第39話
俺は順調に地面の中を進んでいた。奥まで進むとやがて鉄らしき壁にに当たった。土とは質が明らかに違う。地図で見ると、どうやらそこが工場の地下らしい。
「ここから先に行く前に少し、感知魔術を使う」
俺はそう言って目を閉じた。集中して壁の中の魔力を探った。すると、今俺がいるところから少し上に、弱い魔力を複数と、一人の強い魔力を感じた。弱い魔力の方は今にも消えそうな程弱い。強い魔力は魔力量25万。大物の可能性が高い。
更に上の階に行くと巨大な魔力量を持つものが高速で動いていた。それもこちら側に向かってくる。俺はそこで感知魔術を止めようと考えた。だがその前に俺の体に違和感を感じた。まるで他人の魔力が自分の体に入り込んでくるかのような感覚だ。俺はその感覚を体の中の魔力量で振りほどいた。
「なんだ…今のは」
「どうされましたか?」
ジルが声をかけた。
「体の中に他人の魔力が流れ込んで来る感覚があった。これは一体…」
「なるほど、感知魔術の逆探知ですね」
「逆探知? なら俺達がここにいることもバレたのか?」
「その可能性は有ります」
「なら早く中に入ろう。コラン」
「へっ、やっと俺の出番か。
コランは目の前にある工場の壁に手をやった。すると壁の一部が凹んだ。それは何度も続き、やがて完全に穴が空いて人1人が中に入れる大きさになる。
「行けるぜ。ここからなら」
「おお、さすがコラン副局長」
リスターは感心していた。
「これぐらい当たりまえよ」
俺を先頭にして一列になった。そして、薄暗いクリスタル工場の地下最下層の場所に入る。俺は感知魔術をまだ続けていた。明らかにこちらに向かって近づいてくる魔力が二つある。だが、工場内にトラップが仕掛けられている可能性もある為、慎重に進まざるを得なかった。
「こんなでかい鎖、一体何に使うんだ?」
俺達が入った場所は倉庫の様な所だった。どうやら、上で使う為の道具が収容されているのだろう。分かるのはそれぐらいだ。
倉庫を抜けると何ない広い空間に出た。それは俺が前世で最も苦手な場所の一つである体育館にそっくりだった。体育で顔面にボール投げつけられ、かといって泣いたら更にいじめが加速するから泣かない。そんな辛い思い出が蘇って来てしまう。
そのせいで俺は攻撃が来ていたのに反応が遅れた。背後から炎が迫り来る。熱い。物理的な熱さも精神的な辛さも結局は同じなのかもしれない。そんな事を思いながら俺は飛び退いた。
「あ、ロゼ君、水魔術で祓うから少し辛して。
リックが俺の背中についた炎を消してくれた。だが、お陰で背中の服が全て焼けて無くなった。ぽっかりと背中が見えるようになってしまった。
「久しぶりだねロゼ君」
聞いたことのある声だった。確かシルバーエンジェルのセシル。俺を地下牢に誘拐した本人だ。そしてもう1人サングラスをかけた男が隣に居た。以前あった時には居なかった顔だ。名前は分からなかったが、魔力量30万とかなりの実力が伺えた。
「こ、こいつは」
「ああ、リック君も居たのか。クリスタル城での一件以来だね。あの時はちびらずに帰れたかな?」
セシルは手を振ってリックに答えた。
「おい、セシル。フィオナをさらったのはお前か? それからクリスタル王国はどうなってるんだ。ドウマンは生きてるんだろ。何故俺がドウマンを殺したことになってるんだ」
「質問が多いな。シルバーエンジェルはサーロン国王の計画に沿って動いているだけだ。我々に質問は無意味。ロゼ君は単に邪魔だった。だからサーロン国王により追放、そして抹殺の指令が下った。それだけだ」
「クソ、何を言っても無駄か…」
「ロゼ様、ここは二手に別れましょう。私達がこの2人を相手にします。ロゼ様はその隙にフィオナを探して脱出して下さい」
ジルはそう言って前に進んだ。
「俺だけ逃げろっていうのか?」
「いえ、まだドウマンが何処かにいます。この2人と戦っていては消耗するだけかと」
ジルは俺の方に目配せした。
「何をこそこそとしゃべっているのですか。ここから誰一人として生きて帰ることは出来ませんよ。 結界魔術
セシルの周囲に魔法陣が発生した。そこから闇のエネルギーが発せられた。その力は瞬く間に空間を覆う。俺は身体が重くなるのを感じた。
「これは黒魔術を応用したものです。この結界にいる間、君たちの魔力量は半分になる。そして破る方法は一つ。この私を殺す事だけです。さぁ始めましょう」
セシルは歓迎するかのように手を広げた。
「な、黒魔術ですと?」
ジルは驚いて目を見開いた。コランとリスターも額に汗をかいている。黒魔術が何かを知らないのは俺と…リックだけか。まぁ、なんでもいい。こいつらは立ち道許さない。俺の白魔術で必ず倒してやる。
残り魔力量
ロゼ 49万
リック 19万5千
コラン 5万
リスター 4万
ジル 2万5千
セシル 40万
ドラン 30万
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