第207話 魔石ハント ライン経由ハチマン 10月上旬

<<メイクイーン>>


糸目を追い出して2度寝。

その後、眠気から覚めて自室から出ると、すでに皆は活動を開始していた。

昨日は、システィーナ達と飲んだ後、ディーや前田さんとショットバーで飲み、その後、日本の徳済さんの地下室に飛んで写真を掲示板にアップ。寝たのは23時を回っていたと思う。


「おはよ。皆早いな・・・」


今朝は、まだ5時半くらいだ

少しだるい。朝風呂浴びてこようかな・・・ふらふらと廊下を歩くと、前からオキタがやってきた。手に大荷物を持っている。


「おはよ! おじさん」


こいつは朝から元気だな。


「ああ、おはよう。いい匂いだな。それはパンか?」


「そ。ノーラのパン屋でパン焼いて貰ったんだ。今日のメニューに使うから」


「へ~。あそこのパンは結構うまいからなぁ。楽しみだ」


「うん。任せてよ。おじさんも早く起きて髭剃ってさ」


「へいへい」と言いながら、自分の顎を触ってみる。確かにじょりじょりしている。


オキタに小言を貰ったところで、4階の風呂に入りに行く。ここは男が少なめだから、男子風呂は大概空いている。

だがしかし、今日は更衣室に入ると中で気配がする。


あん? 誰か入ってんな。1人? まあ、ここの風呂は4~5人は一度に入れる。ご一緒するか。


脱衣所で服を脱ぐ。


「すまんな。朝は時間が無くて、一緒に・・・」と言って、風呂場にそろっと入る。


誰かが低い椅子に座って体と頭を洗っている。このカラーリングはヒューイだ。

髪も白いし、羽毛や羽根も生えている。


「隣ごめん」


「ああ。少し開けましょう」


洗面場所のド真ん中に陣取っていたヒューイが隣にずれる。


「ふう。昨日は少し飲み過ぎたかな」と、話掛けてみる。


「艦長。この艦は貴方でまとまっている組織です。ご自愛ください」と、隣の人が言った。


「そうだな・・・ん?」


何だこの違和感は。


洗い終わったのか、ヒューイがざぱぁ~と、頭から湯を被り泡を流す。


丸い・・・いろんなところが丸い・・・こいつは本当にヒューイか? いや、この人は・・・


「あ、あの、フェイさん? ここで何やっていらっしゃる?」


隣の人はフェイさんだ。横乳をとりあえずガン見しておく。


「何って、朝風呂ですが? 気持ちいいですよね。私も朝風呂は大好きです」


「いや、ここは男子風呂・・・」


「私は気にしません。女風呂は込むことが多いですし。ここは男性が少ない。効率的でしょう?」


「そ、そうだなぁ」


そういえば、人外魔境って、あまり服とか着ないんだっけ?


