第一章『出会いは唐突』

 11月1日。その日はまだ秋だというのに少し肌寒かったのを覚えている。

 俺こと如月 迅は最寄り駅から自宅までの帰宅経路をいつものように歩いていた。住宅街なのもあってか野良猫が道路の脇に座っているのも日常である。そして今日も例外ではなく、野良猫が鎮座しているので歩きながら眺めていると俺の視線に気づいた野良猫は颯爽と走り去ってしまった。

「いつものパターン・・・・・」

 もう何度目か忘れた展開に落ち込みながら下を向く俺。そのまま道の角を曲がるとそこには異様な光景が広がっていた。

 公園の広場に一人の少女がおり、その少女を中心に沢山の猫集まっている。

「あっ、さっきの猫」

 少女の近くには先程走り去った野良猫もいた。

 そして気づいたら自然と俺も集まっている猫たちと同じように少女のところまで来てしまっていた。

 美しい白髪のセミロングに灰色の瞳が特徴的な少女。服装は白と黒が基調とされた胸にリボンがあるスウィートワンピースである。

 そんな容姿端麗な少女は屈みながら猫を撫でてにこやかな表情をしている。俺はそんな少女をずっと見つめていたら少女も俺の視線に気づいたようで目が合ってしまった。時間としては2秒くらいだろうか。

 そして少女は"あっ"と口にすると猫を抱っこして立ち、俺に猫を差し出して一言。

「君も猫を触りにきたの?」

 そう言い首を傾げる少女。猫にも劣らずの可愛さに俺は押し黙ってしまう。少女がきょとんとしてる中、俺はやっと平然を取り戻して返事をする。

「あ、あぁ」

 コミ障丸出しな返事をしたがこれでも頑張った方である。

「はいっ」

 少女が猫を突き出してくる。それに応えて猫を抱きかかえる。

「ふふ、猫って可愛いよね」

 少女はそう言いながら腕を後ろに回して笑みをこぼす。その姿はさながら天使のようだ。

「あの、あなたは?」

 俺は生まれてこの方ずっとここに住んでいるが彼女のような少女は見たことがない。それ故に尋ねてしまった。

「エレノア」

「エレノア?」

「うん、ボクの名前だよ」

 エレノアは静かにそう言う。外国の人だろうか? それにしては日本語が上手だなと思った。

「ところでキミは?」

「・・・如月 迅です」

「じゃあ、如月くんって呼んでもいい?」

「うっ・・・・・」

 コミ障+女の子の免疫がない俺にとって美少女のエレノアの如月くん呼びは込み上げてくるものがあり、悶えてしまう。

「大丈夫?」

「・・・あぁ、問題ない」

 何とか耐えた俺は平然を装う。しかし、次にエレノアが発する一言は俺の平然の仮面を壊すのに充分な威力があった。

「急にあれなんだけどさ、如月くんにひとつ頼み事があって・・・」

「どうした?」

 恐らく異国の地から来たであろうこの少女の頼みを無下にはしないと俺は心の中で誓う。たとえどんな事を頼まれてもそれに応えてみせよう。さぁ、一体何を頼まれるのだろうか。

「家に泊めてくれない?」

「まかせてくれ・・・・・って・・・はいっ!?」

 俺は思考が停止し、抱えていた猫を落としてしまった。

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