第32話

 俺とフィオナとドナはくじ引きを引いた。順番は最初にドナ、次に俺、そして最後にフィオナになった。

「では最初の方は、こちらにお入り下さい」

 ドナは薄暗い廊下をおばあちゃんの後ろについて歩いた。廊下の横には古そうなドアが並んでいた。一部屋一部屋が占い用の部屋になっているのか、或いはこのおばあちゃんの自室なのかは分からない。だが、少し不気味なオーラを醸していた。


「こちらじゃ」

 案内されたのは一番奥の部屋だった。

「では、お困りのことを話してちょうだい」

  椅子に座るや否やおばあちゃんがそう言った。そこから先は今までと変わらないやりとりが続いた。だが何故か、何者かに見られている様な気配を感じた。それとなく感知魔術で探ってみたが魔力は感じ無い。気のせいだと思ってそこでやめた。


 しばらくするとドナが帰ってきた。次は俺の番だった。ドナとすれ違う時に言われた。「何者かの気配がする。気をつけて」

 俺はおばあちゃんに気づかれない様にドナの言葉には反応せず通り過ぎた。薄暗い廊下には確かに奇妙な気配を感じた。だが、感知魔術じゃ何も無い。ドナはドウマンの事を気にしていたとおばあちゃんは言った。恐らく既にドナが解答を引き出しているだろう。俺は適当に最近の悩みをでっち上げて、話を切り上げた。


 最後はフィオナの番だった。俺はフィオナを待つ間、暇だったのでドナと会話した。

「で、ドウマンのことで新しい情報は手に入れたのか?」

「いえ、結局はあのおばあちゃんもロゼが殺したこと以外知らなかったわ」

「うーん、そうか。なんか知ってる気配がしたんだけどなぁ」

「気配といえばこの家、何者が監視してる様な感じがしなかった?」

「うん、でも感知魔術には反応が無かった。気のせいだろ」

「だといいんだけど」

 そうこう話している内にかなりの時間が過ぎた。だが、フィオナもおばあちゃんも戻って来る気配が無い。

「少し遅いな」

「うん、何かあったのかしら……」

 ドナが心配そうに返して来た。

 俺は再び感知魔術を使った。だが、店の方には人ひとり感じない。

「どういうことだ。中に入ろう」


 俺とドナは走って店の中の廊下の奥に行った。扉に手を掛けて思いっきり開けた。

「フィオナ!」

 中には誰もいなかった。フィオナもおばあちゃんも何処かに消えてしまったのだ。

「しまった、クソ目を離した隙に……」

 俺は悔しかった。やられた。

「でも、私の感知魔術には何も写らなかった」

「俺は一度暗唱なしでいきなり魔術を発動できる奴に会ったことがある。恐らく魔力を何かでコントロールしているんだ。シルバーエンジェルの仕業かもしれない。ここは…」

 俺が次の言葉を話す前に、背後に殺気を感じた。振り返ると黒髪のアフロヘアーの男が居た。


「ヘイ、ロゼ君。地下に軟禁したはずなのになんでいるのかな?」

「クソ、白魔術 白剣はくけん」 魔力量 10万

-何故だ。感知魔術では反応が無かったぞ。

「おっと、ここで魔力をぶっ放しちゃうと国民の皆んなに気付かれるぜ。そうなったらロゼが殺したと思い込んでる国民に火がつく。無事にここから出れないぜ」

「なら俺がお前を倒して説明するまでだ」

「まぁ熱くなるなよ。最初に行っておくがフィオナはもうこの辺りには居ないぜ。何故かって? 俺はこの世の気配を操れる。ロゼあんたみたいな魔力量の人間を一人でやろうとは思わんさ。だから人質を取らしてもらう。空間魔術 風透逆リバーフロア

 アフロの男はそういいなから徐々に透けていった。話終わると既に完全に透明になった。いや、透明になったのは姿だけでは無かった。魔力量も消えた。完全にこの世から消えたのだ。

「一体どういう能力なんだ…、フィオナはどこに?」

「ここでじっと考えていても仕方がないわ。とりあえず、サウザー達と合流した方がいいんじゃない?」

 ドナが少し声を大きくして俺にアドバイスをして来た。俺はハッと我にかえり、通信用の赤い色の魔石を手に取った。だが驚いたことに、そこから爆発音が聞こえて来た。


 リックが魔石を取り出した瞬間、大きな風が来た。リックは魔石を地面に落として、自身も屋上の端っこまで吹っ飛んだ。リックとサウザーは着ていたフードが取れた。

「リック、大丈夫か?」

 サウザーが直ぐに近くまで来て、リックを起こした。

「サウザーさん、ありがとう」

 リックは立ち上がって前を向いた。フードを被った大男がこちらを睨んでいた。シルバーエンジェルだ。ロゼからの事前情報ではベルギアンと言われているらしい。


「サウザー魔軍局長、いや今は元か。裏切りものがクリスタル王国になんの様だ」

 ベルギアンは語尾を強めて言った。

「貴様、何故俺達がここにいると分かった?」

 サウザーはベルギアンの質問には答えず返した。

「ふん、俺の魔術を舐めるなよ。サウザー、お前は表上はクリスタル王国最強と言われているが、それは嘘だ。本当の強者とは、国民を影で支えて平和を守る。お前の様な害悪を倒す為にな」

 ベルギアンは魔力を解放した。魔力の圧でフードが破れた。

「ほう、魔力量60万か…。厄介だな」

 サウザーは三尖刀を構えた。


 ベルギアン 魔力量 60万

 サウザー  魔力量 50万

 リック   魔力量 40万


 

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