第224話 茅ヶ崎出張と陰陽会合流 フランの戦略 10月中旬
<<清洋建設 特別室>>
今日は朝から水政くん達を連れてディーの家を訪れ、さっさと水政くんを押しつける。
異世界出身のブレーンを欲しがっていたので、早速外務卿に紹介して貰えるそうだ。他の4人も入国手続きを済ませ、彼らは徳済さんに任せる。
一仕事終えた俺は、いつものごとく清洋建設特別室に飛ぶ。
直接特別室に入ったのは俺と糸目とオキタの3人だ。ノルンと船医はアナザルームで下準備中。ツツは今日までお休みだ。
「おはようございます。多比良さん。オキタちゃんもおはよう」と、いつものごとくベクトルさんが出迎えてくれる。
「おはようございます。ベクトルさん。今日は選抜最終日です。それが終われば面接ですね。最初は防衛部隊の訓練からですが、どうします?」
「明日面談し、当日出発ということで用意させましょう。防衛部隊決定から出発まで時間を空けてしまうと、その間に情報漏れやスパイ化の恐れも出てきますので」と、ベクトルさんが言った。
「糸目、選抜は今日中に大丈夫?」
「判定自体は、午前中には完了すると思う。明日までにはデータも整理しておくわよ」
「了解」
糸目は別室に移動。
我々はいつものごとくテレビを付けて、パソコン仕事。オキタは相変らずテキストを開いて勉強を始める。
『出てきました。徳済多恵氏が茅ヶ崎市役所から出てまいりました。転居届けを提出したものと見られます』
徳済さんが警備員に守られながら市役所から出て行く。
これで、彼女は晴れて茅ヶ崎住民だ。
・・・
『徳済多恵氏が茅ヶ崎の海岸に現われました。まさか、泳ぐつもりでしょうか』
テレビを流していたら、徳済さん情報に新たな展開が。
「徳済さん、ひょっとしてサーフィンか? 昨日焼いたって言っていたし」
「え? 海で泳ぐの? 信じられない」とオキタが言って、ぎょっとした顔をする。
「ここの海にはアルケロンもモササウルスもいないぞ? サメもほとんどいない」
「そ、そうなんだ」
「そうだ。少し行ってみるか。せっかく部屋を借りたし」
「ええ!? 僕も行くの?」と、オキタが言った。
「お前は帽子を被っていれば、日本人と区別付かないからな」
「そ、そうなの?」と言って、自分の角を触る。
オキタの角は短いから目立たないし。髪は黒だ。
「ちょっと、海をお散歩がてら徳済さんを見てこよう。徳済さんの場所、烏帽子岩が映っているし、何とか探せるだろう」
・・・・
先日借りた茅ヶ崎市の物件には、小田原さんにお願いして『シリーズ・ゲート』を設定して貰っていた。
そこに転移するのは今日が初めてだ。
転移すると、知らない人が「いらっしゃ~い」と言ってくれた。見た目が不気味だし、まこくさんの一人だろう。ユーレイさんではないようだ。あの人は直ぐに体を触ってくるから。
部屋を見ると、ここにはすでに、まこくさん達がうじゃうじゃいた。早速根城にしているみたいだ。先日借りた五星リゾートの1棟貸しも、ずっと借りっぱなしになっており、彼らの巣窟になっているらしい。たまに魔王が温泉に浸かりにくるとか。あそこでのんびり仕事をするのも贅沢だ。俺も今度おじゃましてみよう。
「こんにちは。少し出ますよ」
「どうぞ。付いていきましょうか?」と、まこくさんが気を使ってくれる。
「いいよ。散歩したらすぐに戻る」と言って、オキタと一緒に家を出る。
ここは茅ヶ崎海岸近くの一軒家。旗地になっており、家に続く入り口は車1台がやっと入るくらいで狭いが、入った先には広い家がある。ちゃんと、駐車場横には、場外シャワーとボード置きが設えられている。
結構いい物件だよなぁ。
家の周りは塀と柵で囲まれているし。
ま、清洋建設も俺を利用しているわけだし、俺も利用させて貰おう。
閑静な住宅街をてくてく歩く。徳済さんは何処だろうか。
ここの街と海の間には、国道が走っているためすぐに海へは出れない。入り口を探しながら歩いて行くと、途中でサーフィンショップが見えてきた。水着やウェットスーツも置いてある。
「入るか?」と、横を歩くオキタに聞いてみる。
「いや、いいよ。時間もないし。というか何のお店?」
