第15話
「ククク、権力ですか。ロゼ様、実は私は今までロゼ様の悪い噂を流そうと裏で暗躍していたのです。でも、何故かなかなか上手くいかなかった。そこで見えて来たのは、国民のロゼ様に対する熱い期待ですよ。おそらく、あのオロスター襲撃事件のおかげだと思いますが。その期待のせいで私の仕事は上手くいかなかった」
そういうとウェルトは両手を広げた。
「ここから先へは行かせませんよ。力ずくで来るなら、相手をしますが」
「クリスタル城内で俺の噂を流していたのはあんただった訳か。そして、今度も俺の友達を助けるという行為の邪魔をする訳だ。なら、魔術で無理矢理通らせてもらうぞ。
暗闇の中ロゼが雷の飛ばした雷の塊は眩い閃光となってウェルトを襲った。電撃がウェルトの体を走る。だが、やがて何事もなかったかのようにいった。
「私に雷魔術は聞きませんよ。全て纏魔術によって防具の魔力に変換されます。そして、これがお返しです。暗殺術
その瞬間ウェルトの姿が消えた。雷の速さでロゼの元までやってきた。防ぐ時間もなくロゼは殴り飛ばされた。
「今のが刃物だったら死んでましたね。ロゼ様は確かに魔力量100万というとんでもない力を秘めていますが、所詮ちゃんと使えなければ意味なし。自分が誰よりも魔力量が多いからと言って調子に乗っているはずなので、少し痛めつけて起きましょうか。ククク」
こいつ、完全に遊んでやがるな。まぁ俺は見た目6歳のガキに馬鹿にされるのも仕方がない。それより、奴の攻撃だ。雷と同じ速度で移動する魔術。1回で2万消費するのはでかいとはいえ、確かに刃物なら死んでいたのも事実だ。だが、雷なら動きは直線的。やりようはある。
「複合魔術、
土、風、炎の複合技だった。煙と炎によって相手にどこにいるかを悟らせなくする。こちら側は煙に含んだ魔力感知で相手の位置を悟れる。直線的に早いだけじゃ対処できない。
「さらに
土魔術によって硬度を上げた刀。魔力性質上、土は雷に強い。奴の動きを捉えた後はこれで切る。さぁどこからでも来い。
「ふーん。魔力量1万以上を連発。己の体質を生かしたってことか。ガキのくせにやるじゃん。あ、今のは独り言だよロゼ様」
ウェルトは慌てて弁明した。
「でも、僕が雷魔術だかしか使わないっていつ言ったかな? 暗殺魔術
ウェルトの正面に風で数匹の形付けられた鳥が現れた。
「ロゼを殺せ」
掛け声と共に鳥が一斉に飛んで煙の中に突っ込んだ。
「俺も行く。
ウェルトも再び雷と化して煙に突っ込んでいった。
煙に含んだ魔力から反応が反応が複数確認できた。ウェルトの風魔術。風で煙を巻く算段だろう。だが、そんなことは既に想定済みだ。複合魔術は魔術による相性の差を埋めるためにある。風は土に強いが炎に弱い。やがて煙に含まれている炎に押し負ける。
俺の読み通り、全ての
いや…俺は
煙が晴れていく。
「そうか、風の複数攻撃は囮。煙に感知能力を混ぜているのもお見通しだった訳か」
「これが魔力量を補う経験の差ってやつだよ。そして、次から本気で殺しに行きます。何故か分かるかい?」
俺は口から流れる血を拭って立ち上がった。
「フッそれを本人に公言するとはな。そんなの知る訳ねぇだろ。でも、お前が俺を嫌ってることだけは分かったぜ」
「ある意味正解。私はあなたのことが嫌いなのですよ。正確に言うと嫌いになりました。暗殺を縄張りにしている私がロゼ様を殺さず、ただ噂を流すことだけに徹したのですよ。殺すチャンスは幾らでもあったのに。しかも、上手く行かない。口を揃えてロゼ様がそんなことをするはずが無いと言って笑い話に変えるのです。正直、ストレスが溜まってたんです。私は人が笑顔でいる姿が大嫌いなのですよ。だから痛めつけて殺してあげますよロゼ様」
さっきから変なやつだと思っていたが、確信した。こいつは頭がおかしい。前世でいうところのサイコパスってやつだろう。
「自分が上手く行かないのを他人のせいにしたり、わがままな奴だな。そういう人間はこの世界でも嫌われんだよ」
「ほう、言うようになったなロゼ様、いやロゼ。お互い嫌いあった訳だ。これで心置きなくやれるね」
ウェルトは嬉しそうに笑った。
–サイコパス野郎が。この橋を押し通すのはやめだ。この目の前の男、ウェルトをぶっ倒してから進む。次は全力で行く–
俺は体内の魔力を押し上げた。纏魔術と放出魔術の複合技。白魔術を使う為にサウザーに最近教えてもらった技だった。
「白魔術
暗かった空が白く輝く。白く巨大なロゼがそこに出現した。
「おお、これは凄い」
ウェルトは思わず、見惚れてしまった。
「なら私も今できる最高の暗殺術でお返ししよう」
そう言ってウェルトは自身が着ていた防具を脱いだ。
「全てを攻撃に集中する。暗殺複合魔術
ウェルトの周囲が銀色に輝いた。
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