第4話
-ワシは探し出さなければならない。裁きを下さなければならない。白魔術を使う魔力量100万の人間はどこのどいつだ。殺してやるから早く出てこい……。
ドラゴンは空中で、そう思いながらクリスタル城を眺めていた。いくつかの攻撃を繰り繰り出す。だが城の一部を破壊しても白魔術使いは見つからなかった。
窓の僅かな隙間から、自分のことを見ていた赤ん坊と目があった。その時赤ん坊の目から伝わってくる魔力に、とてつもないものを感じた。
–こいつか?……まだ赤ん坊だぞ。どうやって白魔術を出したんだ?……とりあえず、攻撃をして様子を見るか。
「
急いでいた。サウザーはそのドラゴンが口から炎を出しているのを目にすると焦った。
クソ、間に合あうか?
「
サウザーの走っている足の裏に風が吹いた。その力で人間が本来出るスピードの何倍もの速さで進み加速していく。
サウザーがドラゴンの前までたどり着くのと、炎が発射されるのがほぼ同時だった。
サウザーは背中に背負っていた三尖刀を手にした。
「
サウザーは三尖刀を振り下ろした。それと同時に三尖刀のそれぞれの刃から、炎、雷、風の刃が出た。それぞれの力が合わさり、ドラゴンが放出した炎とぶつかった。
炎だけの魔術と、炎、雷、風が集まった魔術。魔術の性質が多ければ、その分だけ魔力量が必要だった。そして、消費する魔力量が多ければ攻撃力は高くなる。
ゴオオオオオオオオオオ!!
ドラゴンの炎は押し戻された。そしてその後に来る
サウザーはそのまま城の屋根に登りドラゴンと正面から対峙した。さらに後から二人がついてくる。
遠巻きで建物からその様子を見ていた国民が口々に言った。
「あの方達は、魔軍局のサウザー局長、そして隣にいるのがコラン副局長、リスター隊長」
「魔軍局のサウザーさん達だ。助かった」
「良かった。サウザーさんなら、あの忌まわしきドラゴンも大丈夫だろう」
「バブ」
思わず声が漏れた。これが魔術の戦いか…かっけえな、あの人。俺はモニカに担がれながら廊下を移動していく中で、所々にある窓から様子を見ていた。俺もあんな風に魔術を支えるようになりてぇ。将来は俺も魔術やらを使って女の子を助けるんだ。ふふふ…モテるだろうな。
「ロゼ様、今は我慢してくださいね。いずれ私が安全な所に連れて行きますからね」
「バブバブ」
モニカは完全に俺のことを生まれたばかりのガキだと思っているのだろう。まぁそれは仕方がない。今の俺じゃ何も出来そうに無いからな。
クリスタル城の屋根上は風が西から吹いていた。サウザーの短い青髪が揺れる。
サウザーは目に魔力を集中させ、空中に浮いているドラゴンをまじまじと見つめた。
「総魔力量80万か。かなり強いな…」
「80万って、サウザー様より上の魔力量じゃないですか。何者なんですか?」
隣にいたリスターは驚いたように言った。
「待てよ、この紺色の体と赤い目、総魔力量80万……。伝記の中でしか見たことがないが、確か……、破壊竜オロスターだった気がする」
コランは思い出して手のひらをグーで叩いた。
「こいつがオロスターか」
サウザーも噂程度には知っていた。確か、はるか昔にクリスタル王国の王によって眠らされたはずの伝説のドラゴンだった。
「どうしますか、サウザー局長」
「この国を守るのが我々魔軍局の使命だ。すぐにハイゼンが魔軍の本体を連れてくるだろう。それまでクリスタル城を守るぞ」
「はっ」
コランとリスターは同時にオロスターに向かって飛んだ。
サウザーは両手を二人に向けた。
「
魔力量5000×3
コランとリスターの足元に風が吹き、その風に乗って空中に浮かぶ。城の上にいたサウザーの足元にも風が吹く。足が屋根から浮かび、サウザーも空中に浮かぶ。
サウザー 総魔力量 50万→残り43.4万
コラン 総魔力量 10万
リスター 総魔力量 8万
コランは左手を上に上げた。
「
左手の周りに自然と水が集まってくる。やがて、変形し鋭利な刃物のように尖って刀になった。
「果たして破壊竜にどこまで通用するか…」
「コラン副長、援護します」
リスターは手のひらをオロスターに向けた。
「
電気の波が発生して、勢いよくオロスターの元に届く。オロスターはその波を受けると、身体に電流が通り麻痺して動かなくなった。
そこにコランが
「くらえ」
竜の弱点である喉元を掻き切るように狙いを定めた。
その時、オロスターの目が動いた。コランは目が合うとその殺気に一瞬怯んだ。
オロスターは小馬鹿にしたように鼻息を吐いた。
人間どもがくだらねぇな。この程度の魔術でワシが倒せるとでも?
「
それは身体全身から炎を発生させて、周囲に飛ばす技だった。炎の衝撃波が
さらにその力は後方に居たサウザーの元まで届いた。だがサウザーは負けじと新たな魔術を使った。
「
三尖刀を掲げた。サウザーの周囲に 炎、雷、風の三つが合わさったバリアが現れた吹き飛ばされてくるコラン、リスターの周りにもバリアが張られていく。そのバリアでオロスターの攻撃を凌いだ。
くそっ、このバリアでは城全体への広範囲攻撃は防げない。どうか城の中の人達よ無事でいてくれ。
サウザーは祈るしかなかった。
オロスターが放った衝撃波はロゼの元にも届いた。俺を抱えていたモニカの側面の壁にひびが入り、壁が崩れて来た。壁から出た粉末が俺とモニカのところに落ちて来る。
このままでは、俺とモニカの姿があいつにバレる。そう思った時、モニカは魔術を唱えた。
「
モニカの足元の床から次々に一人の人間程の土の柱が出てきた。
「ロゼ様。ここから先は強引に進みます。しっかりと捕まって置いてくださいね。」
近くの防げても、
オロスターはもちろん、そこに疑問を持った。あの壁の残り方からして、魔術使いが隠れていると考えるのは自然のことだった。
「
オロスターは残っている壁だけにピンポイントで狙いを定めた。
モニカは壁の裏でまた凄まじい魔術の感覚を覚えた。モニカは赤ん坊のロゼを抱えたまましゃがんだ。
「あまりやりたくなかったけど……
途端に遥か遠くの通路まで真っ直ぐ2本の亀裂が入った。そして、亀裂の中の道が動き始めた。俺はそれを見た瞬間、前世での記憶の中にあった、駅や空港で見た動く廊下を思い出した。でも今回は速さが段違いだ。
モニカはロゼを抱えたまま、動く廊下こと
ドオオオン‼︎
背後で建物が破壊される音がする。
モニカは力の差を感じていた。
「バブバブ」
「ごめんね、ロゼ様。魔力量1万を超える魔術が平気で出て来るなんて、私の実力じゃあのドラゴンとは戦えないの。逃げるしかないのよ」
その瞬間、オロスターから新たに凄まじい魔力量の攻撃がやってきた。もう壁も無い。直接攻撃が来る。モニカは避けようとしたが間に合わなかった。
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