第38話
「う〜ん。いい男の攻撃は美味しいわね」
手入れが行き届いた金髪美女、ガブリエラの魔力量が5万程の増大した。
「相変わらずイケメンには目がないのねガブリエラ。でもここは戦場よ。色目使ってたら死ぬわよ。特にあいつは強いし」
隣にいた、長い青髪を振り乱したドロシーが言った。
「今回君たちがあの者どもに何をしようがお咎めなしにするとサーロン国王様はおっしゃっていた。だが出来る獣族はなるべく傷つけたくない者だ。価値が下がる。そうだろ、アント」
さらにドロシーの横にいた筋肉質の大男がそう言った。
「チーク。確かにあんたの言う通りだ。
アントはチークに嫌みたらしくそう言った。
「全く、
最後にウェルトがそう言って魔力を高めると、ブースター軍団の大群に駆け出した。
「まずは動きを止めてやる。暗殺魔術
ウェルトの周りに沢山の魔法陣が発生した。その一つ一つが雷を纏っている。やがてそれは放出された。ブースター軍団全体を覆うほどの雷が襲う。
「お前らぁ、やるぞ。
それと同時に3千の獣族は一斉に巨大化した。筋肉を極限まで覚醒させ本来の獣の力を解き放つ。3千もの獣族の巨大化した際の衝撃波が風となってウェルトの雷を取っ払った。
「ほう、これが本気という事ですか…。良いですねー」
ウェルトはニヤリと笑う。その様子何見えたザッカリーは指示した。
「シルバーエンジェルは戦力を分散させて戦え。残りの部隊で正面突破だ」
「そうはさせるか。行け我が従業員ども」
アントの声と共に工場の正面扉が開いた。中から武器を持ったクリスタル工場の従業員が大量に出てきた。
「クソ、やはり準備していたか…」
「そうだよ、サウザー。君はこの中で一番厄介だ。だから私が相手になってやるよ」
ウェルトがそう言ってこちらを向いて来た。
「残り魔力量25万。足止めのつもりか…」
「いや、殺すつもりです。私の暗殺魔術でね」
ドディはサウザーとウェルトが対峙する様子を見ていた。頼んだぞ、サウザー。俺はそのあいだに工場の従業員どもの指揮官を倒す。
ドディはライオンの力を駆使したスピードとパワーで次々と従業員を倒していった。そしてアントとチークの前に立つ。
「ふん、倒せると思っているのか、俺達を」
「その為に来た」
「獣族の頭か。こいつは価値がありそうだ」
「傷つけるなよアント。大切な皮だ」
ドディはその話に反応した。
「皮? まさかお前らのその服……」
「そうだ。この服は獣族の皮で出来ている。かなりの値打ちものだったがアントと仲良くやってたお陰で、安くしてもらったのさ。どうだ、似合っているかな?」
「お前に似合うように特別なオーダーをしたのだ。似合う」
「おい‼︎」
ドディは大きな声を出して話を遮った。
「それ以上喋るな」
ドディは突進した。
噛み砕いてやる。
ライオンの牙を大きく突き出した。
「
ドディの鋭い牙はアントの硬質化した体には刺さらなかった。
「クソ…」
「二人いる事を忘れるなよ。
ドディの横から水の塊が襲って来た。ドディはかわしきれず、水に飛ばされた。ある程度吹っ飛んだ所で何者かに背中を支えられ止まった。見上げると大きな象がいた。
「ダーロか。助かった」
「総大将、共に戦いましょう」
ダーロは2速歩行になってドディを起こした。
ドナは乱戦の中ドロシーとガブリエラが共に行動してブースター軍団を次々と倒している姿を目撃した。2人合わせて魔力量45万。ドナは作戦通り魔石でザッカリーに連絡した。
「シルバーエンジェル二人が共に行動しています。私の部隊が次々にやられています。至急援軍お願いします」
「良し、今手が空いてる
ザッカリーはそういうと2速歩行になり、トラの姿で疾走した。次々と攻撃を繰り出してくる工場の従業員の間をスルスルと抜けて行く。まさに瞬足だった。
ガブリエラは何か物凄い勢いで向かってくる敵を感知した。それは人間が出しうる気配とは違う。ドロシーを見たが、戦いに必死で気づいてる様子は無い。
「ドロシー、数人敵が来るよ。魔術出して」
「えっ?」
ドロシーがガブリエラの言葉を理解するのには少し遅かった。
「
突然目の前に炎の塊が現れた。それはトラの姿をしている。そして速い。ドロシーとガブリエラは体が反応して逃げ切る前に炎の塊を受けてしまった。
「あっつい。複合魔術
ドロシーのが手をかざすと魔法陣が出現し、その中から水の斧が現れた。それを手に取り一太刀払うと炎の塊は真っ二つになる。
ドロシーとガブリエラの周り囲むように炎が残って舞っていた。それはドロシーとガブリエラの間にもあり、二人は分断される格好になった。
「あたし、動物の趣味は無いんですけど」
「ガブリエラ、そっちは頼むよ」
ドロシーの前にはウサギのドナ、羊のレイ、蜂のメリッサ。
ガブリエラの前にはトラのザッカリー、犬のポンチがいる。
それぞれ敵対する格好になった。ザッカリーは無事に分断できたことにひとまず安堵した。
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