第37話
クリスタル王国の城下町では壊された建物の復旧作業が行われていた。ベルギアンとロゼ一派の派手な戦闘により民家や商屋が吹き飛んだのだ。魔軍局はすぐにロゼ一派を追っていったが逃げ足が早く捕まえることは無かった。
アランはそんなクリスタル王国の城下町を見廻っていた。リックがサウザー達にロゼが攫われた事を報告してきた時、敢えてクリスタル王国に残った。
本当は一緒にロゼを助けたかったが、ベルギアンとの戦いの最後に、白い光を見たことからロゼが助かったことを知った。ならば自分がやることはクリスタル王国に帰ってきた時に国民に理解してもらう事だ。シルバーエンジェルのせいでドウマンを殺したのはロゼという事になっている。間違った認知を正す方法は何かをずっと考えながら過ごしていた。
サーロン国王はロゼが居なくなってから明らかに態度を変えた。ティムの事を可愛がり以前のロゼと同じようき金をかけて英才教育を行い始めたのだ。
ティムは生まれつき魔力量5万と王になるには少ない。サーロンは自分の言う事を聞いてくれる人間だけが欲しいだけだ。外交局の部下から聞いた話では獣族の移住賛成派がクリスタル城を行き来しているらしい。アランは今度見かけた時に状況を探ろうと思っていた。
「アラン、城内にロゼ様討伐の動きがある。声がかかるとすれば表上は魔軍局。裏はシルバーエンジェルだろう。サウザー達が既にロゼと合流してる。俺はタイミングを見てシルバーエンジェルを消しにいく。何かあったら頼む」
通信用の赤い魔石を通じてハイゼンの声が聞こえてきた。
「分かった。だがシルバーエンジェルは強いぞ」
「俺を舐めるなよ。お前も薄々俺の強さに気づいているだろ」
「ああ………だが一応心配はしておく」
「それは嬉しい事だ」
ハイゼンはそう言って通信を切った。アランは再び修復中の住宅街に目をやった。クリスタル王国の国民が忙しそうに動いている。もうすぐ大きな戦いが始まる予感がする。アランは気を引き締めた。
生い茂る森の中を進むのも慣れてきた。俺はリック、サウザー、ジル、コラン、リスターとブースター軍団約3千でクリスタル工場に向かっていた。俺はその軍団の一番後方から様子を見ていた。緊張感が伝わってくる。
やがて目的地に着いた。
森の中から見える工場は不気味なほど異様な殺気が漂っていた。
「あそこにフィオナが…」
俺は沢山のブースター軍団の隙間から見える工場に目をやる。無数の煙突からは黒い煙が立ち上っていた。
「では、作戦を実行する。サウザーと我々ブースター軍団は囮として工場正面から暴れる。ロゼ達は土魔術地面の中を掘り進めて工場に潜入だな」
ザッカリーがそう言いながら俺の元にやって来た。
「ああ、俺はいつでも行けるがタイミングはいつだ?」
「それはロゼの元で決めていいぞ。ブースター軍団はそれに合わせる」
「ならもう行こう」
俺は地面に向かって手を翳した。
「
何も無い地面に突然凹んだ。それは人が五人入るには丁度良い大きさの穴だった。ジル、リック、コラン、リスター、俺はその穴の中に飛び込んだ。
「悪いな先に言ってる。お前らも暴れてこいよ」
「ああ、任せとけロゼ。お前らこそフィオナを絶対に助けてくれよ」
「当たり前だ」
俺は上に見えるザッカリーとの間に土の扉を被せた。中は魔術の影響で明るい。一歩踏み出す事に土の空間が移動して動く。
「ロゼ様、これが工場までのルートです。恐らくここらに工場の地下があります。ここから侵入しましょう」
ジルが予め仕入れてくれた地図を見せてくれた。そこには活動内容が不明と描かれた地下が広がっている。俺はフィオナがそこに囚われているようと感じていた。
一方、ロゼ達を見送ったザッカリーはドディの魔石に連絡した。直ぐに「副大将のお前が全軍を指揮しろ。俺は最前線で突撃する」と返ってきた。
ザッカリーは更に3千の各小隊を指揮する者たちに魔石で連絡した。
「俺が全軍の指揮を任された。ドディ殿は前線に出るとのことだ。ダーロ、レイ、メリッサ、ポンチ、ドナ。お前ら
「了解」
ドディがブースター軍団の最前線に着いたと報告を受けた。まだこちら側の気配は悟られていないのか工場は静まり返っている。
「皆んな、ここからは本番だ。ブースター軍団の誇りを欠けて戦うぞ。力の限り叫んで前に進め。敵が来たら薙ぎ倒せ。いくぞー」
ザッカリーが全軍に聞こえる声で叫んだ。
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオー
大地を揺るがす程の声が聞こる。サウザーは最前線のドディの隣にいた。本当に今までブースター軍団3千の気配に気づいていなかったのか疑問ではあった。罠の可能性もある。だから最初に仕掛けると決めていた。
「
サウザーは三尖刀を払った。炎、雷、風が混じり合い工場の扉を突き破ろうと迫った。
だがそれは手前で突然消えた。煙が上がって前は見えないが膨大な魔力量だけ感じる。
「やはり来ていたか、シルバーエンジェル」
サウザーは三尖刀を構えた。
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