第35話
ドナがベルギアンを連れて拠点に向かった後、俺とサウザーとリックの三人でリンゴ村に行くことになった。リンゴ村は城下町と比べると落ち着いている小さな場所だった。
到着するとすぐに村の中を探検した。すると見るからに大きな一つだけ、ずば抜けて大きな屋敷が立っていた。周囲にいた村人に聞くとここがドウマンの家らしい。高級そうなその家に俺たちは躊躇なく踏み込んだ。ドウマンがいるのなら逃しはしない。俺はその気持ちでいっぱいだった。
扉を開けると手前は庭になっていた。入ると庭の手入れをしている男が二人居る。男達は俺が庭に入ってきた事を確認して手を止めた。
「ここはドウマン様のお屋敷だ。なんのようだ、お前ら」
「我々はそのドウマンを探している。何処に居るのか知らないか?」
サウザーが代表してそう言った。
「わざわざ来てもらった所で悪いがここには居ないぞ。今出かけている所でな。数日で帰って来るつもりらしいが」
「出掛けてるって何処に?」
「それは余所者には言えんな」
「待てよ、このガキ。例のサーロン様の息子に似てないか?」
今まで喋っていなかった男の方が言った。
「ほう、こいつがそうか。ならドウマン様への手土産にちょうどいいな。やろうぜ」
「ああ」
二人の男は俺を捕らえようと襲ってきた。だが、次の瞬間には二人とも地面にうつ伏せになっていた。
「はぁはぁ…クソ、こいつら強い」
「良し、では改めてドウマンは何処に居るか答えて貰おうか。言わないと命は補償出来ねぇな」
サウザーが三尖刀を振り上げて言った。
「ド、ドウマン様なら自身が所有しているクリスタル王国で一番の工場であるクリスタル工場に向かって行きました」
「クリスタル工場か…なるほどな」
サウザーは納得したように頷いた。
「お前達のような国賊にドウマン様がやられるはずがない。ドウマン様こそがこの国を動かしている中心人物なのだからな」
サウザーに負けてうつ伏せになっている男はそう言った。
「ほう、お前らも俺たちが国賊に見えるのか…サーロンの洗脳は随分と行き届いているのだな」
「洗脳だと? ふっ…俺たちはここにロゼが来たら殺す様にドウマン様に言われていたのさ。ドウマン様の言うことを聞くだけで大金が貰える。貧しかった
「
俺はそう言った。
「ロゼよ、だが何処に行けば良いのだ。俺達は
「なら獣族の拠点まで案内してやる。名前は?」
「俺がガレ、こっちの寡黙なのがミルーだ」
「良し、行こうガレ、ミルー。白魔術
俺はクリスタル工場を攻めるため一度体制を立て直す事にした。次は恐らく大きな戦いになるだろう。俺は少し緊張していた。
クリスタル王国の西には国一番の規模の生産性を誇る工場がある。その名はクリスタル工場。その工場はアントを工場長として長年運用していた。
「アントよ、捕らえた獣族は大人しくなったか?」
「ええ、皮膚に傷が付かないよう両手足を縛って、魔術が使えないように口にはテープを巻いています」
ドウマンは工場長のアントと共に地下に行く階段を降りていった。
「今回の獣族は久しぶりに品が良い。しかも子供だ。これは高く着きますよ。ドウマン様」
「それは楽しみだな」
ドウマンは扉を開けた。そこには大きなベルトコンベアがあり、その天井から伸びる鎖に繋がれた獣族や魔獣の死体がある。精密機械に通されて加工されていく有様が広がっていた。
奥には檻が見える。そこには捕らえた獣族や魔獣がベルトコンベアに乗せられるのを待っていた。そこから聞こえてくる怒号や悲鳴を掻き消すため、地下のあらゆる所に音楽を鳴らす青い青色の魔石が設置されていた。奇妙な音楽、そして叫び声が入り混じる中をドウマンとアントは進んで行った。
「これが昨日捕らえた子供の獣族です。さっきまで泣き叫んでいたのですが今は静かになりましたよ」
アントはそう言って鍵をポケットから取り出した。
「この子を外に出す時の鍵です。これをドウマン様に渡そうと思います。後は煮るなり焼くなり好きなようにしてください」
ドウマンは鍵をアントから受け取った。
「良し、俺はここに残る。アントはシルバーエンジェルのセシルと今後の策を考えてくれ」
「勿論そのつもりですよ」
ドウマンはフィオナをじっと観察した。この肌の色と質感。まだこの価値の獣族が生き残っていたとは。じっくりと調理していこうドウマンは決めた。
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