「私は先に湯船に浸からせてもらいます」


フェイさんは、泡を流すと湯船に浸かる。ちゃんと先に体を洗うルールを守っているようだ。感心感心。

俺は速攻で頭と体を洗う。フェイさんが上がらないうちに、相風呂を楽しむのだ。久々のラッキースケベというやつだ。


さてと・・・俺とフェイさんは同じ冒険者パーティ。相風呂するくらいはいいだろう、と勝手に決めて、一緒の湯船に浸かる。


「艦長、体洗うの早いですね」と、フェイさんが俺の体をガン見して言った。


「ま、まあ・・・朝だし」


何故だか、フェイさんになら裸を見られても全く恥ずかしくない。

見ても全く恥ずかしがらないし、まるで姉弟? 兄妹? と入っているような・・・


湯船に入り、一気に肩まで浸かる。


「ふぅ~~~あ~~目が覚める」


「そうですよね。あれ? 艦長。お髭の剃り残しがあります。剃ってあげましょうか?」と、フェイさんが言って、浴槽の中をこちら側に移動してくる。


「え? 剃るってどうやって?」


「私は魔術でひげ剃りくらいできますから。ささ。ここに頭を」とフェイさんが言って、自分の真横の浴槽の縁をぺしぺしと叩く。


なんという大サービス。ここはお言葉に甘えなければ。


仰向けになりながら頭を縁に乗せる。フェイさんの真横で仰向けになる格好だ。流石にこの体勢は恥ずかしいが・・・


「どれどれ。こんなに剃り残しが・・・急いで剃るからですよ・・・」


フェイさんが、お風呂の中で仰向けになる俺に覆い被さる様にして顎をなでなでし始める。体が沈まないように、背中を膝で押さえてくれる。


そうなると、俺の体はフェイさんに挟まれる形になるわけで。というか、手のやり場がない。


「こっちの手は私の背中にでも回してください。邪魔なんで」


そ、そうか・・・そっと背中に手を回す。そうするとフェイさんの胸が俺の脇腹に当たる位置に。彼女の胸部装甲はあまり厚くはないあが、形が良い。ツンとしている。投げ槍が得意なだけあり、両肩、首回り、胸部、腹筋などの筋肉が引き締まっている。

緊張してきた。


「じゃあ、剃っていきますね」


しゃっ! しゃっ! と指を動かしながら髭を剃られる。


ああ、サイレンで通っていたモーニングのお店が懐かしい。それにしても気持ちがいい・・・寝そう。


「あら、艦長、眠ったら危ないですよ?」


いかんいかん。意識を戻す。


口の周りだけでなく、顔も剃ってくれる。眉毛の間とか。左右の眉毛が繋がっていたんだろう。

最近手入れしていなかったからなぁ・・・


「あら? こっちはどうしましょう・・・します? まさか、私でこうなるなんて」


大方おおかた、髭を剃り終わったフェイさんに気付かれてしまう。

フェイさんは美形でスタイルもよい。流石にこうなるだろう。


しかし・・・


「い、いいよ・・・」


ここは我慢だ。いや、俺は紳士なのだ。


「そうですか。じゃあ、少しお借りして」


じゃぶ!


は?


「うふ。久々なので。うまく出来るかどうか・・・」と、フェイさんは嬉しそうに笑って言った。


体が揺れるとお湯も揺れる。じゃぷ。ちゃぷ。ちゃぷ。ぴちゃ。


おいおいおいおい。翻訳魔術仕事しろ! 俺は断ったつもりなのだ。


決して邪な気持ちは・・・気持ちは・・・


「ちょっと・・・少し・・・締まるかと・・・済みません・・・ん・・」


ぴちゃ。ぴっちゃぴっちゃぴっちゃ・・・


あ、もう・・・


・・・・


「うふふ。やっぱり、朝風呂は気持ちがいいですね」


俺の隣、一緒に浴槽の縁に頭を乗せてお湯に浮かぶフェイさんが、満面の笑みで語りかけてくれる。


「そうだなぁ」


まあ、こういう文化なのだろう。そう思うことにした。


・・・


『鬼ヤドカリ発見! 10時』


「了解。速度落とします・・・・操縦室から各員へ、減速注意。繰り返す。減速注意」


モンスター発見の報を受け、マシュリーが注意を促す。


俺は立っていたため、適当にその辺の座席の背もたれをつかむ。


その瞬間、逆Gがかかり、少し前の方に倒れそうになる。


「よし、艦載機発進! ファイター1,マルチロール2、通常編成」と、オルティナが指示を出す。今はオルティナに任せている。


「了解。艦載機、通常編成。準備次第、発進せよ!」と、通信士のマシュリーが艦内放送を入れる。


厨房にいたオキタがダッシュで4階に駆け上がって行くのが見える。


今頃、4階と飛行甲板では出撃準備が慌ただしく行われているはずだ。


しばらくすると、マルチロール2基が離陸する。少し遅れてファイターも。


実は、ディーも前田さんもサイレンに帰っていない。数日はこっちにいる準備をしてきているそうだ。夕方に少しだけサイレンに帰るらしいけど、また直ぐに軽空母に戻るらしい。


で、輜重隊のマルチロールにディーが、ノルン操縦で晶とシスティーナが乗るマルチロールに前田さんが載ることに。


ちなみに俺はお留守番。


たまには乗りたいのに。せっかくのファイターが。ちなみに、カラーリングはラボの人が、白地に黒の稲妻が入ったような模様にしてくれた。

俺のトレードカラーなんだそうな。あまり自覚は無い。


操縦室の窓から、じ~と戦闘シーンを見物する。


新メンバーもいるのに、上手にマルチロールの十字砲火で敵を粉砕し、非実体化を開始したところでオキタファイターと随伴飛行のフェイさんが魔石をゲットしに突撃。残った散発的な敵や瀕死の敵をファイターで攻撃し、マルチロール2機はそのまま上空で周囲の警戒。


