽しそうに、別の問い合わせに受け答えをしている。仕方なく、お詫びをしてまずはもう1度、セキュリティソフトをインストールする案内をした。シリアル番号を入れて製品の有効化をしようとすると、すでに使われているシリアル番号と表示され、先に進めない。最悪の事態だ。客は怒りが爆発して、弁償しろとまで怒鳴りだした。恐らく、ソフトウェアの情報が製品の側のサーバで初期化できないために、有効化されないらしい。そのソフトウェアのサポート窓口へ、電話をして解除してもらうことにした。サポートする側がサポートへ電話するなんて笑い話だ。1時間後に解除してもらい無事解決した。それでもネットはまだ見れない。なぜかヤフーだけは見れる。でもその人は野球の結果を見るサイトと競馬のサイトを見たいらしい。こちらでいくつか調査して再度折り返し、電話することにした。ところが、こちらのテスト用PCでは普通に閲覧できる。おかしい。2時間が経過した頃、電話が来た。待ちきれなかったのか、コールを受ける気にはならなかった。思い切って、チャットでオタクくんへ回す。「君がまいた種なのだから責任とってよ」すると彼は一つ返事で受けた。何やら冷静に会話している様子。他の人の対応を参考にするために、ヒヤリングする機能が付いている。それを今回は使い、こっそり聞くことにした。相手は相当な剣幕で、お前が最初に対応したやつか!という感じで責めてきた。果たして結果はどうなるのか、少し興味を持ちつつそのまま聞いていると、数名も面白半分で聞き出した。

ついにオタクはPCを初期化したほうが早い、そうすれば次の競馬のレースに間に合うとまでアドバイスし始めた。悩む客を煽るかのように、どうします?どうします?お客さんの判断次第ですよ。こんな感じで責めだした。いつの間にか、立場が逆転している様子だ。

結局この人は初期化することにした。恐らく初期化したあとに、再設定の電話が来るのは目に見えている。わずか30分ほどの荒業だった。適当な感じもsるが、素晴らしい度胸だ。その後、思った通り再度電話で設定依頼が来た。ほとんどの人が電話を取ることなく、事務処理をしているふりをしている。この事態を何も知らずに休憩をしていた人が戻ってきた。するとオタクくんが言った。「すみません対応お願いできますか?初期化のあとの再設定なので簡単ですから、10分で終わりますよ。目を疑った。すごすぎる確信犯だ。ふと時計の時刻を見ると、定時10分前だ。いけにえとしか言いよううがない。その後、定時にほとんどの人が席を立ち始めた頃、電話を受けた彼だけは一人席に残って対応していた。額には若干汗が、顔色はやや赤く、方を落としていた。「お先に失礼します」と一言いい、オタクくんは帰っていった。絶句、飛んで火に入る夏の虫、そんな言葉が頭をよぎった1日だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る