「サーフィンと言ってだな。あのボードで波に乗るスポーツなんだが。まあ、今度でいいか」
今は10月ということもあり、人はまばらだ。サーファーは結構いるけど、海水浴客がいない。今年は感染症対策もあって、観光客も少ないんだろう。
「で、徳済さんは何処だ?」
国道を越え、砂浜に出て歩く。
「僕、初めて砂浜なんて歩いたよ」
「海はあまり行かないのか?」
「そうだね。海は危険だし、ジマー領も、学園に通ったハチマンも内陸部だったから」
「ひょっとして泳げない?」
「まさか・・・おじさん、僕のお父さんのこと知らないの?」
「え? イセの元旦那・・・そういえば知らないな」
「そうなんだ。話していないのか・・・僕のお父さんはね。半魚人なんだ」
「そうかぁ」
あ、あいつ、半魚人と結婚していたのか。というか、いるのか半魚人。
「だから、泳ぎは大の得意だよ」
オキタと駄弁りながら歩くと、すぐに海が見えてくる。本当にいい物件だな、ここ。
「そっか。サーフィンとかも上手そうだがなぁ。ファイターも上手に操ってるし」
「そのサーフィンって、あれのこと? あの海にぷかぷか浮いてるあれ」
オキタが指さす彼方には、波待ちしているサーファーがいた。
「そうだな。今は波待ちしてるんだな。かく言う俺もやったこと無いけどな」
サーフィンを見物しながら海浜を歩いて行く。相当向こうにちょっとした人だかりが出来ている。
何となく、そこを目指して歩いて行く。
すると、人だかりが出来ている場所に見知った人が一人。
「お、いたいた。ボード持ってるな。やっぱりサーフィンか」
「わお。際どい服着ているね」
徳済さんは、下はウェットスーツ。上はビキニで、上のウェットスーツを脱いで腰から垂らしている状態だ。今日は天気もいいし、暖かい。
その辺にいた若者なのだろうか。気さくに話をしている。
ああやって、若者受けを狙っているのだろう。
「ふむ。うまくやっているようだな。帰るか」
「ええ? もう帰るの?」
「お前泳がないんだろう?」
「そうだけど。もう少し分かる所まで行った方がいいんじゃない?」
「いや、テレビカメラがいる。ここら辺で止めておくか。というか、徳済さんこちらに気付いたな。目が良すぎるだろう」
「あ、本当だ。少し手を振って帰ろう」
適当に手を振ってそのまま帰ってきた。時間はお昼前。良い時間つぶしになった。
・・・
午後からは、魔力判定が終わったということで、速報を聞くことに。
発表者は糸目だ。
「はい。発表します。結果は豊作です。反重力2人土魔術士2人のユニットの目標数が10ユニットでしたが、20は組めるくらいです。防衛部隊の方は、候補が20人いましたが、魔術バランスや男女バランス的にも全員いいんじゃないでしょうか」
では、石積み部隊だけで80人組めるということか。
それは確かに豊作だ。
「ほう。一応確認だけど、初期の防衛部隊は、食事なんかも自分たちで作るんですよね。もちろん、補給物資の運搬は私が担当しますし、医者も向こうに配置させますが」
「はい。補給以外は自己完結できます。今回は元自衛隊出身者も多いんですよ」
「じゃ、明日からツツが復帰するから、面談を進めましょう。最初は防衛部隊から。防衛部隊といいつつ、調理からなにからの総合職部隊だから、当初予定の10名を越えてもいいや。石積作業ユニットはまだ合格発表はしない。防衛部隊の訓練が進んで、異世界受け入れ準備が済んでからにしよう」
と、その時、俺のスマホがぷるぷると震える。とてもめずらしい。
俺の番号は、異世界から帰ってきた後、変更している。番号を知っている人は、ごく僅かだ。
知っている人も気を使っているのか、そんなに頻繁にかけてこない。
通知を見ると、『楠木陰陽会』となっていた。この人は異世界転移した日本人達のために色々と動いて貰っている人。
嫁の実家の高橋道場と協力して、俺の兄上や親戚も保護してもらっているそうだ。
そして、俺の資産管理。はっきり言って隠し口座の一つもここが管理していたりする。
「すみません。ちょっと出ますね」俺はそう言って、通話ボタンをタップした。
「はい、多比良ですが」
