ぼくはいわゆる“なろう系ファンタジー”にあまり親しみがありません。一方、現代バイオレンス小説には割と馴染みがあります。そういう読者だからかもしれませんが、この小説、非常に楽しんで読んでいます。
とにかくのっけからフルスロットルでテンポがいい。畳み掛けるようなスピーディーな展開、効率的な語り口。また、『ニンジャスレイヤー』を思わせる印象的なキャラクター造形や用語とファンタジー世界との取り合わせが存外によいのも面白い。主人公を取り巻く三人の訳あり美女たちの造形は、個人的には深見真作品を思い出させるワイルドでバイオレンスな魅力に満ちていて、これまた好みです。
しかし何より主人公の“バックスタブ”が魅力的。いろいろハードボイルドやら犯罪小説やら読んできましたが、それらの作品で活躍してきたダーティヒーローたちに勝るとも劣らぬタフネスやふてぶてしさがある。慇懃ながらも切れ味鋭い減らず口もたまりません。個人的に非常に好みのキャラクター。自分自身を“背後からの一突き”と形容する諧謔味もまたよいですね。
あと、鉄砲おたくとして気に入っているのは、バックスタブが我が物として愛用する“ヒュドラの牙”。たぶんケルテックKSG散弾銃がモチーフだと思われますが、アレンジがとてもかっこいい。カスタムも実に魅力的。これはぜひともビジュアル化されたものを見てみたい。敵役の使う銃はまだまだ種類が少ないですが、いろいろ期待したいところです。
何にせよ、これはなかなか痛快なファンタジー・クライムアクション。今後の展開がとても楽しみです。