手織りの魔法少女

トマトも柄

第1話 手織りの魔法少女

 桜吹雪の舞っている木々の中、木々の下では人だかりで盛り上がっている。

 何人かの人はビニールシートを敷いて様々な物を置いている。

 そこに置いている物を人々は金を払っていき、どんどん物を買ったりしている。

 そこで1人の少女が空から舞い降りてきた。

 その少女は片手には箒を持っており、背中には大きな風呂敷を抱えている。

フリフリのフリルを揺らしながら少しずつ降りていき、地上に着地すると同時に一言言う。

「間に合ったー!」

 そう言い終わると同時にその場で風呂敷からビニールシートを出して風呂敷の中の物をどんどん出していく。

 中から出てくるのはかわいい手編みのキーホルダー、手編みの服や小物雑貨など様々な物が出てきた。

「今日も販売やっていくよー!」

 少女はちょこんと座って客が来るのを待っている。

 ここはフリーマーケットで、それぞれの手持ちの物を販売している場所であった。

 一般の人がもう使わなくなった物やら手作りを販売する場所である。

 そして、買い物する客がやってくる。

「お姉ちゃん……今、空から……え?」

「うん。 そうだよ〜。 私、魔法少女だからね。 私の名前は桃木ももきって言うの。 よろしくね」

「魔法少女!? じゃあ悪魔とかと戦ったり!?」

「そんな事ないわよ。 隣、見たら分かるよ」

 少女が隣を見てみると、角の生えた青年が野菜のキーホルダーを販売している。

 少女が口をパクパクしながら見ていると、

「嬢ちゃん、何か買うかい?」

「あ…じゃあ、トマトのキャラのキーホルダーを」

「それなら200円だな。 大丈夫かい?」

 悪魔の言葉に少女は頭を振り回す勢いで頷き、悪魔からトマトのキーホルダーを購入した。

 そこで少女はすぐに桃木の所に戻り、

「悪魔が! 野菜キーホルダー! 売ってる!」

 あまりの少女の慌てぶりに桃木は驚きながら答える。

「え…ええ。 毎回参加してくれてるのよ。 魔法少女と悪魔戦ったのって何世代も前の話だし」

「懐かしい話をしているな」

 少女の後ろから先程の悪魔の声が聞こえる。

「ひゃい!? ごめんなさい! 食べないで!」

「食べないから!」

 悪魔がすぐに否定して食べない事を示す。

「俺達、まぁ悪魔はな食に疎い事もあってな、人間の食文化にみんな感動して全員が食品関係の仕事に就いたよ。 農業で働いてる悪魔は結構多いな」

 そう話しながら悪魔は少女に手を差し出す。

 何だろうと少女は覗き込むように見ると百円玉の硬貨が三枚、手の上に乗っている。

「お嬢ちゃん。 お釣り、忘れてるぞ」

「あ! ありがとうございます!」

 少女はすぐにお釣りを受け取り、お礼を言う。

「良かったらうちの商品も見ていく?」

 桃木は笑顔で少女に語りかける。

 そこにはハンドメイドで作り上げた小物など様々な物がある。

「これってお姉ちゃんの手作り?」

「ええ、そうよ。 全部手作りで作っていてその後で魔法を使って少しだけ運気を上げるおまじないをしているの」

 それを聞いて悪魔が飛びつくように食い付き、

「じゃあ俺のキーホルダーが全部売れるようにおまじないかかるわけか!」

「君は毎回人気で全部の商品売り切れる勢いだからそれは要らないでしょ」

「いやいや! 次に繋がるかと思ってな。 これ買うわ」

「はい。 五百円ね」

 桃木が小さな編みぐるみを手に取り、悪魔から五百円を受け取る。

 少女も悪魔と一緒に編みぐるみを一緒に買った。

 そして、少女は買った編みぐるみとキーホルダーを見ている。

 「その、教えてほしいのがあるのですが」

 2人は少女を見る。

「この編みぐるみの作り方を教えて貰っても良いですか!?」

 少女は勇気を振り絞って桃木に聞く。

 桃木は笑顔で答えた。

「良いわよ。 一緒に作りましょうか」

「あ、ありがとうございます!」

 そして、少女は手に持っていた鞄から何かを取り出している。

「実は一生懸命編みぐるみを作っていたのですが、どうしてもこうなってしまって」

 二人は少女の編みぐるみを見て苦笑いを浮かべる。

 所々で糸が飛び出しているのが見えて、何かの動物を作っているってのがかろうじて分かるくらいで、何の動物かが分からない状態であった。

 悪魔が気になったのか少女に聞く。

「えと……これは何の動物かな?」

「兎です!」

 少女が自信満々なのに答えているのを悪魔は戸惑った表情を見せている。

「それともう一個あるんですよ! こっちはまだ大丈夫ですよ!」

 少女が自信ありげにもう一つの編みぐるみを見せてくれるが、糸がほつれかけの部分があり商品として出せるかと言われたら微妙な出来であった。

「これは何の動物かな?」

 桃木が聞くと少女は自信満々に答える。

「アザラシです!」

 二人は戸惑った表情を見せる。

「作ったは良いのですけど、どうしても上手く出来なくて……そこで桃木さんに教えて欲しいんです! お願いします!」