『ああ、多比良さん。楠木です。今日本にいらっしゃるとお聞きしまして、今からお会いできませんでしょうか』
「ええ、そちらは今どちらに? ご要件はなんでしょう」
『私達は東京です。人を紹介したいのです。同じ団体の者です。機密漏れなどは一切ご心配なさらず。10人なのですが、いかがでしょうか』
「はあ」
・・・
ベクトルさんに許可を取り、陰陽会の人らに来て貰うことに。
楠木さんの他10人くらいがぞろぞろと入ってくる。女性もいるようだ。みんなこちらを見る目が熱い気がするのだが。
「お久しぶりです多比良さん。後ろの者達ですが、彼らが、貴方の自宅跡に押しかけていた張本人達でして」と、楠木さんが言った。
おい。なんでそんな方々を連れて来た。
「おお、神々しい・・・まさに牛頭天王のごとし。ああ、ありがたし・・・」「おお、素晴らしい」「はぁ~多比良様ぁ・・・」
ちょっと怖い。
ツツに精神鑑定をお願いしたい所だ。
「あ、あの、あの土地ならお売りしますので、何なりとご活用ください」
「いえ、それはいけません。あの土地は貴方のものだからこそ価値があるのです」
ドヤ顔で否定されてしまう。さっさと売って縁を切りたいのだが。別に先祖代々の土地というわけでもないし。
楠木さんは少し線の細い人だけど、この目の前の人は肩幅が広く、結構がっちりしている。
そして、顔が濃い。歳の頃は俺と同じくらいではないだろうか。多分、アラフォー。
「と、いうわけで、あそこには、元あった家と同じものを建てましょう。中の家具も同じ物にして家そのものをご神体にするのです」
は、はあ。
「こら。八坂殿。今日はその話ではないだろう?」と、楠木さんが言った。
「うむ。そうであった。多比良様! 我々を異世界にお連れください!」
暑苦しい。どうしよう。裏切りはないような気もするけど、余計なことをしそうな気がしなくも無い。
「ちなみに、理由を聞いてもよろしいでしょうか」
「基本的に、我らはあなた方のお手伝いをしたいのです。異世界に行く理由は、魔術を身に付けることですが、その理由は2つあります。一つは、この世界、日本での活動のためです。これは八重殿の意思でもあります。今、海外マフィアや外国の諜報部員を含め、大変動きが活発になってきております。そういったならず者から異世界関係者を守るために、力が欲しいのです。2点目はあなた自身のお手伝いをさせていただきたいのです。築城にモンスターハントなどですね」
人材は確かに欲しいけど、しかし、またしても嫁か。
「八重・・・うちの嫁が?」
「はい。八重殿は独自にマ国とパイプを持ち、高橋道場関係者達は、すでにマ国に入って修行をしています。我らも相談したのですが、それなら、マ国ではなく、『五稜郭』がいいだろうと」
嫁が五稜郭を知っている? 築城を開始しているのは結構知られていると思うけど、ノーラさんをスカウトして魔術訓練をしようとしているのは最近だぞ? どういうことだ? まあ、普通に楠木さんから聞いたのか。今回の彼らは、紹介ルートからして信用しよう。今は味方が少ない。少しキワモノでもよしとしよう。
「そっか。明日、面談をしますんで、それに合格できたらいいですよ」
「ありがたき幸せ~~~」「おお~やった!」「流石は多比良様」「この身は多比良様のために」
皆行く気になっている。
あいつも異世界のためを思って活動している。
嫁と少し話をした方がいいのかな・・・
◇◇◇
<<軽空母>>
明日は面接して、そのまま一旦サイレンに入り、防衛部隊の入国手続きを済ませる予定にしている。
彼らは最終的に五稜郭に入るが、その前にメイクイーンで基礎訓練を行う予定にしている。用事でサイレンに入る事もあるだろうから、ラメヒー王国の入国手続きを行っておくつもりである。
そして、その次の日にはメイクイーンに軽空母で飛ぶ。
今日は、その準備のために、我が軽空母を訪れる。まあ、俺の今の寝床なので、いつも夜には戻るんだけど。
オルティナと打ち合わせをして、諸々の指示をしないといけない。
・・・・
打ち合わせが終わり、街中まで夕飯を食べに出かけ、夜に再び軽空母に戻る。今はツツがお休みなので、一人で軽空母内をうろつく。