うん。やはり、この戦術が安定している。


およそ500年物とみられる鬼ヤドカリと随伴のゴブリンを鏖殺おうさつし、この場は撤収。


艦載機が着艦すると、直ちに乗組員が降り、艦載機を所定の置き位置に持ち上げて移動。その場にロープで固定させる。

飛行甲板の周りには風魔術の膜が張られているため、作業性もそんなに悪く無い。


『艦載機着艦完了』と屋上から。「完了了解。加速を開始する」とマシュリーが返す。


それからすぐに、ディー達が操舵室に降りてきた。


「狩って来たぜ! こう言ってはなんだけど、楽しかった。この調子でスタンピードも潰せたらいいな」


ディーが両手一杯の魔石を持ってきた。

オキタはすぐに厨房に引っ込む。


「お帰りなさいまし。魔石はこちらに。保管いたします」


糸目がすかさず魔石を預かる。ほんとに魔石が好きだなこいつは。


『タラスク11時』と、通信機から聞こえる。


「また来たな。どうする? 今度は俺が行こうか? オキタも料理の下準備で忙しいだろうし」


「よし。行こうぜ。お前のファイターで!」


「おう!」


ファイター役をオキタと交代し、俺とディーで出撃することに。


今回は、荒野のどこかで宿泊する予定にしている。日が暮れるまで、ひたすら魔石ハントに精を出す。


夜は目立たないところに着陸させた軽空母の飛行甲板で、BBQを楽しんだ。軽空母は本当に万能で便利だ。



・・・・

<<次の日>>


しばらく進んだところで、「そろそろラインの真南ですね」と、ログを確認していたオルティナが言った。


「ようやく着いたか。じゃあ北上!」


今は、メイクイーンを出発して2日目。

メイクイーンからは、ひたすら西方面に飛んで、川沿いを魔石ハントしながら進んできた。

今、ようやくラインの真南に到着したようだ。


今回の魔石ハントはこれにて終了。後はひたすら北上してラインを目指し、その後は越境手続きをしてマ国のハチマンを目指す。


しばらく、駄弁ったり魔石の稼ぎを数えたりしていると、目的地が見えてきた。


『ライン1時』と、屋上から通信が入る。


「1時了解。こちらでも確認、旋回する。揺れに注意」


「旋回了解!」


クルー達の働きを眺めながらまったり過ごす。


しばらく経つと、大きな街道が街をぶった切っているような城壁都市が見えてきた。ラメヒー王国とマ国との交易路の要衝、ラインだ。今日はここで1泊する予定である。

時は夕暮れ、城壁に入る竜車はまだまだ見かけるが、出て行く竜車はいない。西日を受ける城塞が綺麗だった。


・・・・


ラインに降りると、ライン伯爵自らが出迎えてくれて、「ようこそおいでくださいました。どうぞおくつろぎください」と、言った。


お出迎えなんていいのに、この人は糸目の件で俺に引け目があるからか、いつも下手で接してくる。


「わざわざ済みませんね。移動砦の停泊は、ここでいいです?」


「ええ、かまいませんよ」


伯爵は、少し疲れてるように見えた。

まず、自分の領地近くでスタンピードが出た。そこまでは良いだろう。スタンピードが出ると、その地域では経済活動が活発になる。国が城壁の補強工事もしてくれるし、実は、スタンピードが出ること自体は悪い条件では無いのだ。


しかも、ラインはマ国の国境。討伐作戦は、ほぼ確実にマ国との共同になる。今回も楽勝モードだった。


だがしかし、今回はバルバロ平野にも出た。しかも史上空前規模が3つも。


当然、軍や城壁工事の予算の再編が行われる。バルバロ平野の規模が規模だけに、ライン側は地元の負担をより求められているのだろう。


後ろをみると、糸目が移動砦の扉から顔だけ出している。


「おい、糸目。俺たちは補給、買い出し、ついでに夕飯を食ってくるが、お前はどうするんだ?」


「私はラインを追放になったのよ。ここの土は踏めないわ」と、糸目が言った。そんなものだろうか。


「了解」


今日は1日ぶりの街中でゆっくり過ごした。

息子の志郎や中学生達を連れて、ライン観光をし、飯処で一緒に御飯を食べた。


・・・・


次の日。


朝からラインを発ち、マ国方面へ。最初にスタンピード転移門が出た小都市レーンに寄るつもりだ。

なお、ディーと前田さんは少しだけサイレンに帰って、またこちらに戻って来た。どうもハチマンまで付いて来るつもりらしい。


マ国には冒険者ギルドも出来るし、前田さんはその関係だとか。

ディーは魔王に挨拶したいんだと。


『見えました。12時、転移門です』と、屋上から、転移門見ゆのしらせが入る。


立ち上がって、窓側に行く。


「ここのは通常サイズなんだよな」と、隣にいるディーに聞いてみる。


「そうだ。楽勝サイズだ。つい数日前までは、スタンピード討伐隊に参加希望者が殺到して取り合いになっていた。今頃、参加希望を出した奴らは真っ青になっているだろうがな」と、ディーが言った。


「かわいそうに。真っ先にバルバロ送りになるだろうに」


「バルバロか・・・ところでタビラ、焦土作戦の話は聞いているか?」


「ああ、水魔術で毒を撒くんだって? メイクイーン男爵は父子とも反対すると言っていたぞ?」


「そうだろうな。だが、我が国に、メイクイーンに割ける城壁工事予算と、振り分けることが可能なスタンピードを凌ぐほどの戦力は無いだろう。焦土作戦はだめでも、今、艦載機を用いたおとり作戦が検討されている」


「なぬ? メイクイーンの街をおとりにするってこと?」


「ああ、モンスターは人に反応するが、人が造った建物にも反応する。だから、先にメイクイーンにおびき寄せて、バルバロの方になだれ込むスタンピードの数を、一時的に減らす作戦だ。もちろん、メイクイーンの民は先に避難するし、おとりになった部隊も艦載機で飛べば避難できる」


「そっか。メイクイーン男爵も家が壊れる程度なら仕方が無いと言っていた。毒を撒いたらコメも育たなくなるんだろ?」


「そうだ。毒は効果的ではあるが、空を飛ぶ怪魚には効かないなどの欠点もある」


「そうか。と、いうことは、スタンピードをメインで迎え撃つのはバルバロ辺境伯領ということになるのか? あそこの城壁は立派だからな」


「そうだ。防衛するにはいささか大きすぎるのが欠点だがな。バルバロの周囲には田園城壁といって、城壁の中には少しの住居と田んぼしか無いような支城もある。今、その辺りを含めた作戦が検討されている。援軍次第な所もあるがな。おや、そろそろ着くかな?」


ディーと話しているうちに、小さな城壁都市に着いた。都市の先には確かに転移門がある。もちろん、バルバロ平野のものよりかなり小さい。門の大きさは地上50mくらいだろうか。

ここはライン伯爵の寄子、レーン子爵の城壁都市。メイクイーンより大きい。トメの所のシエンナ子爵領くらいの大きさがある。


そこの城壁では、すでに至る所で補強工事が行われていた。


おそらく、この近くに転移門が出来てすぐに発注したのだろう。毎年決まった時期に発生するスタンピードは、この国、いやこの世界の経済に組み込まれているのだと思った。


今回はもっと大きなスタンピードの転移門が出たわけだけど、急に工事を止める訳にもいかないのだろう。


「着きました。レーンです。着陸しますか?」と、オルティナが言った。


「そうだな。アポ無しだから、外に停めよう。あれ? 外にいる移動砦は軍用?」


よく見るとレーンの街の外、街と転移門の間に多数の移動砦が停泊している。


「そうだな。工事用ではないだろう。旗もいろんな貴族のものが立っている。オレが挨拶をしてこよう」


「ディー、頼んでいい?」


・・・・


ディーが挨拶に出向き、俺は糸目とドローンの準備を行うことに。

機体にプロペラを装着していると、遠くからディーの声が聞こえる。


「おおい! タビラ。呼ばれてる。来てくれないかぁ~ 日本人だぁ~」


遠くの人だかりから、ディーが呼んでいる。何だろうか。


ツツと一緒に、手招きするディーの方に行ってみる。

ディーの後ろに誰かいる。

おや? あれは勇者くんじゃないか!? 自称聖女も。KTもいる。ここにいたのか。元気そうで何より。


「どしたん?」


一応、ディーに聞いてみる。


「いや、タビラ。ここに勇者殿がいてな」と、ディーが言った。


ディーの後ろに4人の日本人が。


「こ、こんにちは、島津といいます」と、勇者君。


「・・・龍造寺よ」と、自称聖女ちゃん。


「興呂木です。お見知りおきを」とは剣道の先生。初対面では無いはずだが。今はスルー。

「多比良さん、どうも」とはKT。以前より元気ではなかろうか。


緊張気味の勇者島津くん、無愛想な自称聖女ちゃん。ちらちらと後ろのツツに視線が行っている。そして、マイペースな興呂木先生。意外と元気そうな教頭KT


彼らが、日本が誇る勇者パーティだ。


「多比良城です。どうも」


俺は、ユフインで彼らと決闘した。KTはいなかったけど。

だがしかし、彼らの相手は、謎の双角族、スマイリー(体は桜子、こころはおっさん、鬼の仮面付き)なので、俺とこいつらはほぼ初対面のはずだ。いや、厳密には先生方とは何回か会っている。子供2人が通っている学校の先生だし。KTは日本人帰還事業の時にも合っている。


「いやいや多比良さん。貴方のお噂はかねがね。何でも日本に帰れるようになったとか?」


学校の先生である興呂木氏が話かけてくる。情報が古いのではないだろうか。


「ええ。今は国と交渉中ですけどね。一時期は大変だったんです。教頭先生や私達が中学生拉致の実行犯と思われていたんですから」


「あはは。まさかね。ではまだまだ帰国は先になりそうなんですかな?」


「そうですね。必要な魔力的にも、すぐに全員帰国は無理でしょう」


「そうですか。少し安心致しました」と、興呂木先生が言った。


「そうなのですか? 帰国は考えられていらっしゃらないので?」


「はい。私達4人は、ここに残る選択をしました。勇者召喚で呼ばれ、食客として在籍し、衣食住の世話までされて、『帰れるようになったんで帰ります』と言うわけには参りません。当然、モンスター討伐戦にも参加します」


ほほう。なかなかキモが座っておられる先生だ。俺はビビったのに。あの門を見た時に・・・

いや、まさかね。知らないとか? 門が増えたこと。


「ところで先生? 貴方達は何処に従軍されるおつもりで?」


「従軍と言いますか、モンスターはあれから出てくるのでしょう?」


興呂木氏は、後ろにそびえる地上高50mくらいの転移門を指さして答える。何故かドヤ顔だ。


勇者PTはここに配置?


周りのラメヒー王国の人と、チラチラと目を合わせてみる。皆して目をそらす。

一部の人は、潤んだ目で何かを訴えている。多分、『言わないで』だと思う。まあいっか。些事だ。


「そうですね。あれは転移門と名付けられているようです」と、言みる。


「そのようですな。私達はこれから5ヶ月間、ここを拠点として各地で修行したりして準備を進めるんですよ」と、先生が言って、充実していると言わんばかりの顔をする。


「そうですか。頑張ってください」


「はい。もし、日本政府から我々の事を聞かれたら、このスタンピードを理由に、すぐに帰るわけにはいかないとお伝えください」


「分かりました」


急速に、彼らのことに興味を失っていく自分がいる。

いや、これは多分、周りが悪い。勝手にしたらいい。


「では、私はこれにて失礼」


さっと踵を返して軽空母に戻る。ツツもディーもついて来ている。


ま、ここは大丈夫だろう。

そう考え、軽空母は一路ハチマンに向かった。


・・・・


国境門を経由し、しばらく飛ぶ。スバルを無視し、ひたすら飛ぶ。そうすると、超巨大都市が見えてくる。

マ国首都ハチマン、なんと100万都市らしい。サイレンが30万都市だから、それ以上の大都市である。


ここには巨大な城が2つある。王城と魔王城だ。


「ハチマン見えました。目標は予定通り、魔王城でいいですか?」と、オルティナが言った。


「オルティナ。いつものとこでOKだ。魔王旗を掲げてくれ」


「了解。屋上、魔王旗を掲げよ」


『了解』


何とか今日中に目的地のハチマンに着くことができた。

ここでは、魔石鑑定の他、加藤さんの様子見を行う予定だ。


それから観光かな。せっかく子供達と来ているのだ。今日の夜も街呑みしよう。

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