「見せてくれてありがとう。 何となくではあるけど、どこで苦戦しているか分かったからそこを重点的に教えようか。 大丈夫! 私に任せなさい!」

 そこで悪魔がニヤリと笑い、

「どうせなら次のフリーマーケットで出してみたらどうだ? そこの先生がミッチリ教えてくれるはずだからさ」

「それは良いわね! ここでするのも勉強になるし! ナイスアイディア!」

 そのやりとりに少女は戸惑って、

「え!? けど! 私やり方分かりませんし、それまでに上手く出来るかどうか分かりませんし!」

 少女は首をぶんぶんと振って、出来ないと示している。

「失敗したらしたで良い勉強になるし、やってみない? きっと良い勉強になるから」

 少女は悩んでどうしようか迷っている。

 その悩みに後押しする様に悪魔も一言付け加える。

「それに最初から一人でするのは大変だろうからな。 こっちでもサポートするぞ。 三人で合同にやるように調整するからな。 そんなに心配しなくても良いぞ」

 それを聞いて少女は決めたのか二人に言う。

「出てみます。 お二人共ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」

「迷惑だなんて考えてないよ。 フリーマーケットはみんなで楽しむ為にあるのだから」

「はい! ありがとうございます! そろそろ用事ありますのでここで失礼します」

 少女は頭を下げて立ち去ろうとしていると、

「ちょっと待って! 帰る前にこれを持って行ってくれる?」

 そう言って桃木はミシン型の編みぐるみを少女に渡した。

「そのミシン型の編みぐるみは魔法をかけてあってそこにある場所が分かるようになっているから、私がまた今度訪れるね」

 桃木がそう言ってから少女は疑問に思ったのか、

「それって携帯電話の連絡先を交換すれば良かったのでは?」

 三人は少し沈黙した。

「ほら! 魔法少女要素あった方が良いじゃない! ね! 魔法出来るんだ〜って見せれるから!」

 それを聞いて悪魔は必死に笑いを堪えている。

「連絡先も一応交換しとこうね」

 桃木は顔を赤らめながら少女と連絡先を交換した。


 そこからは週一で桃木は少女の所へ編みぐるみのやり方を教えに向かっていました。

 苦手な部分を丁寧に教え、徐々に編みぐるみが綺麗な姿になっていく。

 そして、桃木からのOKサインが出て、次のフリーマーケットで出すのが決定した。


 フリーマーケット当日になり、三人は列を並べて販売している。

「まぁ、販売するにしてもいつも通りでいれば大丈夫よ」

 桃木は緊張している表情の少女に語りかけて緊張をほぐそうとしている。

「ひゃい!」

 緊張がほぐれないのを見て悪魔が横から静かに物を置く。

「今日の販売するキャベツキーホルダーだ。 かわいいだろ?」

 そのキャベツのキーホルダーにセリフが書いており、私は美味しいよと書いている。

「ほら、上手く出来てるだろ? キャベツのお陰でね。 キャベツが事できたぞ」

 それを聞いて少女がクスッと笑った。

「そうそう。 そんな感じの笑顔で良いんだよ。 気楽にやっても大丈夫なんだからな」

 悪魔がフォローに回り、少女は笑顔を出していた。

 そして、徐々に販売していた物が売れていく。

 三人共いい具合に売れ上がっており、販売していく物がどんどん無くなっていく。

 そして、三人のとこで残っているのは少女の兎の編みぐるみのみになっていた。

 その編みぐるみも最後のお客さんに買われようとしている。

「この兎は販売しているのでしょうか?」

「はい!」

「この兎の編みぐるみとてもかわいいわね。 買います」

「ありがとうございます!」

 そして、最後の編みぐるみも売れて売れる物が何も無くなったのである。

「完売おめでとう!」

 桃木は少女に拍手を送りながら言った。

「ありがとうございます! 桃木さんが教えてくれたお陰です!」

 横で悪魔は自分を指差して無言で少女を見る。

「もちろん悪魔さんにも感謝していますよ! ありがとうございます!」

「じゃあ全員完売しましたし、後片付けをしますか」

 そして、全員が後片付けをして少女は感謝をして先に帰って行った。

 そして、二人が残り会話を始める。

「あの子に魔法の手助けは付けなかったんだな」

「ええ。 あの子、とても一生懸命に学んでくれたからね。 私の手助けはむしろ邪魔になるわよ」

「あの子、感謝してたけど全部自分の実力で売り上げたって分かってくれたら良いんだけどね。 魔法がかかったみたいに売れてたけどね」

「魔法ならかかってたわよ。 努力という名の魔法がね」

 









 


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手織りの魔法少女 トマトも柄 @lazily

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説