なんとなく操舵室を覗いてみる。もうこの時間は誰もいないようだ。
厨房も静かにしているが、少しだけ人の気配がする。
誰かが後片付けでもしているのだろう。廊下を歩いていく。ほんのり、厨房から塩素系の香りが漂ってくる。消毒をしたのだろう。
ん? 誰もいないと思っていたけど、座敷の方に誰かがいる。
我が軽空母の食堂は、座敷にしている。そこに誰かが
いや、違うな。両膝と両肘を座敷に着けて、テーブルの下をのぞき込んでいる。
ちょうど女豹のポーズみたいになっている。とりあえずガン見する。
あの大きめのお尻はフランだな。きっと。
「フランか? お前何やってるんだ? そんなところで」
俺がそう言うと、フランはテーブルの下に突っ込んできた頭を出して、ぺたんと畳の上に座る。
「あ、艦長、いらしていたんですね。ちょっと、テーブルの下を掃除していました。お気になさらず」と、フランが言った。
ここ、ラメヒー王国では、拭き掃除は水魔術士の仕事というのが暗黙の了解になっている。
もちろん、後片付けや掃き掃除は皆でやるが。
「そうか。掃除か。もう夜も遅い。ほどほどにするんだぞ」
「はい。お気遣いありがとうございます」と言って、フランはにこりと笑う。
ふむ。
俺はそのまま自分の寝室に向かう。
・・・・
いや、やっぱり気になる。フランのお尻が・・・いや、あいつこの時間に一人で掃除とか、何か悩みでもあるのか?
もう一度部屋を出て座敷に行く。
フランはさっきとは違う場所で、今度は壁を拭いていた。
壁を擦る度に、大きめのお尻がふるふると揺れる。
思わずガン見ずる。
「あ、艦長、また来られたのですね。ひょっとして、お時間空いてます?」
「ん? ああ、まあ、これからお風呂入って寝るだけだな」
「まあ。それなら、私と少し飲みません? 晩酌です」と、フランがウインクして、コップでお酒を飲む仕草をする。とても魅力的な提案だ。
「ああ、お風呂に入ったら伺うよ」
俺がそう言うと、フランは花が咲いたような笑顔になった。
・・・・
風呂上がり、フランの部屋をノックするべく軽く拳を握ると、かちゃりと先に扉が開く。
「艦長、入ってください」
僅かに扉を開けたフランが、何故か小声で言った。
何故か俺も音を立てたらいけないと思い、無言で扉の隙間をすり抜けた。
「おおう?」
すり抜けた先には巨大水球。
思わず水球にぽわんとぶつかってしまった。
人肌くらいの温度でむにむにしていて気持ちがいい。
「よっと!」
フランが水球を操って、俺を水塊の上に載せる。
そして、水球を器用にベッド型にする。
「さて、艦長。晩酌しましょ?」と、言って、器用に水を操りお酒の入ったコップを2つ運んでくれる。
フランは、お風呂上がりのいい匂いを立てていた。
だが、格好がおかしい。上着は制服、下はTバックオンリーだ。
ぽわぽわふにふにぽよぽよのウォーターベッドの上で、フランが足を絡めてくる。
ふくらはぎがひんやりしていて気持ちいい。
「何コレ、柔らかいな・・・」
「触ってみてください。自慢なんです」と、フランが言った。
おもむろにふくらはぎを揉みしだく。ひんやりすべすべだ。まったくチクチクしない。
「これは、凄いな」
フランは、「うふ」っと笑って、こちらの近くに座り直し、ふくらはぎが俺のほっぺたに当たるように足を持ち上げた。
目のヤリ処に困るが、おもむろにふくらはぎに頬ずりする。ひんやりもちもちすべすべで気持ちいい。
「私、二の腕より、そこが柔らかいんです。でも、お尻もなかなかなんですよ? 腕を回してみてください」と、フランがこちらの目を見つめながら言った。
「あ、ああ」
お酒を呷り、そろっと、フランに手を回す。
確かに、なかなか・・・もちもちだ。
「さ、お酒も飲んでください」と言って、新しいお酒を注いでくれる。
そして、自分もさっとコップのお酒を呷り、「したくなったら、何時でもいいですから」と言った。
絡みつく足とすべすべのふくらはぎ、お尻に回した手、開かれた足の間のTバック・・・
その辺りから、記憶が無い。
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