第33話 ベルギアンvsサウザー&リック
リックはベルギアンの魔力量にびびっていた。今までサウザーより高い魔力量を持つ人間はロゼ以外見たことが無い。完全に規格外だった。
「お前らはここで殺す。
ベルギアンの体の前に魔法陣が現れた。魔法陣の周囲から風が吹いて来る。その風はやがて渦になって大きくなる。ベルギアンが手を振るとその風はとんでもない威力でリックとサウザーを襲った。
サウザーは三尖刀を一振りした。
「
刃から放たれた炎、雷、風の魔術が巨大な風に向かっていく。3つの魔力性質が混ざり合って一つの巨大な魔術となった。
二つの魔術がぶつかった為、周囲に衝撃波ができた。だがその衝撃波はベルギアンの手前で風圧に消し去られた。サウザーも三尖刀で衝撃波を振り払った。
「3つの魔力性質を合わさるお得意の魔術か…、確かにいい威力だ。だが、お前はもう裁く側ではなく、裁かれる側になったのだ」
ベルギアンはそういうと、腰に付いていた剣を抜いた。
サウザーはその剣の持ち方の隙の無さを見てベルギアンの実力が分かった。
「リック、水魔術で援護を頼む。こいつは元魔軍局に所属していたベルギアンだ。当時は世界最強の風魔術の使い手で
「はい」
屋上は相変わらず風変わらない吹いていた。先ほどの衝撃波のせいで何人かの国民が屋上で誰かが戦っていると気づいて屋上を見上げていた。このままだと誰かが魔軍局に通報することになるだろう。その時に逃げ切れるかどうか。いずれにせよ時間は無い。短期決着が一番良い。
「
サウザーは三尖刀を持って走った。
「リック」
「はい、
サウザーの周囲に水の塊が大量に生まれた。それはサウザーを守るように周囲に浮いている。
サウザーは走ってベルギアンに切り付けた。だが刃は届かずベルギアンの周囲にある風圧に止められる。それは前からではなく横から後ろから、さらに上下からも襲って来た。サウザーは風圧で動きを封じられた。
「クソ、体が動かない」
だが水の塊は違った。風圧で押された瞬間に分散し、水蒸気になった。
「なんだ?」
ベルギアンが理解できないでいると、水蒸気はベルギアンの体を表面から覆い、やがて全体を水で包んだ。
「オバボボボォ…」
水の塊はベルギアンを掴んで離さない。ベルギアンは地上で水に溺れる形となった。リックはベルギアンの周囲に纏う風圧を通り抜けるほどの小さな空気中を漂う水。つまり水蒸気を使ったのだ。
「よくやったぞ、リック。後は俺がやる」
-水魔術と最も相性の良い雷魔術。それの最大攻撃で仕留める。
「
サウザーの三尖刀に強力な電気が流れた。その三尖刀をサウザーは振り上げては振り下ろした。すると一回振り下ろすごとに電撃が衝撃波となってベルギアンを襲った。それを何度も繰り返した。ベルギアンが捕らえられた水の中でもがいている所に次々と電撃が入って来た。一度電撃が入るごとに水の中で感電し、ベルギアンの命を脅かした。
やがて全ての電撃がベルギアンに命中した。リックは水の塊を解いた。静かにベルギアンは倒れた。
「やりましたね、サウザーさん」
リックは嬉しそうにこちらを向いた。
サウザーは純粋にリックの才能に驚いていた。水魔術の水蒸気だけを放出魔術として形を変形して操るとは…。センスだけならロゼ様以上かもしれない。
「待てよ…まだ終わってねぇぞ…」
倒れていたベルギアンが起き上がって来た。
「今のを耐えるのか…なんて身体をしてるんだ」
サウザーは驚いた。ベルギアンのびしょびしょに濡れた鎧が風に吹かれて乾いていく。
「今のは少し痛かったな…。これは仕返しだ。ここでくたばれ。
ベルギアンの周囲に再び風が吹き荒れた。今度はその風の方向が奇妙に曲がり始め、次第に上に上がっていった。天まで届くその風は空を覆い尽くすようなドラゴンの形となった。
-魔力量30万の可視化できるドラゴンの風…。これはまずい。
「リック、一旦この場から離れるぞ。これは俺でも受けきれない」
「はい」
サウザーとリックはそれぞれ移動用の魔術を使ってその場を離れた。ベルギアンはその事に気づいても冷静だった。
「ふん、この魔術が発動時点で逃げられものはいない。お前らは確実に死ぬ。終わりだ」
クリスタル王国の国民達も巨大な風のドラゴンが突然現れた事に気づいた。多くの人がその場に留まる事をやめて逃げ惑う。
だが、ベルギアンはその人々の中でも感知魔術で正確にサウザーとリックの位置を把握していた。
「くらえ国賊ども」
ベルギアンは天に向けて両手を掲げた。風のドラゴンは生きているかのような動きをする。そのままベルギアンは両手を下ろす。するとその動きに合わせてドラゴンは地上に急降下していった。
サウザーとリックはクリスタル王国の城下町を逃げていた。その中を明らかに自分達に向かって来るドラゴンに冷や汗を感じた。
-ベルギアンの感知魔術と放出魔術がここまでとは。
サウザーは自分が死ぬ未来が見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます