ご主人が残したもの

昼のランチを終えて、午後のコールを待つと、可愛らシイ声の女性からコールがあった。何でもパソコンのログインパスワードがわからず、パソコンが開けないのこと。

一番厄介な問い合わせだ。パスワードは絶対にわかるわけない。おまけに、ご自身のものではなく、旦那さんの所有物らしい。旦那さんに直接聞くほうが早くないか伝えると、驚愕の返答が帰ってきた。「主人は先週亡くなったのです」一瞬言葉を失う。数秒の沈黙の後女性が号泣しだした。参った、焦る。ヘッドフォンからも大きく漏れるぐらいの泣き声だ。しかしパスワードなどわかるはずもない。パソコンの中のメールを開き、確認したいことがあるという。これはお手上げだ。マネージャーから折り返し電話することで納得してもらった。ふと考えると、今後こういう問題は頻発するだろう。亡くなった場合に備えて、銀行口座の暗証番号や、パスワードなどはやはり残された人に伝わるようにしないと大変だ。また、パソコンにイヤラシイ画像など保存していたら恥ずかしい。死んでも死にきれないだろう。実に大きな社会問題だ。もやもやした気分でこの日は帰宅した。

翌日、マネージャーから解決したとの報告を受けた。こういう時は経験が物を言う。

パスワードをいくつか試したらしい。

奥さんの名前、旦那さんの誕生日、奥さんの誕生日、電話番号、好きな言葉、そして「究極がアイラブユーを英語で。

結果、正解は奥さんの誕生日だった。

泣ける話だ。

それを試した、マネージャーは凄い。

絶句、大人の経験値。

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