第48話 フィオナVSドウマン
残り魔力量
フィオナ
10万
ドウマン
14万9000
「……勝手に鎖から流れやがって。めんどうだな」
ドウマンはそう言って気絶して、横たわっているロゼとリックを指差した。
「こいつらみたいになりたくなければ、お前もお縄につけ。どいつもこいつも、そんな魔力量じゃ俺には勝てんぞ」
ドウマンは嘲笑った。
確かに、あたしは魔力量はドウマンに勝てないかもしれない。でも、ここまで来たんだ。
フィオナは目の前で矢に貫かれた父、母、兄の姿を思い出した。ドウマンは嘘をついていない。完全に同じ声、同じ匂いだ。あの時に誓った家族の仇が目の前にいるのに、たった魔力量の差で逃げるはずがない。
「あんたを殺す為に、あたしはブースター軍団でクリスタル王国の偵察を志願してきた。そして、みんなに修行をつけてもらった…。
生まれ持った魔力量の差ではなく、本当の強さを手に入れる為に……。獣族体術
既に肉体変化をして、四足歩行になっていた、フィオナは大きく口を開けた。
「ニャーーーー」
音波がドウマンまで伝わる。
「……!…動けない。体を痺れさせる魔術か」
今のうちにと、フィオナは鋭い爪を立てて、真っ直ぐに突き進んできた。
「獣族体術
動けないドウマンの首を切り落とす。イメージは出来ていた。フィオナは手を伸ばした。だが、爪がドウマンの皮膚に触れ、血が溢れたところで、皮を剥がれた家族と重なった。全身が震えて立ち止まってしまう。
「なんだ……人も殺したことがなかったのか。やっぱりガキだな」
ドウマンはフィオナの首の皮膚で止まっている腕を掴んだ。
「やめて……あたしに触るな。化け物が。獣族体術
フィオナは掴まれていない、もう一方の腕でドウマン目掛けて拳を塗り下ろした。
だが、それよりも早く、ドウマンは反応した。掴んだ腕をぶん回して、フィオナを持ち上げムチを振り下ろすかのように地面に叩きつける。
「グワァ」
フィオナは痛みを抑えてうずくまった。確かに、自分は屈強なブースター軍団に鍛えられたとはいえ実際に人間と戦ったのは今回が初めてだ。目の前に憎きドウマンがいるというのにためらいを見せてしまった自分を殴りたい。
「チッ、大事なレア物を汚しちまったじゃねぇか。そうだな……もういい加減くたばってくんないかな。
ドウマンが繰り出した、地面から生えるように出てくる雷魔術。一度、鎖に吊るされながらロゼが受ける攻撃の形状を見ていたフィオナは、咄嗟の判断で後ろに避けた。
フィオナはそのまま魔力を高めた。心をコントロールしろ。情けはかけるな。そう自分に言い聞かせ、魔術を発動した。
「
フィオナの前に一つの魔方陣が現れた。そこから、風が吹き荒れる。やがて形状化したた一匹の猫となって「ニャー」と鳴いた。
「最近のガキは妙な魔術を使うのが流行りなのか。レア物だが、少しふやけるのは仕方ないか……
ドウマンの前にも魔方陣が現れる。魔方陣からベルトコンベアが設置されている室内全てを覆い尽くすような水が渦となって溢れて出てきた。
フィオナは巨大な渦に臆することなく、片手を上げた。
風と水の魔術がぶつかり合う。同じ魔力量で弱点性質が無い為、混じり合ったかと思ったら、弾け、また混じり合う。それを複数回繰り返しながら、周囲に水と風が強く吹く。
フィオナは、猫の獣族の力を使って天井ギリギリにまで跳躍していた。ここからなら憎きドウマンを見下ろせる。
フィオナは深呼吸をした。必ず一撃で仕留める。天井を後ろ足2本で思いっきり蹴った。
「獣族体術
そこから何度か体を回転させ、勢いをつけて、ドウマンを狙った。
感知魔術でフィオナの動きに気づいたドウマンは天井を見上げた。
「クリスタル王国の未来のためにお前の死は必要だと言っただろ。くたばれ。
ドウマンの前に現れた魔方陣から雷のレーザービームが突き抜けるようにフィオナを襲った。
だが、フィオナの天井を蹴り上げて勢いに乗った
ドウマンは目を見開いた。
−思い出すのはあの時の記憶だ。サーロンの国王就任式となった日、国民は皆歓喜の声を上げていた。
そんな中、ドウマンはサーロンの部屋に呼ばれた。
「サーロン様、おめでとうございます。これで立派な王ですね」
「ああ、いよいよだ……わしには先代国王のような魔力はない。だからこそ、どんな手を使ってでもクリスタル王国と国民を守る。その為に時に汚れ仕事を受けてくれないか、ドウマン?」
「構いませんよ。私にできることならなんでもしましょう」
その約束以来、シルバーエンジェルに資金提供して、違法な金でクリスタル王国を影で支えてきた。
俺は今、汚れ仕事を受けた為に倒された。サーロンは倒れて行くほんの束の間考えた。力がなかったサーロン国王様から頼まれた役割を全うしたのだ。悔いはない……。
フィオナは倒れて行くドウマンをじっと見つめていた。
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