第16話
魔力量15万の複合魔術か。総合魔力量30万で俺と同じ威力の物を出すとは。普通は魔力量と放出魔術の魔力量出力は比例している。魔力量がギリギリの魔術を出すほど体への負担が多くなり、戦闘に不利になる。
ウェルトの周りには大量の銀の刃が浮かんでいた。
「この銀の刃は指定した対象に当たるまで相手を追尾する。残念ながら私のこの暗殺術で生き残った人は一人もいない。ロゼ、お前はここで終わりだ。死体は片付けといてやる」
ウェルトが腕を振ると銀の刃は渦となって光輝く巨大なロゼを迎え撃つ。
「させるかよ」
俺の動きと同化して光輝く巨大なロゼも動く。巨大なロゼの手で銀の刃を掴んだ。そのまま握りつぶす。
「チッ…だがまだだ」
残りの銀の刃は巨大なロゼを避けて、後ろにいるロゼ本体を狙って来ていた。
「やはり経験が足りんな。白魔術も所詮は紛い物。俺の勝ちだ」
銀の刃物は確実に俺を貫こうとする。だが…
「放出魔術オフ。纏魔術オン」
輝く巨大なロゼが消えた。次の瞬間には俺自身が光輝く本物のロゼになる。
「なんだと、あり得ん」
ウェルトは驚いた顔をして、一瞬思考停止した。
「放出魔術オン。白魔術
6つの腕が生えて来た。それぞれの腕が圧倒的な打撃量で銀の刃を殴り飛ばし砕く。
さらにその腕は後方にいたウェルトをも襲った。衝撃で橋にヒビが入る。橋を支えていた柱が崩れ始めた。
やがて煙と水飛沫でなにも見えなくなった。白魔術の拳は全てを打ち砕いた。俺は水魔術で川の上に立っていた。あたりには橋であったものの残骸が浮かんでいる。
やられて川に浮かんでいるウェルトを見つめた。
「はぁはぁ……随分と時間がかかってしまったな。魔力もかなり使った。ここからはさらに急がないと」
俺は川に手を翳した。
「
足が水面から離れた。
ここからは空中を移動してリックを見つけると共に事態を把握する。
改めて空中からゴミ山を見ると意外と広大だった。一体クリスタル王国の何処からここまでの量のゴミが捨てられるのか俺は疑問だ。
ある程度行くと大きな館を中心にして、民家が点在している地域を見つけた。空中からだと一箇所に多くの人が集まって居る様子が見える。誰かが追われている。
俺は急降下した。そのうちに追われて居るのがリックだと分かった。
「
急降下した勢いを利用した巨大な炎の斧が追われているリックと追っている村人の間の地面に付き刺さる。高熱の炎が村人の動きを止める。俺はリックの近くに着地した。
「大の大人がこんなに大勢で何やってんだ。リックが嫌がっているだろ」
「なんだ、このガキは」
「俺達の邪魔をするな」
村人達が俺に殺意を向けてくる
「どこまでもクズな奴らだな。リックは俺の後ろに隠れておけ。こいつらに構うな」
俺は未だに治らない炎の斧の前に立った。
「ここから先、リックに危害を加えようってなら俺が相手をしてやるよ」
「ほう、いきなり現れたガキに何が出来る。人数でも体格でも我々が有利だ。大人を舐めるなよ」
そう言って村人達は俺の事を襲おうとして来た。
「待て、そいつらに手を出すな」
ゴゴゴゴゴ
突然地面に穴があいた。地中より二人の人間が現れた。俺は現れた顔ぶれを見て、動けなくなっていた。
「ポタ、ダニー、カロ。どうしたんだよ、その姿」
かつての
「あなたがキング・ロゼですね。シルバーエンジェルから聞きましたよ。この子達はこんな夜の危ない時間帯に出歩いていたので保護したのですよ。まぁ……少し形は変わっちゃいましたけどね」
魔獣と化した三人の内の一匹が4速歩行でガロスの前に出た。
「ガルルル…」
鼻息を荒立て俺を獲物を狙うような目つきで睨んでくる。さらに後ろにいたもう二匹も続いてガロスの前に出た。
「保護だと…? ふざけるなよ……俺の…俺のようやく出来た友達を返せよ」
切実な願いだった。こっちの世界に来てからは友達を作ろうと努力していたのに……。
前世でもそうだった。クラスで仲良くしようとしていたのに、大人が作ったルールに基づいたテストの点や運動神経で勝手に評価され、落ちこぼれ扱いを受ける。結局は人だ。人に邪魔される。
「友達は返すよ。ただし取引だけど。君の後ろにいるリックをこちらに渡して貰おうか。そうすれば、三人を元通りにして返してあげるよ」
「汚ないやろうだな」
「ふっそれは果たしてどちらなのやら。君はまだガキだから知らないだろうけど、我々、
「………なるほどな。それは悪かった。差別に関しては俺が今後王になってなんとかしてやる。だが、今のお前のやり方は間違っている。リックは渡さない。三人も返して貰おうか」
「綺麗事ばかりだな。それが出来ないから我々はここにいるのだ。行け、ロゼを殺すんだ」
ガロスが命令した瞬間、三匹の魔獣がロゼに襲いかかってきた。俺は顔がカロ、ポタ、ダニーであることから、相手に反撃をする事を躊躇った。だが、鋭い爪を立てながら向かってくる友達だった獣の攻撃を受けるわけにはいかず、俺は避けることにした。
三匹の魔獣は俺が避けたスペースを利用して、そのまま、後方にいたリックを襲おうとする。
「クソ、させるかよ。
俺は2刀と風剣を両手に持つ。
急いでリックの元に向かった。
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